コンクリート工学論文集
Online ISSN : 2186-2745
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34 巻
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  • 新見 龍男, 加藤 弘義, 岩月 栄治
    2023 年 34 巻 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/15
    ジャーナル フリー

    アルカリシリカ反応のモデル骨材として使用される水ガラスカレットを用い,プロピオン酸カルシウムがアルカリ環境下の反応性骨材の挙動に及ぼす影響について基礎的な検討を行った。また,反応性骨材として安山岩系の天然砕石を用いた場合についてもその影響を検討するとともに,カルシウム塩の影響を評価するために塩化カルシウムおよび水酸化カルシウムについても検討した。その結果,水ガラスカレットだけでなく反応性骨材においてもプロピオン酸カルシウムによるアルカリシリカ反応の膨張抑制効果が確認された。また,塩化カルシウムを添加した場合にも膨張が抑制され,Ca成分の影響により反応生成物が変質し,吸水膨張性が低減している可能性が推測された。

  • 北野 勇一, 伊藤 始
    2023 年 34 巻 p. 11-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    PC床版の押抜きせん断強度に与える補強材の影響を,破壊過程を含めて明らかにすることを目的に,既往の実験データやFEM解析を用いて各種検討を行った。その結果,PC床版の押抜きせん断強度に与える鉄筋比の影響は,RC床版より小さくなるものの,短繊維を混入したPC床版はRC床版より押抜きせん断強度の増加が顕著になることを確認した。また,繊維補強コンクリートを用いたPC床版の押抜きせん断強度は,残存引張強度と有効高さの影響を考慮した短繊維負担分をコンクリート負担分に足し合わす形で良好に評価できることを示した。

  • 岡崎 百合子, 岡崎 慎一郎, 浅本 晋吾, 今本 啓一
    2023 年 34 巻 p. 37-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    コンクリートの乾燥収縮に対する要因は,配合条件である単位水量や水セメント比等の影響に加え,近年,骨材自体の収縮に起因する影響が周知の事実となっている。骨材による影響は,土木学会の示方書式や日本建築学会式のひび割れ制御指針において定性的には組み込まれているものの,その複雑性ゆえに十分に解明されていない現状にある。そこで,本研究では,骨材の物性が収縮に与える影響を把握することを目的に,データの裏に潜む支配機構を柔軟に抽出できる機械学習を援用した分析を実施した。その結果,骨材の平均比表面積が支配的な影響力を有し,さらに,配合条件と骨材の平均比表面積が連関しながら収縮へ影響を及ぼすといった支配機構の存在が示唆された。

  • 岡崎 百合子, 岡崎 慎一郎, 浅本 晋吾, 今本 啓一
    2023 年 34 巻 p. 47-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    コンクリートの乾燥収縮挙動に対し,機械学習モデルを構築し,モデルの学習結果を解釈することによって,偏りがあるデータ群の影響を抑制しつつ,各説明パラメータが乾燥収縮に与える主な影響,すなわち支配構造を抽出し,定式化するといった新しいアプローチ法を提案した。本アプローチ法に基づき,コンクリートの配合および骨材の特性が乾燥収縮に与える影響を分析した結果,単位水量と骨材体積をパラメータとした配合の非線形影響や,配合により異なる骨材の吸水率の影響度等,複雑な支配構造が抽出された。抽出した支配構造を定式化した結果,定式による予測値は,実測値の乾燥収縮率を良く再現しており,データの密度が疎になる領域において特に予測精度が改善されることを確認した。

  • 山田 章史, 竹本 幸弘, 木村 勇輝
    2023 年 34 巻 p. 61-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,従来の耐震補強工法では施工が困難な立地条件にある既設鉄筋コンクリート橋脚を対象とし,せん断耐力の向上を目的とした補強工法の開発を目的としている。これまで背面を地盤に接する地中構造物等では,構造上の制約条件から部材の片側からのみの補強施工が可能となるあと施工型のせん断補強工法が開発されてきたが,道路橋の鉄筋コンクリート橋脚における検証事例は少ない。今回,鉄筋コンクリート橋脚を模したRC柱試験体に対する水平方向の正負交番載荷試験を行い,変形特性と損傷状況等からあと施工型せん断補強鉄筋の補強効果を検証し,あと施工型せん断補強鉄筋はRC柱試験体においてもせん断補強効果が発揮されるが,変形性能には補強効果が確認されなかったことを報告する。

  • 入矢 桂史郎, 藤井 秀夫, 古谷野 拡
    2023 年 34 巻 p. 71-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル フリー

    道路橋床版の上面増厚材としてUHPFRCを使用した場合のひび割れ後の防水性を検討した。曲げ応力作用時のひび割れ特性,特にひび割れ後のひずみ硬化域でのひび割れ拘束能力に着目して,静的曲げ試験,曲げ疲労試験,防水試験を実施した。鋼繊維を容積比3%混入することで,顕著なひずみ硬化挙動がみられ,静的曲げ試験ではひずみレベルで1000μ程度までひび割れが視認できなかった。また,曲げ応力15~20N/mm2を480万回載荷した疲労試験後において,ひび割れ幅が0.07mm程度に拘束できることを確認した。このひび割れ幅のレベルでは,自己治癒剤によりほとんどのひび割れが治癒し,防水性が確保できる可能性を示した。

