日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
特集号: 日本地震工学会論文集
16 巻 , 1 号
特集号「第14回日本地震工学シンポジウム」その2
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
論文
  • 茂木 秀則, 川上 英二, 内海 満希
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_1-1_9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、KiK-net日野観測点における鳥取県西部地震の本震とその前後の観測記録のNIOM解析を行い、鉛直アレー内の伝播時間の変化を検討した。その結果、(1) 2000年鳥取県西部地震では主要動において速度振幅RMS値が33cm/sに達し、水平成分の伝播時間は0.197sから0.35s程度まで増加したこと、(2)本震後一ヶ月程度までは水平成分の伝播時間は緩やかに減少する傾向が見られるものの、それ以降はほぼ一定値を示し、本震前の値には戻っていないこと、(3)鉛直成分についても水平成分と同様に伝播時間の変化が生じたことなどを指摘した。また、上記の伝播時間に基づいて表層の物性変化を検討し、(4)2000年鳥取県西部地震主要動において最大剪断歪3×10-3、剪断剛性率が20MPa(S波速度100m/s)まで低下し、その後100MPa(S波速度230m/s)まで回復したこと、(5)一方、ポアソン比は0.46~0.47の比較的安定した値を示し、剪断歪への依存性がほとんどみられないことなどを指摘した。
  • 三上 武子, 吉田 望, 原田 健二
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_10-1_18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    有効応力解析のために、広い範囲の繰返し載荷回数に対する液状化強度を推定できる液状化強度曲線の経験式を提案した。既往の経験式は材料特性の違いが十分に考慮されているとはいえず、その適用性が限定される。また、適用できる繰返し載荷回数の範囲も明確でない。本論文では、繰返し載荷回数が5回から100回までの範囲をカバーし、多様な材料特性を示す約200個の不撹乱試料の液状化試験データを収集・整理した。その結果、地質年代および細粒分含有率が液状化強度曲線の形状に影響を及ぼすことが分かった。ただし、実務での使いやすさを考慮して最小限の類型化にとどめ、地質年代をBs+AsとDsの2種類に分類して液状化強度RL20からRL5RL100を推定する経験式を提案した。さらに、これら3つの液状化強度から5~100程度の繰返し載荷回数を適用範囲とする連続曲線を示した。
  • 渡辺 哲史, 加藤 研一
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_19-1_31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    地表1地点の地震観測より得られる自己相関関数の逆解析から、傾斜基盤構造の増幅特性をどの程度推定できるかを2次元FEMで検討した。はじめに仮想サイトを対象に、直下地盤の1次元モデルが既知との前提のもと、正解となる2次元モデルの自己相関関数をターゲットとして、傾斜角と表層減衰を未知パラメタとした簡易2次元モデルの同定を行い、同定されたモデルによる増幅特性が元の2次元モデルによる正解値を概ね再現することを示した。つぎに、実サイトに本推定手法を適用し、その有効性を確認した。また、実観測記録の自己相関関数が、水平成層サイトでは1次元モデルで、傾斜基盤サイトでは2次元モデルで概ね説明できることを示した。
  • ―免震構造物の2次元応答に及ぼす影響に基づく検討―
    鈴木 文乃, 渡辺 哲史, 加藤 研一
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_32-1_48
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    内陸地殻内地震の震源近傍では、大振幅のパルス性地震動が生じるため、地震動の正確な評価が必要とされている。そこで本論文では、観測記録による水平2方向同時入力と1方向入力による免震構造物の応答値の比較を行い、構造物の耐震性評価の観点からもオービット特性の重要性を示す。次に、横ずれ断層の地震動特性を理論的手法により評価し、地震動のオービット特性に対して、震源特性がどのように影響しているか検討する。影響の大きい震源特性に対して、全無限弾性体のグリーン関数解を用いて、近地項、中間項および遠地項の各項の寄与から考察を述べる。そして、それら全項と遠地項のみの地震動による免震構造物の2次元応答解析を行い、地震動の評価手法が免震構造物の応答に与える影響を検討する。
  • 廣川 夕貴, 松島 信一, 川瀬 博, Tun Naing, Myo Thant
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_49-1_58
