タイのらいのコントロール•プログラムについて概説した。
1. タイの地理,人口等について略説した。
2. タイにおける出生率,死亡率等,さらに医師や看護婦の数値等について記した。
3. らいは,タイにおいても保健衛生上大きな問題として考えられてきており,1953年にそのコントロール•プログラムが打ち出され,東北地方のコーン•ケーン地区においてそれが試行された。その結果,WHOやUNICEFの指導の下になされた調査により,当時のらい患者数は人口1,000人当り5人で,約14万人と推定された。
4. 1989年当時のタイにおけるらいの状況の一端は次のようなものであった。
○登録総数は,17,294人
○人口1,000人当り0.31人
○新患者数,1249人
○その他
5. タイには,らいの施設として,2つの国立らい療養所,12のコロニー,22のらいセンターがあり,バンコク市内に2つの特別スキン•クリニックがある。1989年には,これらの施設における入園者は3,955名であった。
6. らい対策のために,らいに関わる職員に対する諸種のトレーニングは欠かすことのできないことであり,それには次のようなものがある。
○らい対策の規準作り
○変形の防止やリハビリテーションに関するセミナー
○各地域のリハビリテーション•チームのトレーニング
○各地域の医療関係者に対する諸種のトレーニング
7. タイにおける研究活動はラーチ•プラチャ•サマサイ研究所等を中心になされている。
8. 多剤併用療法は1984年にWHOによってタイに導入され,現在は患者のほゞ92%がこの方法によって治療を受けている。
9. 多剤併用療法を導入したことによって,らいのプリバレンス•レートが減少し,コントロールからはずされる患者数が増加してきている。
10. らい患者が新しく見出された場合には,その患者を中心に色々な方法によって,らいの対策が実行に移されるような仕組みが具体化されている。
11. 1953年に人口1,000人に対して5人の割合であった。そして,1989年に多剤併用療法が開始された時に0.9人であったものがその後0.31に減少してきている。
抄録全体を表示