1)パン,米飯,鮭の背肉部と皮部,砂糖,脱脂大豆粉および,牛肉を,200℃ に加熱して得た食品の焦げは抗酸化作用を示さず,通常の焼菓子製造時につや出しとして使用する卵黄とみりん混合物(1:1)の200℃ 加熱物は抗酸化作用を示した.
2)卵黄とみりん混合物を,200℃ に7分間加熱したものの抗酸化作用は,卵黄分が50%以上の場合に比較的大きく,また加熱温度の上昇に伴って抗酸化作用が増加した.またこの場合の抗酸化作用は,実際の食品の焼成条件に相当する180~200℃,7分間の焼成時に最大となり,卵黄単独の200℃ 加熱時の値に近い値を示した.
3)卵黄・みりん混合加熱物の抗酸化作用は,みりん,または加熱焼成により生ずると思われたメラノイジンに由来するものではなく,加熱蒸発に伴い生成する残査中の卵黄レシチン分に由来すると考えられた.
4)常温における抗酸化作用は,乾燥卵黄,卵黄PE,大腸菌PE,卵黄レシチン皿の順に大であった.また,卵黄レシチンIの抗酸化力は,各加熱温度とも卵黄加熱物の2~5倍であった.卵黄レシチン1の加熱物(1%w/w)の抗酸化力は,BHT(0.02%w/w)のそれに相当した.卵黄の抗酸化作用は,加熱処理温度の上昇に伴って減少するが,これは,卵黄レシチンの抗酸化性成分(PCおよびPE)のうち,PE分が加熱に伴い減少するので,抗酸化作用が,主に残存するPC分によるためであると考えられた.
5)実際の食品では,展着性を良くするために,卵黄にみりんをほぼ同量混合して食品表面に塗布して,200℃,7分間オーブン中で加熱するが,このことは,食品表面に良好なつや面を形成するとともに,抗酸化作用の発現にも適した条件であり,食品の保存上好ましい処理であることがわかった.
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