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    ミャンマーの最大都市であるヤンゴン市近郊では近い将来に大地震が発生することが予測されているにも拘らず、十分な地震災害対策がとられていない。そこで本研究では同市の地震防災性向上にむけたマイクロゾーネーションを行うことを目的として、市内中心部における地盤のS波速度構造推定を行った。推定には、微動の水平上下スペクトル比及び微動アレイ観測から得られる位相速度を用いた。微動観測は市内の26地点での単点観測および1地点での複数サイズのアレイ観測を実施した。その結果、同市内市街地域では地盤の1次、2次ピーク振動数は0.7~1.3Hz、20~40Hzにそれぞれ分布しており、またS波速度は最表層では140m/sで1~2mの層厚があり、それが深度100m程度で800m/sに達することが明らかになった。
  • 眞野 英之, 社本 康広, 石川 明, 吉成 勝美
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_59-1_69
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    地表付近に排水性の高い礫層を設けることで、小規模構造物の液状化被害を大幅に低減する対策の効果を遠心模型実験で確認した。基礎の外周部直下を溝状に礫で置換し、地表面への排水経路を確保することにより、地盤が液状化に至っても構造物の傾斜を大幅に小さくできる。対策は、基礎外周全てに行うのが最も効果的だが、対向2面のみの対策でも大きな傾斜低減効果があることを確認した。
  • 石川 敬祐, 安田 進, 五十嵐 翔太
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_70-1_81
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, 既存の地盤調査結果より作成された浦安市の電子地盤図を用いて, 同市域での東日本大震災時の液状化発生や被害状況を踏まえて、海溝型巨大地震を想定した際の液状化ハザードマップ作成の合理化を目的に検討を行った。電子地盤図を用いた一次元地震応答解析結果より、埋立地盤に対する解析結果は実測値に比べて小さくなる可能性が高いことが考えられた。道路橋示方書に準じた一般的な液状化判定と巨大地震時の影響や液状化強度の地域性を考慮した液状化判定をそれぞれ実施し、東日本大震災時の液状化発生状況との比較を行った結果、道路橋示方書による判定結果は全体的に安全側になる評価結果となり、液状化強度比の地域性や海溝型巨大地震時の継続地震動の影響を考慮することで実被害に即した判定結果になることが確認された。
  • 橋本 隆雄, 安田 進, 山田 恭央, 和田 陽介
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_82-1_95
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    鹿嶋市では東日本大震災により太平洋の海岸線から3kmほど内陸の台地に至る主に5つの地区で液状化が発生し、多くの家屋、道路や下水道管・上水道等のライフランが甚大な被害を受けた。地震の震度・最大加速度は、気象庁観測鹿嶋市鉢形のデータにより、3成分で本震では震度6弱・最大加速度が462gal、余震では震度5強・最大加速度が310galであった。本論文では、特に砂利採掘のために掘削され緩い砂で埋め戻した箇所が液状化した平井東部地区を取り上げ、地下水位低下工法による液状化軽減対策が効果的であることが明らかとなった検証結果について言及する。
  • ―伝播特性に着目した検討―
    司 宏俊, 纐纈 一起, 三宅 弘恵
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_96-1_105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年Mw 9.1東北地方太平洋沖地震などの観測記録から、海溝型巨大地震の地震動距離減衰特性においては、距離の定義によって、既存の地震動予測式と観測記録の適合が大きく異なることが分かってきた。本稿では、断層最短距離と等価震源距離を用いた結果の違いに注目して、海溝型巨大地震の地震動距離減衰特性に含まれる伝播特性の影響に関して検討を行った。その結果、(1) 断層最短距離を用いる場合Mw 9クラスの東北地震による地震動最大値の平均的強さはMw 8クラスのそれと同程度であり、Mwに対する飽和現象が見られることが分かった。一方、等価震源距離を用いる場合、同様な現象は確認できなかった。(2) Mw 9クラスの巨大地震の場合等価震源距離の断層最短距離に対する比率は近距離においてMw 8クラスのそれより数倍大きくなることが分かった。この違いには断層最短距離において近距離やマグニチュードに対する飽和の影響が含まれているとみられる。(3) Mw 9クラスの超巨大地震の場合、断層面上のすべり分布によって近距離における等価震源距離の推定値が大きく変動することもあることが分かった。
  • 川口 剛, 谷本 俊輔, 佐々木 哲也
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_106-1_125
