日本らい学会雑誌
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59 巻, 3-4 号
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  • 石井 則久, 中嶋 弘, 青木 一郎, 下田 祥由, 森 龍男
    1990 年 59 巻 3-4 号 p. 154-161
    発行日: 1990/12/30
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    我々は,らい菌を抗原に用いて,種々のインブレッドおよびリコンビナントマウスを用いて免疫遺伝学的解析を行った。
    らい菌抗原と不完全フロイントアジュバントとのエマルジョンを作製し,マウス尾根部に0日目,7日目に注射した。14日目にfootpadにチャレンジを行い,15日目にfootpad swellingを測定した。
    抗原特異性を検討すると,らい菌で感作したマウスはらい菌にのみ反応し,卵白リゾチームやPPDには反応しなかった。
    次にMHCの拘束性を検討すると,C57BL/6,B10.A(3R), B10.A(5R), B10.Gは高反応性であった。B10.BR, B10.MBR, B10.A(4R)は低反応性であった。これらの組み合わせより,MHCのI-A領域が反応性に関与していることが判明し,I-Ab,f,g,sは高反応性,I-Ad,kは低反応性であった。
    この反応性がどの細胞によって惹起されるかを検討するため,感作リンパ節細胞を種々の抗体と補体で処理を行い反応性の変化を観察した。高反応性を示すB10.S (9R)は抗L3T4抗体によって低反応性に変化したが,抗Lyt-2.2抗体では反応性に変化を示さなかった。従って反応性はL3T4+, Lyt-2-のT細胞によって示されることが判明した。
    T細胞増殖反応での免疫遺伝学的解析では,I-A拘束性あるいはD拘束性などの結果が示されていた。今回我々はfootpad swellingを用いた遅延型過敏反応(DTH)の系を用いて検討した。するとらい菌抗原はI-Aに拘束性を示し,他のDTHと反応性が類似していた。なお低反応性のマウスについて抗体処理効果を観察したが,サプレッサーT細胞の関与は明らかではなかった。
  • 第2報 血清陽性応答者の地理的分布,特にその感染源についての考察
    阿部 正英, 小沢 利治, 皆川 文重, 吉野 勇次
    1990 年 59 巻 3-4 号 p. 162-168
    発行日: 1990/12/30
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    沖縄県数ケ所の地域住民の間で,蛍光らい抗体吸収法(FLA-ABSテスト)の陽性率は有意差を示した。この率がらいの不顕性感染の頻度を示すとすると,それぞれの地域の新発生患者一人当りの不顕性感染住民数は723から3,039までの範囲で変動した。7年間の調査中らいの新発生が一例もなかった南大東島の成人の16.2%にFLA-ABSテストが陽性となった。陽性率の差は各地域のらいの有病率および罹患率の差でも,調査対象の年齢および性の差でも説明できなかった。FLA-ABSテストと神経症状との有差な相関が3地域で見出された。南大東島の成人にはこのような症状は見られなかった。らいの新発生が比較的高い2部落でFLA-ABS陽性者および陰性者の分布を調べると,らいが最近見出された家の周囲には陽性者が集っていたが,遠く離れた家にも陽性者が分布していた。これらの諸事実は陽性応答者の大多数への感染源はらい患者との直接の接触よりも環境に由来することを示すように思われる。
  • カマルディン ファジーラ
    1990 年 59 巻 3-4 号 p. 169-182
    発行日: 1990/12/30
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    マレーシアのらいのコントロール•プログラムについて概説した。
    1. マレーシアの地理•人口等について略説した。
    2. マレーシアのらいに関する歴史的背景について簡単に説明した。現在(1989年)のらい患者は5723人で,いずれも治療中のものである。ダプソンの時代以前は,患者は全国的に散在しており,一部は特別なコロニーに隔離されていた。
    3. マレーシアでなされている現在のらいのコントロール•プログラムの一端を紹介した。
    4. らいコントロール•センターの活動状況を説明し,これまでの実績を述べた。
    5. WHOのMDT (multiple drug therapy)が1985年からマレーシアに導入された。治療を有効にするために,NLCC (National Leprosy Control Centre)変法を用いている。Paucibacilli患者の場合は,毎年BIを調べて,5年間観察している。Multibacilli患者の場合は,3週間入院させて集中治療をおこなった後,退院させて自宅で維持治療をやっている。その間,1月に1回Skin Clinicに来させるか,Mobile Clinicが自宅に往診している。MDT開始後3年またはBIが陰性になってから,5∼10年のmono-therapyに切り換えている。再燃の場合は,5年間のMDTをおこなっている。
    6. MDTの成果は,1) DDS耐性の減少,2)らい反応,例えばENLの減少,3) preva- lence率の減少,4) NLCC入院患者の減少,5) 治療中断患者の減少等にみられる。
    7. MDTに関して次のような問題がある。1)サバ州やサラワク州のまだ貧しい地区で治療中断患者が多い,2) まだ開発の進んでいない州で治療スタッフが不足している,3) 検査設備が不備なヘルスセンターがある,4) リファンピシン,クロファジミン,エチオナミドの副作用が観察されている,5) 患者がDDSのmono-therapyからMDTへの変更を拒否する場合がある。
    8. マレーシアにおけるらい患者の検出,診断,治療および経過観察の現状を,いろいろな患者の場合について例示した。
    9. らいの実態調査の方法を簡単に述べた。
    10. らいの疫学的調査をとにし,その有病率の変化等について図示し,解説を加えた。
    11. らいの研究面-臨床検査の実態一について概説した。
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