痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
45 巻, 1 号
痛風と尿酸・核酸
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
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総説 1
総説 2
原著 1
  • 三澤 計治, 三島 英換, 長谷川 嵩矩, 大内 基司, 小島 要, 河合 洋介, 松尾 雅文, 安西 尚彦, 長﨑 正朗
    2021 年 45 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/25
    ジャーナル フリー

    痛風は,尿酸が原因で起こる関節炎であり,罹患者も多い.先行研究では血清尿酸値の遺伝率は30〜70%と推定されている.遺伝子ベース検定を用いた最近の研究では,まれな変異の有無がヒト集団中の血清尿酸値分散に大きく寄与していることが示唆されている.遺伝子ベース検定は,1つの遺伝子に含まれる複数の遺伝子変異の影響を1回の検定で考慮するものである.本論文では,数値計算を用い,遺伝子ベース検定のサンプルサイズと検出力の関係を解析した.仮想的なヒト集団を,まれな変異を持つ人々と持たない人々の二つの群に分けた.この二群間での尿酸値の平均値の差は,先行研究によるURAT1変異の有無によって生じる差と同じ値を使った.また,各個人の尿酸値は,その個人が属する各群の平均値を期待値とする正規分布に従うと仮定した.等分散性を仮定しないWelchのt検定を行い,検出力を計算した.今回の数値計算から,まれな変異は,一つのSNPだけを用いている場合,1万人から数万人ほどの大きさのサンプルが必要であることがわかった.複数のSNPをまとめた検定を行うことで,検出力が上がり,数百から数千人規模の研究でも検出できることが示された.この研究は,今まで主に研究対象となってきた「ありふれた疾患,ありふれた変異」に加え,遺伝子ベース検定による,「ありふれた疾患,まれな変異」の研究の可能性を示した.

原著 2
  • Shinji Kishi, Takashi Asama, Yasuro Suzuki, Takahiro Yamauchi
    2021 年 45 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/25
    ジャーナル フリー

    Background and Objectives: Melinjo is a tree native to Indonesia. Melinjo seed extract (MSE) contains gnetin C, gnetin L, and gnemonosides as resveratrol dimer derivatives. The seeds are particularly rich in gnetin C. In human clinical trials, relatively high-dose intake of MSE reportedly decreased serum uric acid. We examined the safety and effects of long-term regular-dose MSE intake to decrease serum uric acid, and the relationship with serum concentrations of MSE derivatives.

    Methods and Study Design: Subjects with serum uric acid concentrations of 6.0-6.9 mg/dL were divided into 4 groups receiving placebo or MSE at 100, 200, or 300 mg/day for 12 weeks. Subjects with uric acid concentrations of 7.0-7.9 mg/dL took 300 mg of MSE. Serum MSE derivatives at 12 weeks were measured in subjects who took MSE at 300 mg/day.

    Results: Ninety-eight men participated and 11 of those participants dropped out of this trial.No significant adverse events were detected, whereas no significant serum uric acid changes were detected. Serum concentrations of gnetin C monoglucuronide and total gnetin C (gnetin C+gnetin C monoglucuronide), representing major derivatives of MSE, tended to correlate with decreased serum uric acid concentrations. The subjects with total gnetin C ≥ 200 ng/mL showed a decrease in the serum uric acid concentration compared with those with total gnetin C < 200 ng/mL in the group with uric acid ≥ 7.0 mg/dL at week 0.

    Conclusions: Regular-dose MSE can be safely ingested, and high serum gnetin C concentrations might decrease serum uric acid.

原著 3
  • 山本 康孝, 荻野 和秀, 浜田 紀宏, 太田原 顕, 久留 一郎
    2021 年 45 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/25
    ジャーナル フリー

    高尿酸血症は生活習慣病と合併することが多いため,栄養指導は生活習慣病における包括的な指導に含まれることが多い.そこで,本研究では脂質異常症患者に対する栄養指導が血清尿酸値に与える影響に関して後ろ向きに検討した.脂質異常症にて栄養指導を行った43名について,初回栄養指導から1年間,体重,脂質,血清尿酸値などを経時的に測定し,栄養指導前と比較検討した.観察期間中の栄養指導回数は平均2.5回であった.対象者全員の解析において体重は指導前と比し,指導後3カ月・12カ月で有意に減少した.血清LDLコレステロール値は指導前150.9±32.6mg/dl,指導後3カ月139.0±35.7mg/dl,指導後12カ月132.1±31.9mg/dlと有意に減少した.一方,血清尿酸値は,指導前5.4±1.4mg/dlから変化を認めなかったが,尿酸降下薬を内服していない高尿酸血症患者では,有意に血清尿酸値が低下した.観察期間中の体重増加群に比し,体重減少群では尿酸値が低下する傾向が見られた.

    本研究において,脂質異常症患者に対する栄養指導の血清尿酸値低下への有用性が示唆された.また,体重減少を間接目標とした生活改善指導の尿酸値低下への有用性が示唆された.