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    FLに基づく簡易液状化判定法で用いられる地震時せん断応力比の低減係数rdは、深さのみの関数として与えられている。しかし、地震時の地中せん断応力は、地震動特性や地盤の応答特性に依存することが知られており、大規模地震動に対する適用性は十分に明らかにされていない。また、大規模地震動を想定した場合、従来のような数値解析によるアプローチでは、計算モデルが常に実地盤の挙動に近い解を与えるとは限らず、得られた統計量やそれを基にした経験式の妥当性に不明な点が残る。本論文は、地震時の実地盤における地中せん断応力に関する大局的傾向を液状化判定法に反映させるべく、数多くの強震記録を基にした経験則を構築することを念頭に、強震記録を活用した地中せん断応力の低減係数rdの評価方法について検討を行ったものである。
  • 野々村 巧, 石川 浩一郎, 井上 圭一
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_126-1_138
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    学校体育館や展示ホール等にみられる空間構造では、音響効果の確保や暖房費削減のため天井がしばしば用いられている。一方、過去の地震被害において、空間構造に有する在来天井の大規模な崩落も少なからず起きていることが報告されている。本研究では、既存学校体育館の鋼製下地在来工法天井を対象とし、本体育館の常時微動測定及び時刻歴応答解析に基づき、振動特性の把握及び本天井における応答性能評価法を提案するとともに例題解析によりその精度等について分析・検討する。
  • 八杉 信行, 羽田 浩二, 堀家 正則
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_139-1_150
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    建物振動のグリーン関数(インパルス応答関数)が精度よく推定できると、建物応答計算や耐震診断に利用でき、その価値は大きい。しかし、精度も信頼性も高いグリーン関数の推定には3つの問題を克服する必要がある。1つ目は、偏心建物の微動観測記録からグリーン関数を推定する際に、基礎階の回転入力の低周波数成分不足により回転に関するグリーン関数の波形に低周波数ノイズによる歪みが生じる問題である。この歪みを補正するため、グリーン関数の信号と考えられる周波数帯以外の周波数成分をもつ無相関ノイズを回転入力に加える方法を提案する。この方法により、回転に関するグリーン関数の低周波数ノイズを除去することができる。2つ目は、建物の微小振動に対する風入力と微動入力の影響について検討することである。建物の微動平均振幅と平均風速及び建物近傍地盤の微動平均振幅を比較した結果、建物の微動平均振幅の変動は平均風速でなく地盤の微動平均振幅の変動と一致する。また、平均風速が大きい時間帯のグリーン関数と小さい時間帯のグリーン関数の比較を行った結果、両者はほぼ同じである。これは平均風速が2m/s程度以下、入力微動が0.002cm/s2程度以上ではグリーン関数の推定には風入力はほとんど影響しないことを示している。3つ目は、解析データ長の問題である。30分間の観測記録から推定したグリーン関数10個の平均値を基準として2個から8個のグリーン関数を平均化したものとの差を評価する。その結果、6個(3時間)であれば、誤差は30分間の観測記録から推定したグリーン関数に比べて3分の1程度に減少し、それ以降は緩やかに減少する。以上の結果から、観測時間は3時間以上が良いと考えられる。現実には微動入力が安定しているのは23時から5時程度の場合が多いため、その時間のデータを全て使うのが良いと考えるが、条件によっては3時間程度でも良いのかもしれない。
  • 垂れ壁・腰壁付きRC造方立壁部材の構造特性と損傷状態に関する実験的研究
    石岡 拓, 向井 智久, 谷 昌典, 近藤 祐輔, 青山 美穂子, 堀 伸輔, 前川 利雄, 松浦 恒久, 久光 広祐
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_151-1_161
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    東日本大震災で被災した非耐力壁を有するRC造建築物の事例を収集し、損傷低減が必要とされる架構のプロトタイプが提案された1)。そのデータを基に垂れ壁・腰壁が取り付く方立壁部材の構造特性および損傷状態の定量化を把握する目的で開口パターンおよび壁厚、壁の配筋が異なる3体の試験体の構造実験を行った。実験の結果、腰壁の有無で構造特性が異なること、RC規準の許容耐力算定法は安全側の評価となること、骨格曲線の評価のうち初期剛性は高めに算定され、終局強度は精度良く算定されることが分かった。
  • 木下 貴博, 佐藤 利昭, 永野 正行, 北村 春幸
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_162-1_169
