岩鉱
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88 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 在田 一則, 新宮 弘久, 板谷 徹丸
    1993 年 88 巻 3 号 p. 101-113
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    日高変成帯中部(カムイエクウチカウシ山地域)と南部(楽古岳地域)の変成岩類・トーナル岩類の黒雲母 (22ヶ)と角閃石 (2ケ)のK-Ar年代は,岩種・変成度に関係なく,ほぼ似た値 (19.1~16.3 Ma) である。これは,変成帯の急傾した構造が前期中新世後期には既に形成されていたことを示す。したがって,急傾構造をもたらした,日高島孤地殻と西側の海洋地殼(オフィオライト)の衝突・衝上はそれ以前である。既存データを含め3組の黒雲母-角閃石ペアのK-Ar年代値の相違(約1 Ma) から推定される前期中新世後期における上昇速度は5.8~7.8mm/年である。この急激な上昇運動は衝突にともなう衝上運動の結果である。黒雲母のK-Ar年代から推定される前期中新世後期から現在までの平均上昇(侵食)速度は0.52~0.61mm/年となる。黒雲母と角閃石のK-Ar年代はともに試料採集地点の高度の増加とともに,若くなり,一般にみられる傾向と逆である。この理由については,岩石の片理面を滑り面とする差動上昇運動が考えられるが,さらに検討が必要である。
  • 富田 克利, 河野 元治, 小林 哲夫, 神野 好孝
    1993 年 88 巻 3 号 p. 114-120
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    1992年に新燃岳から噴出した火山灰が研究された。占有鉱物としては,長石,輝石,角閃石,クリストバル石の他にスメクタイトと石膏が認められた。このスメクタイトはEDX分析により,鉄を多く含むスメクタイトであることがわかった。このスメクタイトは,噴火が起こる前に火口中または火口直下で比較的低温の熱水によって岩石が変質されてでぎたものである。
  • 芳川 雅子, 中村 栄三, 高橋 奈津子
    1993 年 88 巻 3 号 p. 121-130
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    北海道日高変成帯南端部に位置する幌満かんらん岩体中の,金雲母を含むスピネルレルゾライトから, Rb-Sr法を用い23Ma±1.2Maの年代を得た。この年代は,現在までに報告されている日高変成帯の変成岩類の年代中,最も古いものとほぼ一致する。また,この年代は,幌満かんらん岩体がウェッジマントル中にあったときに,交代作用を受けた時期を示していると考えられる。この交代作用は、ユーラシアプレートと北アメリカプレートの衝突による日高変成帯の上昇に伴い幌満岩体上昇期にマソトル条件下で起きたと考えられる。
  • 土屋 範芳
    1993 年 88 巻 3 号 p. 131-140
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    南部北上山地,氷上および気仙川花崗岩体周辺の古生層中に含まれる炭質物のラマソスペクトルについて検討を行った。炭質物のラマンスペクトルは2本のスペクトルを示し,1本は1350cm-1付近に,もう1本は1620cm-1に出現する。この2本のスペクトルの強度の比I1135/I1620。は石炭化作用およびグラファイト化作用の進行とともに減少し,炭質物のc軸方向の結晶子の大きさLc (002)が190Å以上においては0となる。炭質物を母岩から分離する過程で生じるフッ化物のため,石墨化度を表す指標をX線回折から求められない試料がある。しかしながらラマンスペクトルのI1350/I1620から,他の化合物の存在下でも石墨化度を決めることができる。
    南部北上山地の気仙川花崗岩体西縁から採取したグラファイトのラマンスペクトルは理論的なE2g2の伸縮モードの1580cm-1より高波数側に1本のスペクトルを示す。この高波数側へのシフトはこのグラファイトがグラファイト層間化合物である可能性を示している。
    南部北上山地氷上花崗岩体周辺のシルル系およびデボン系中の炭質物のI1350/I1620は0.2以上であり,氷上花崗岩体からの熱的影響は認められなかった。ラマソスペクトルを用いることにより堆積岩および変成岩中の炭質物のグラファイト化度を評価でき,花崗岩体の熱的影響を推定することが可能である。
  • 赤坂 正秀, 渡辺 順, 戸苅 賢二, 川村 信人
    1993 年 88 巻 3 号 p. 141-156
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    阿武隈山地北東部山上変成岩を構成する含紅簾石片岩の全岩化学組成,鉱物組み合わせ,構成鉱物の化学組成を検討した。
    含紅簾石片岩は,アルバイト斑状変晶を含む白雲母石英片岩と緑簾石角閃岩の間に挟まれて産出する。片状組織が発達しているが,圧砕組織も認められる。含紅簾石片岩の鉱物組み合わせは,石英+白雲母+アルバイト+緑泥石+紅簾石+電気石+赤鉄鉱+ルチルである。少量の緑簾石,燐灰石,微量の炭酸塩鉱物が伴われる。また,石英とカリ長石からなる脈が入っている。
    紅簾石の化学組成はPm11Ps22Cz67からPm17Ps18Cz65の範囲にある。白雲母は,Siが6.54-6.64 atoms per 22 oxygensのフェンジャイトであるが,ハイドロマスバイト成分を含む。緑泥石は, Fe/(Mg+Fe)=0.02のクリノクロアと, Fe/(Mg+Fe)=0.38のピクノ緑泥石からなる。赤鉄鉱は, Mn2O3成分を含む。
    全岩化学組成は, SiO2が82.41 wt.%, (Fe3+×100)/(Fe3++Fe2+) 値が93である。MnO含有量は0.02 wt%で,きわめて低い。
    紅簾石, Mg緑泥石, Mn2O3成分を含む赤鉄鉱が産出することから,高酸素分圧下で変成作用が進行したと考えられる。このことは,全岩化学組成の (Fe3+×100)/(Fe3++Fe2+) 値がきわめて高いことと調和的である。変成作用時の高酸素分圧条件は, H2OがH2+O2/2に解離することによって発生した,と考えられる。
    Ainosawa, 合の沢; Fukuyamagami, 福山上; Futaba, 双葉; Hatagawa, 畑川; Maebarazawa, 前原沢; Mano, 真野; Manogawa, 真野川; Matsugadaira, 松ケ平; Motal, 母体; Oashi, 大芦; Ryozen, 霊山; Shiode, 塩手; Somanakamura,相馬中村; Tateishi, 立石; Togamorizawa, 戸ケ森沢; Udagawa, 宇田川; Uwano, 上野; Wareyama, 割山; Yaguki, 八茎; Yamagami, 山上; Yumiorezawa, 弓折沢
  • 和田 恵治, 後藤 芳彦
    1993 年 88 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 1993/03/05
    公開日: 2008/03/18
    ジャーナル フリー
    旭川市北方の和寒町三笠山から,高Mg安山岩 (Sio2=56.5 wt.%, MgO=7.2 wt.%) を見出した。この岩石のK-Ar年代は11.1 Maを示す。この安山岩は, Foに富む (Fo90-85) カンラン石斑晶とAnに芝しい (An64-38) 斜長石斑晶が共存する。斑晶組み合わせや組織・組成から,この高Mg安山岩は,初生的な玄武岩マグマとホルンブレンドを含むデイサイトマグマとが混合して形成されたと考えられる。
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