Moorhead氏らが, ヒト末梢血培養法を考案して以来今日まで約10年の問に, 放射線治療や, 事故, 核爆発などにより種々の電離放射線を受けた人間の末梢血中淋巴球に観られる放射線誘発染色体異常の報告は枚挙にいとまがない。
しかし, 人体が受けた放射線の線量の不確かさを始めとして, 線質, 線量率など, 多岐にわたる因子が介在する為, 定量的な実験研究が必要である事は論をまたない。
筆者らは, 現在までに, 生体の受ける放射線の影響を定量的に把握すべく, 実験動物 (家兎) を用い, これに
60本論文は, それに先立つて行なつた, 家兎末梢淋巴球の培養法の確立と, 末梢血をinb vitroで
60Co-γ線を照射した場合の線量効果関係について述べた。Co-γ線の照射を行ない, その末梢淋巴球に誘発された染色体異常を指標として種々の分析を行なつて来た。
本論文は, それに先立つて行なつた, 家兎末梢淋巴球の培養法の確立と, 末梢血をinb vitroで
60Co-γ線を照射した場合の線量効果関係について述べた。
家兎末梢血培養法は, Moorhead氏らのヒト末梢血培養法を元に多少の変更を加える事により満足する結果が得られた。
次に, 末梢血をin vitroで照射した場合の線量効果関係は次の2つの場合について求めた。
1) 麻酔した家兎の耳静脈より得た血液について
2) 麻酔しない家兎 (正常) の耳静脈より得た血液について
である。何故なら, 実験の目的によつては, 麻酔下で行なえば, 技術的に有利だからである。その結果, 1) と2) の間には有意の差は, 本実験の範囲においては認められなかつた。従つて, 家兎末梢淋巴球のin vitro
60Co-γ線照射による線量効果関係は次の式のごとく表わされた。
Y=0.6×10
-3+1.11×10
-3×D
0.18+9.14×10
-5×D
1.5ただし, Yは1細胞当りの染色体異常の出現頻度を, また, Dは放射線線量を表わす。
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