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本論文では、地盤との動的相互作用の影響が大きい免震構造の上下応答に関し、上部構造の梁スパン長さの差異が振動特性に与える影響を検討した。梁スパン長さとして5ケースを想定したモデルを設定し、その変化が上部構造およびアイソレータの応答に与える影響を把握した。スパンが長いほど、梁振動が上下応答に与える影響は大きく、アイソレータの軸力を増大させる傾向を示した。最後に、各ケースに対し、相互作用の影響を基礎固定モデルで等価に評価する簡易評価法を適用した。梁振動が顕著となる場合は、鉛直部材のみに等価減衰を付与する基礎固定モデルで、相互作用による応答低減を再現可能であった。
  • 棚橋 秀光, 大岡 優, 鈴木 祥之
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_170-1_183
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    著者らは、伝統的構法の木造建築物の楔をもつ仕口のメカニズムの解明に取り組み、楔打ち込みにより導入される支圧力により回転抵抗と摩擦抵抗が増大するメカニズムを解明した。本論では、さらにテフロンシートの有無により摩擦係数が変化することに着目した十字型接合部の載荷実験を行い、摩擦係数の変化による復元力への影響を明らかにする。さらに、楔と摩擦の効果をより立ち入って分析することで、楔の復元力特性に及ぼす重要な効果を解明し、その定式化とシミュレーションを試みる。
  • ハザリカ ヘマンタ, 原 忠, 西村 謙吾, 山崎 直哉, 門司 直也, バブルー チョードリー, 石藏 良平, 笠間 清伸
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_184-1_204
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震では、強い揺れと巨大津波で防波堤や防潮堤などの海岸保全施設が甚大な被害を受け、堤内地の浸水拡大を招いた。発生確率の高い南海トラフを震源とする地震など、巨大地震による揺れや津波の複合災害の被害を軽減することは緊急に対応すべき課題であり、設計津波高を超えた場合であっても軽微な被害に留める減災効果の高い、粘り強い構造物の開発が進められている。筆者らは、防波堤基礎地盤に鋼矢板及び蛇篭式マウンド(捨石マウンドを蛇篭で包んだもの)を配置し、耐震性の向上と設計津波高を超過する甚大な津波外力に対しても被害を最小化する粘り強い補強法の開発を試みている。本研究では、模型実験および要素試験を用いて開発補強工法の耐震性を評価した。まず、模型実験のマウンド材に用いた砕石の常時及び地震時のせん断特性を明らかにするため、室内三軸試験による基礎的実験を行った。続いて、鋼矢板および蛇篭補強による耐震効果を評価するため、蛇篭の設置条件や鋼矢板の列数が異なる1G場振動台模型実験を行い、防波堤の沈下や傾斜、滑動の観点から防波堤の耐震効果を検討した。一連の研究結果から、マウンド材が常時および地震時に優れたせん断抵抗力を発揮することが分かった。さらに、防波堤基礎を鋼矢板と蛇篭で補強することで地震時にケーソンの沈下と変位を抑制できることを明らかにした。
  • 森下 真行, 齊藤 芳人, 龍神 弘明, 永野 正行, 肥田 剛典, 田沼 毅彦, 渡辺 一弘
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_205-1_216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震において、首都圏に建つ建物は継続時間の長い比較的振幅レベルの大きい地震動を経験しており、地震観測記録の分析に解析的な検討を交えた総合的な建物動特性の把握が重要である。本稿では、地震観測結果の分析を通じて建物動特性が既に評価されているRC造超高層建物を対象に、立体フレームモデルによる非線形応答解析を通じて、地震観測結果の再現性を確認するとともに、入力地震動特性ならびに入力レベルの違いが建物応答特性に与える影響について検討した。
  • 水島 靖典, 向井 洋一, 難波 尚, 多賀 謙蔵, 猿渡 智治
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_217-1_227
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    建築構造物の数値解析精度を確認するために、数多くの実大震動台実験のシミュレーションが行われている。近年では、コンピュータの目覚ましい発展により建築構造物全体を詳細なメッシュで分割して解析を行う詳細有限要素解析に関する取り組みも報告され、高精度な解析が可能であることが示されている。ところで、通常の震動台実験では、複数回の加振が行われている。しかしながら鋼構造建物を対象とした詳細有限要素モデルで、加振履歴を考慮した数値解析例は筆者の知る限り存在しない。そこで本研究では実大震動台実験を対象として、高精度な解析が可能である詳細有限要素解析を用いて、加振履歴を考慮した数値解析を行い、実験と同様に加振履歴を考慮することが解析による実験結果再現性向上のために重要であることを示した。
