近年, 高速コンピューターや高速信号処理などのきわめて高性能なシステムの開発が望まれている. これらシステム実現のため, 素子レベルの高速化に対する期待は大きい. こういう状況の中で, Siに次ぐ高速デバイス用材料として, Siの5倍以上の高い電子移動度を有するGaAsが注目されている. HEMTは GaAsのもつ高電子移動度という特質を極限にまで引き出すことに成功した高速デバイスであり, すでにスイッチング性能として, 室温で16ps, 液体窒素温度で12psという従来のいかなる半導体デバイスよりも高速であり, 夢の素子として世界的に開発が推進されているジョセフソン接合素子に匹敵する高速性能が実現されている. ここでは, とくにディジタル集積回路への応用に限定し, HEMT技術の現状を中心に, 基本素子構造, 動作原理, 将来への展望等について概説する.
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