原著 4
  • 大山 博司, 大山 恵子, 諸見里 仁, 田淵 大貴, 藤森 新
    2021 年 45 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/25
    ジャーナル フリー

    フェノフィブラート(FEN)は脂質異常改善薬であるが尿酸降下作用も有することから,メタボリックシンドロームの合併が多い痛風・高尿酸血症の患者に使用する機会が多い.フィブラート系薬物を使用中に血清クレアチニンが上昇することを経験するが,その実態は明らかでない.年間3,000例の痛風・高尿酸血症の診療に携わっている我々の施設でFENが投与されている患者を対象にFEN投与による腎機能障害を中心に,血清脂質改善作用と尿酸降下作用などを検討した.

    わが国で,FENの錠剤(トライコア錠,リピディル錠)が発売された2011年12月から2020年8月までに,当院においてFENが投与された患者159例の血清トリグリセリド(TG)と血清尿酸値(SUA)はFEN投与1-3か月後には有意に低下していた.腎機能(血清クレアチニン:SCR,推算糸球体濾過量:eGFR)については,SCRはFEN投与前の0.83±0.15mg/dLから投与1-3か月後に0.97±0.20mg/dL,6か月後には0.99±0.18mg/dLと有意に上昇し,eGFRは81.2±18.8mL/min/1.73m2から1-3か月後に69.2±14.7mL/min/1.73m2,6か月後に66.7±14.5mL/min/1.73m2と有意に低下していた.FEN投与によるSCRの上昇とeGFRの低下は,投与患者の90%以上に認められ,約70%の患者ではSCR1.0mg/dL以上の上昇とeGFR10mL/min/1.73m2以上の低下が認められた.6か月以降は同程度の腎機能で推移していた.この間に何らかの事情でFENの投与が中止されたが,その後も当院の通院を継続している21例の患者を対象に,投与中止2-4か月後の腎機能を検討すると,投与期間の長短にかかわらず,投与中止直前と比較してSCRは1.16±0.29mg/dLから0.96±0.22mg/dLに低下し,eGFRは59.7±19.6mL/min/1.73m2から71.0±19.8mL/min/1.73m2に有意に増加して,それぞれ投与前のレベルに復していた.FENによる腎機能低下機序は明確にされていないが,プロスタグランディンの産生抑制に起因した可逆的な腎血流量の低下が推定されている.

    FENによる腎機能障害は市販後調査等で報告されているSCR上昇(0.99-3.03%)に比べてかなり高頻度であることが判明したが,FENは脂質異常症や高尿酸血症の改善に加えて,糖尿病性腎症や網膜症の進展抑制,血管内皮機能改善,心血管イベント抑制など種々の臨床的有用性が示されている薬物であり,FEN投与に当たっては益と害のバランスを考慮し,投与中は定期的に腎機能検査を行うことが重要と考えられた.

原著 5
  • 大槻 希美, 津谷 寛, 見附 保彦, 上田 孝典
    2021 年 45 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2021/07/25
    公開日: 2021/07/25
    ジャーナル フリー

    蓄尿時間が異なる腎尿酸排泄能指標間の相同性を調べた報告は少なく,スポット尿で求めた尿酸クリアランス分画(FEuaスポット)を腎尿酸排泄能の指標として用いる妥当性は明らかとは言えない.私たちは「わが国における尿酸排泄動態に関する基準範囲の検討(RICE-U)」の研究データ,およびすでに報告した排泄低下型高尿酸血症を検出するFEuaスポット,60分尿酸クリアランス(Cua 60分),あるいは24時間尿酸クリアランス(Cua 24時間)のカットオフ値を用いて,これら3種類の指標を用いた診断の一致度,各指標の精度,指標間の相関性を検討した.対象はRICE-U研究に参加した20歳〜65歳の室内勤務者のうち,生活習慣や疾病等で除外されなかった者とした.各指標間の排泄低下型高尿酸血症診断における相同性はκ係数を用いて評価した.また各検査の精度を比較するため変動係数を算出するとともに,各検査間の相関関係を検討した.解析対象者は796名,男性446名,女性350名であり,高尿酸血症を示したのは75名(9.4%),すべて男性であった.排泄低下型高尿酸血症診断の一致率とκ係数は,FEuaスポットとCua24時間で71.0%,0.43,FEuaスポットとCua 60分で72.4%,0.42,Cua24時間とCua 60分で76.0%,0.48で,相動性はすべてmoderateであった.3種類の指標の男女別の変動係数は30〜35%と同程度であり,各指標間で有意に正の相関関係がみられた.3種類の腎尿酸排泄能指標が相互に代用できると考えられ,汎用性を考慮すると,簡便性に優れるFEuaスポット値を普及させる妥当性が推察された.

第54回日本痛風・尿酸核酸学会総会記録
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