  • 松崎 裕, 小野寺 周, 鈴木 基行
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_228-1_237
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    免震支承およびRC橋脚の水平荷重-水平変位関係に関して、RC橋脚は免震支承に比較して有意な2次剛性を有しない。そのため、免震支承-RC橋脚系においては、設計地震動に対して免震支承が先行して塑性化することでRC橋脚が限定的な塑性変形に留まる場合であっても、設計地震動を超過する強度を有する地震動の作用下では、主たる塑性化部材が免震支承からRC橋脚へと移行し、意図しない程にRC橋脚の塑性化が進展する危険性がある。そこで、本研究では、地震動の不確定性が免震支承-RC橋脚系の地震時損傷に及ぼす影響について漸増動的解析に基づく基礎的な検討を行った。その結果、RC橋脚が降伏するよりも大きな地震動の作用下において、構造系における終局限界状態として、RC橋脚の終局変位への到達と免震支承の破断のいずれが先行して生起するのかは応答スペクトルの固有周期特性や位相特性の影響を強く受けることが示された。
  • 豊﨑 裕司, 成行 義文, 源 貴志
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_238-1_247
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、モード特性の変化に基づいた合成桁橋の損傷同定手法を開発するための基礎的な研究である。一般的に、構造物は損傷することによりモード特性に変化が現れる。モデル橋梁を設定し、60ケースの損傷シナリオに対するモード解析結果から、1次モードにおける固有振動数および複数の注目ラインの鉛直成分の変化は、橋梁主部材の損傷位置ならびに損傷度と良好な対応関係があることが明らかになった。これらの関係を用いて、損傷前後の1次モード形の変化より橋梁の損傷位置と損傷程度を推定するための手法を提案した。
  • 伊藤 和也, 高梨 成次, 堀 智仁, 吉川 直孝
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_248-1_257
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    今後発生する可能性がある地震に対して、どの箇所で労働災害が発生し易いのかを概略的に事前把握することは、地震発生後の労働災害防止対策の重点化に有効と考えられる。本報では、東日本大震災や新潟県中越地震および新潟県中越沖地震の災害復旧工事中の労働災害分析から得られた建築工事業における「墜落・転落」災害と建物一部損壊被害との相関を用いて、地震による建物被害想定から建築工事業における「墜落・転落」による労働災害発生の蓋然性を把握する予測モデルの構築を行い、そのモデルを使用した試検討の結果を示す。
  • 清水 智, 小丸 安史, 若浦 雅嗣, 藤原 広行, 中村 洋光, 森川 信之, 早川 讓
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_258-1_273
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    確率論的地震動予測地図のハザード情報を用いて、日本全国を対象に過去から将来にわたっての地震の揺れによる住宅全壊リスクを試算した。起点年は、1890年、1920年、1950年、1980年、2010年、2040年である。試算にあたっては、各起点年における住宅データを推計するとともに、各起点年の全壊率関数をそれぞれ設定し試算した。試算の結果、我が国の地震リスクにおいて海溝型の地震が多大な影響を及ぼしており、地震リスクを時間軸で評価するという視点が重要であるとともに、建物の耐震性能や社会的要因の変化が日本の地震リスクの変遷に大きな影響を与えていることを示した。
  • 榊 想太郎, 丸山 喜久
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_274-1_284
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、津波が発生した際の自動車運転を体験できるドライビングシミュレータを用いて、自動車による避難実験を行った。このドライビングシミュレータには、神奈川県鎌倉市を想定した津波遡上CGが搭載されており、津波数値解析結果が3次元都市モデル内で生成される。避難実験は、カーナビによる経路案内や、津波ハザードマップを走行中に表示するシナリオを用いることとし、被験者の避難行動を、浸水情報の周知、経路案内の有無などに着目し、シナリオ間で比較した。さらに、運転者への情報提供が津波時の避難行動にもたらす効果および問題点を検討した。実験の結果から、自動車の津波避難成功率を高めるには周囲の交通状況に応じた推奨避難経路を提供することが最も望ましいと考えられるが、その実現は短期的には難しく、道路標識等を活用する、地域内で自動車避難の優先順位付けをする、防災教育を充実するなど、多角的な取り組みが重要と考えられる。