  • 吉岡 智和, 國友 弘隆
    2023 年 34 巻 p. 83-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/15
    ジャーナル フリー

    RC方立壁のせん断破壊の特徴を多く含む地震被害写真を用い,事前学習済みCNNモデルのファインチューニングを行い,せん断破壊が先行するRC柱の地震被害写真から損傷度をII以下,III,IV,Vの4レベルに分類する識別器を生成した。生成に当り,転移学習に比較し畳み込み層を含めたファインチューニングを行うことで,損傷度の推定精度が向上した。また,RC柱のみ矩形検出した画像を用いることで,その推定精度が向上する傾向があった。大破に相当する被害が生じたRC建物の耐震性能残存率について,せん断柱の地震被害写真に基づき正解率85.3%の性能を持つ識別器が推定した損傷度を用い算定した値と専門家の現地調査に基づき推定した値は概ね一致した。

  • 張 文博, 梁 俊, 新井 博之, 太田 兵庫
    2023 年 34 巻 p. 95-104
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/15
    ジャーナル フリー

    ダムコンクリートにおける有スランプコンクリートの締固め完了範囲の推定および推定手法の実用化を検討する目的で,粗骨材最大寸法を考慮した試作装置で締固め完了エネルギーを測定した後,内部振動機の振動による累積エネルギーの伝播特性を把握したうえで,両者の関係から締固め完了範囲を推定した。さらに,硬化後コンクリートの圧縮強度,単位容積質量および表層透気性能などによってその推定範囲の妥当性を確認した。このような推定手法を利用し,有スランプコンクリート内部の締固め程度を可視化した品質管理システムを構築し,実施工に適用した。その結果,締固め完了範囲の推定手法の妥当性が確認でき,生産性向上に寄与する可能性を示した。

  • 山口 信, 森島 慎太郎
    2023 年 34 巻 p. 105-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,細径真直鋼繊維を適用したスラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)版のスポール抑止性能の明確化と,それを用いた効率的な耐爆構造部材の開発を目的とした。本研究の前半では,爆薬量130~170gの条件下で,厚さ80mmのSIFCON版を対象とした接触爆発試験を行い,SIFCONを適用することにより普通コンクリートを用いた場合と比較してスポール限界となる換算コンクリート厚さを55%低減できることが示された。本研究の後半では,SIFCONとプレパックドコンクリート(PPC)より成る一体型耐爆構造版の耐爆性能について検討し,SIFCON自体のスポール抑止効果に期待するよりも,SIFCON層がPPC層で発生したスポール破壊片を捕縛する効果に期待する方が効率的な耐爆設計が可能になることを示した。

  • 吉松 秀和, 水戸 健介, 高橋 良輔, 徳重 英信
    2023 年 34 巻 p. 117-127
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,劣化した鋼橋RC床版の更新用床版として用いるプレキャストPC床版の橋軸方向RC接合部に適用可能なRC継手構造を開発することを目的としている。これまでに,プレキャストPC床版接合部の橋軸方向鉄筋(床版配力鉄筋)先端部に定着具を設置することで,鉄筋の定着長を短縮した継手構造に対し移動輪荷重載荷試験など実験を行い,実構造に適用可能であることを確認した。本論文では,継手構造の合理的な設計を行うため,定着具を設置した鉄筋の付着特性を明らかにすることを目的に引抜き試験を行い,既往の付着応力-すべり-ひずみ関係式に定着具挙動の影響とひずみ関係式に係数を考慮し,その適用性を確認した。

和訳論文
  • 青坂 優志, 山本 武志, 筒井 勝治, 三木 朋広
    2023 年 34 巻 p. 25-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/15
    ジャーナル フリー

    ラオス国ナムニアップ1(NNP1:Nam Ngiep 1)水力発電プロジェクトにおいて,堤高167 mのRCC(Roller Compacted Concrete)ダムが建設された。コンクリートの水和反応による発熱抑制やワーカビリティー向上の観点から,NNP1 RCCダムではタイ国Mae Moh石炭火力で産出されるClass Cフライアッシュ(FA)をコンクリート混和材として採用した。RCCでは世界的に利用が進んでいないが,Class C-FAを用いたコンクリートの一般的な特徴と比較して,初期材令におけるコンクリートの温度上昇はわずかであり,比較的大きな中期・長期強度が発現したことから,採用したClass C-FAが本ダムにおいて適用できることがわかった。Class C-FAに関する反応メカニズムを明らかとするため,電子線マイクロアナライザ(FE-EPMA)等を用いて,FA粒子および本ダムから採取したコンクリートコアの観察を行い,前述のClass C-FAの特徴に影響を与える要因を分析し,評価した。本論文は,Class C-FAを用いたコンクリートの反応メカニズムを明らかにするとともに,Class C-FAのRCCダムならびに他の構造物への適用性について示すものである。なお,本稿は「Study on Application of Class C Fly Ash for RCC dam in Nam Ngiep 1 Hydropower Project in Lao PDR, Journal of Advanced Concrete Technology, Volume 20, 30-42, January 2022」の和訳論文である。

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