島根県大原郡木次町,加茂町,大東町にかけて分布している,いわゆる大東花こう閃緑岩中の2ケ所の露頭で,比較的新鮮な岩石から風化変質の進んでいる岩石まで34個の試料を採集し,そのなかの黒雲母の変質の様子を, X線粉末回析,分析走査電子顕微鏡により調べた。その結果,黒雲母は変質が進むにつれ,加水雲母,バーミキュライト,カオリナイトと変わっていることがわかった。また,この黒雲母をpHを異にする溶液中 (3.0, 5.3, 8.0), に, 60度で55日入れておいた結果, pH 5.3の溶液中の黒雲母の変質が2ケ所の露頭での変質と類似していた。さらに,気候条件の異なる地域での黒雲母の変質の様子と比較した結果,大東花こう閃緑岩中の黒雲母は,現在のこの地域と同じような温暖な気候条件下で風化変質したものと考えられる。
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