  • 藤岡 一頼, 横田 聖哉, 日下 寛彦, 広瀬 剛
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_285-1_308
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本地震」という。)により、高速道路の土工部においても、路面のクラックや段差等が約4,200箇所確認されたほか、21箇所は本線車線に影響する比較的大きな被害も確認された。そのうち、被害の大きい3箇所の盛土の崩壊要因について分析した。その結果、過去の地震で崩壊要因として着目していた傾斜地盤上の谷埋め盛土や軟弱地盤上の盛土に加え、新たな形態として比較的良好な平坦地盤上の盛土において、盛土内の過剰間隙水圧の上昇など水の集まりやすい条件の箇所により崩壊に至ったことを確認した。本論文では、平坦な地盤での盛土崩壊の要因分析により一定条件のもとでは大きな崩壊が生じることを明らかにし、さらに類似条件の盛土に対して効果的でかつ実用的な耐震対策工法を提案した。
  • 後藤 浩之, 羽田 浩二, 澤田 純男, 吉田 望, 大内 徹
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_309-1_321
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震の本震では、福島県浪江町の市街地において地震動による建物被害が発生した。周辺の市町村と比較して建物被害が顕著であるのみならず、市街地においても地区毎の被害率に差が見られた。本研究では、被害率の差の原因を調べるため、地区毎の表層地盤構造の違いを明らかにすることを目的とした常時微動観測、および臨時余震観測を実施した。微動H/Vスペクトルによる卓越周波数の分布、および微動アレー観測により求められる表層のS波速度モデルによると、市街地では概ね一様な表層地盤が示唆される。また、臨時余震観測の記録から地区毎の震動特性の差を比較したところ、PGV比およびスペクトル比において、差がばらつきの範囲内であった。震動特性の差の小さいサイト間を評価する場合にはばらつきの影響を考慮する必要があり、本研究のように狭い範囲を対象とした評価では特にその問題が顕在化するため、ばらつきの程度に応じて評価の対象とする空間解像度を定めることが重要である。
報告
  • 秦 吉弥, 野津 厚, 一井 康二, 丸山 喜久, 酒井 久和
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_322-1_341
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    千葉県我孫子市布佐地区は、2011年東北地方太平洋沖地震(MW9.0)、2011年茨城県沖地震(MJ7.6)、2011年福島県浜通り地震(MJ7.0)による強震動の作用を受けており、現地における地盤災害の分析などのためにも、当該地震における布佐地区での地震動を事後評価することは非常に重要である。本研究では、布佐地区内での常時微動計測および地震観測の結果などに基づいて、布佐地区におけるサイト特性を評価した。そして、サイト特性置換手法を用いて布佐地区における工学的基盤相当での地震動を推定した。その結果、布佐地区の地盤に作用した地震動は、布佐地区に最も近い利根町役場で得られた観測記録よりも大きかった可能性が高いと考えられる。
  • 植竹 富一
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_342-1_351
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    茨城県沖・福島県沖で発生する地震は、長周期の卓越が見られないという報告があるが、浅い地震では、やや長周期の表面波の励起が期待される。この地域の気象庁マグニチュード6.5以上、深さ60km以浅の地震を対象に、東京湾岸での長周期地震動と震源深さの関係を調べた。震源が浅い地震では深い地震に比べ長周期の後続波群が顕著になり、長周期地震動の振幅が相対的に大きい。また、長周期地震動の卓越に震源メカニズムが影響していると考えられる事例や実体波の増幅が影響しているケースも確認された。東京湾岸の長周期地震動の卓越周期や振幅レベルを考える上で、多様な要因の考慮が必要である。
  • ―北海道における調査事例報告―
    江川 拓也, 山梨 高裕, 冨澤 幸一
    2016 年 16 巻 1 号 p. 1_352-1_364
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/28
    ジャーナル フリー
    本報は、特殊土でありながら既往の液状化判定法では特別な取り扱いがされていない火山灰質土の液状化特性の把握と評価を目的に、1993年北海道南西沖地震と2003年十勝沖地震で火山灰質地盤の液状化が確認された地点またはその近傍において実施した原位置調査および室内土質試験結果から考察を行った。その結果、現行の液状化強度比RL推定式では、火山灰質土のRLを過小評価しており、現行のRL推定式への新たな係数や補正値、または、火山灰質土特有のRL推定法が必要であることを明らかにした。
feedback
Top