コンクリート工学論文集
Online ISSN : 2186-2745
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32 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 宮内 克之, 下枝 博之, 小林 朗
    2021 年 32 巻 p. 1-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    炭素繊維格子板(CFG板)の端部を炭素繊維束で固定し,ポリマーセメントモルタル(PCM)を乾式で吹き付ける定着方法でせん断補強されたRCはり部材の単調載荷試験を行い,炭素繊維束を用いたCFG板の定着方法の可能性を示すとともに定着性能に及ぼす炭素繊維束の繊維量の影響およびPCMの圧縮強度の影響に関して検討した。その結果,提案工法はCFG板端部の定着方法として効果的であり,定着に必要な炭素繊維束の繊維量は,CFG板縦筋の引張耐力に相当する引張耐力を有する繊維量で十分であることが明らかになった。また,PCMの圧縮強度は50N/mm2程度で十分であることを示した。さらに,提案する定着方法によってせん断補強されたRC棒部材の斜め引張破壊耐力は,既存の式にCFG板縦筋が負担するせん断耐力を加えた式で評価できることが確認された。

  • 大木 文明, 師橋 憲貴, 新藤 健太, 平松 靖
    2021 年 32 巻 p. 13-23
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    鉄筋コンクリート(RC)とCross Laminated Timber(CLT)をせん断キー(ラグスクリュー)によって接合した複合床スラブの面外曲げ性能について検討を行った。まず接合部の1面せん断実験を行った。ラグスクリューは良好な変形性能を示した。次に複合床スラブの曲げ実験を行った。実験の結果,せん断キーの配置ピッチを密にすることで曲げ性能の上昇が認められた。複合床スラブの曲げ性能を評価する上で重要となる初期剛性および降伏荷重について既往の「γ- method」による適用方法を提案した。その結果,計算値は実験値に対して良い相関を示した。

  • 平本 真也, 植村 幸一郎, 大塚 勇介, 檀 康弘
    2021 年 32 巻 p. 25-33
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    コンクリート構造物を解体する際に発生するコンクリート殻は再生路盤材として利用されているが,保管中に炭酸化が進行することで,セメントクリンカー由来の六価クロムの溶出量が増加する場合がある。そこで本研究では,六価クロムの溶出抑制対策の一つとして高炉スラグ微粉末の有効性を溶出試験,X線吸収微細構造測定により評価した。その結果,高炉スラグ微粉末に含有する還元物質の影響により,水和の進行に伴い硬化体内の六価クロム量を減少させ,コンクリート殻からの溶出量も減少させることが可能であると確認された。また,他の還元物質と比較しても継続的に還元効果が維持されることから,高炉スラグ微粉末は六価クロム溶出対策として有効であると確認された。

  • 福留 和人, 齋藤 淳
    2021 年 32 巻 p. 35-47
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    現行のコンクリート標準示方書における養生の位置付けに基づいて「セメントの水和解析に基づく養生計画立案手法」を提案した。提案する手法は,設計で設定したコンクリートの特性値を満足するために達成すべき目標の水和率を設定し,水和解析によって求めたセメントの水和率が目標の水和率に到達するように養生計画を立案するものである。本論文では,提案する手法の基本的な考え方および具体的な養生計画の立案方法を紹介する。さらに,各種条件における養生計画立案事例を示し,構造物条件,コンクリート条件および施工環境条件に応じて養生計画を合理的に立案することが可能であることを確認した。

  • 夛田 健次, 武田 悠治, 長谷川 泰聰, 吉武 勇
    2021 年 32 巻 p. 49-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,電気的インピーダンスおよび位相角の変化を基に,繊維強化ポリマー(FRP)シートで覆われたコンクリート表面近傍にあるひび割れを検出する技術開発を目的としている。基礎的実験として,表面直下に人工ひび割れを設けたコンクリート立方体をFRPシートで被覆した試験体を用いた。本研究の試験では,1kHzから8MHzまでの交流電圧を試験体に負荷させた状態におけるインピーダンスおよび位相角の周波数特性を調べた。インピーダンスおよび位相角の測定には,人工ひび割れの真上位置,左位置と右位置で2電極端子を有するプローブを用いた。この実験結果から,3MHz~4MHz付近でのインピーダンス極大値と試験体の性状が容量性から誘導性に相変化する時の周波数を測定することで,FRPシートで覆われた上からコンクリートのひび割れを検出できる可能性を示した。

  • 高橋 典之, 佐藤 圭裕
    2021 年 32 巻 p. 59-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    竣工後50年以上が経過した文化的価値を有するRC造建造物のなかには,構造安全性の確保がなされないまま放置・解体されてしまう事例があり,維持・保存技術や使用安全性の確保が求められている。本研究では実在のRC造文化財建造物を対象として,既往の研究で提案されている劣化度に応じた構造性能の低減係数を適用する方法について比較・検討し,その修正案を提案するとともに,異なる建物を用いた検証を行った。あわせて,RC造文化財建造物の劣化度調査および劣化度を耐震性能に反映させる方法についての一連のフローを考案した。

  • 戸崎 隆之, 佐藤 浩二, 仁平 達也, 池田 学
    2021 年 32 巻 p. 73-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/15
    ジャーナル フリー

    本論文では,施工条件を考慮したD51鉄筋のK形フレア溶接への適用性の検討を行った。最初に,異なる溶接姿勢等での試験を実施し,実施工で想定される斜め下向き姿勢は,横向き姿勢よりのど厚等の寸法のばらつきが大きくなることを確認した。次に,技術基準類を参考に単調引張試験と高応力繰返し引張試験を実施し,判定基準を満足する溶接長を明らかにした。さらに,溶接姿勢によるのど厚の差異を考慮したD51鉄筋の必要定着長の算定式を提案し,D51鉄筋のK形フレア溶接の必要定着長は,斜め下向き姿勢であっても,5φで安全側に評価できることを示した。加えて,鋼板と鉄筋および溶接金属の図心位置のずれに起因して発生する,偏心曲げモーメントの影響を踏まえた鋼板の必要板厚の算定方法を提案した。

  • 李 春鶴, 松浪 康行, 栖原 健太郎, 辻 幸和
    2021 年 32 巻 p. 85-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

    鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食において,拡散による酸素量が鉄筋の酸化性腐食により消費される酸素量より多いと,鉄筋は酸化性腐食を継続するが,高品質なコンクリートを用いて拡散による酸素量を少なくすると,鉄筋位置の酸素濃度は低下して腐食速度が減少する。本研究では,酸化性腐食状態において消費される酸素量を考慮した鉄筋コンクリート中の鉄筋の腐食についての解析モデルを提案する。そして,ケーススタディを行った結果,酸素拡散係数の小さい高品質なコンクリートを用いることにより,鉄筋の腐食速度が小さくなり酸化性腐食状態から酸素濃度の小さい還元性の腐食状態に移行できる可能性を報告する。

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