Journal of Applied Glycoscience
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56 巻, 4 号
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Regular Papers
  • 阿部 雅美, 上野 敬司, 石黒 陽二郎, 大森 俊馬, 小野寺 秀一, 塩見 徳夫
    2009 年 56 巻 4 号 p. 239-246
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    ごぼうから初めてフルクタン:フルクタン1-フルクトシルトランスフェラーゼ(1-FFT)を精製し,それをコードするcDNAをクローニングした.1-FFTaおよび1-FFTbと名付けた2種の1-FFTが硫安分画,DEAE-Sepharose CL-6B, Toyopearl HW-55SおよびSephadex G-100の各種クロマトグラフィーを行うことによりごぼう抽出液から精製された.ニストースや高い重合度をもつフルクトオリゴ糖などのイヌリン型フルクタンが1-ケストースから精製1-FFTにより生成された.両精製酵素の一般性質はよく似ていた.1-FFTaおよび1-FFTb両精製酵素はネイティブPAGEにより単一バンドを示したが,SDS-PAGEでは1-FFTaでは分子量が約46,000と17,500の位置に,1-FFTbでは約46,000と17,000の位置に,それぞれ2本のバンドを示した.両酵素の46,000のペプチドのN末端配列は同じ配列であり,両酵素の17,500と17,000のペプチドのN末端配列もまた同じ配列であった.これらの配列に基づいてalft1と名付けた1-FFT cDNAをクローニングした.alft1は617アミノ酸からなるポリペプチドをコードしていた.推定されるアミノ酸配列の成熟タンパク質領域の分子量と等電点は60,213および4.89と計算された.Pichia pastorisで生産された組み換えタンパク質の性質はごぼうから精製した1-FFTとよく似ていた.本研究において,われわれはごぼう由来1-FFTとそれをコードするalft1がごぼうのフルクトオリゴ糖のフルクトシル鎖の伸長に関与することを示した.
  • 高村 百合子, 木下 かおる, 伊藤 梓, 服部 誠, 好田 正, 稲熊 隆弘, 高橋 幸資
    2009 年 56 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯澱粉粒の糊化および老化挙動に及ぼすトマト,ニンジンおよび赤ピーマンから調製した荷電遊離アミノ酸含量の異なる野菜漿液の特徴的な影響を示差走査熱量測定,ラピッドビスコアナライザーおよび透明度による評価結果から解析した.糊化温度(GT)は,各野菜漿液の添加量に伴い上昇し,上昇したGTは野菜漿液の荷電アミノ酸含量に概ね依存した.各野菜漿液の少量の添加で,膨潤の抑制によってピーク粘度およびブレークダウンは著しく低下し,糊化温度が上昇した.野菜漿液の添加は,セットバックおよび濁度の上昇をもたらし,再糊化エンタルピーをコントロールの約50―60%まで低下させた.このことは,野菜漿液が冷却過程で分散した澱粉鎖の絡み合いや凝集に続く規則構造の再形成を減じたことを示唆する.
  • 小川 晃範, 住友 伸行, 袴田 佳宏, 佐伯 勝久, 尾崎 克也, 小林 徹
    2009 年 56 巻 4 号 p. 253-259
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    Paenibacillus sp. KSM-N546は,アルカリセルラーゼを生産する菌株としてスクリーニングされたが,ショットガンクローニングにより得られた遺伝子産物の中に新しい酸性エンドグルカナーゼ(Egl-546H)を見出した.その遺伝子は1710 bpの塩基からなり,Egl-546Hは570アミノ酸から構成されていた.37アミノ酸からなるシグナルペプチド様の配列を除いた成熟酵素の分子量は約61 kDaであり,Geobacillus sp. Y412MC10由来のセルラーゼと68%の相同性を示した.精製した組換え酵素のカルボキシメチルセルロースに対する最適pHは5.3,最適温度は40°C付近にあった.組換え酵素はリケナン,グルコマンナンを良好に分解したが,結晶性セルロースには作用しなかった.また,ハンギングドロップ蒸気拡散法により桿状の酵素結晶が得られた.Egl-546Hは,GHファミリー5に属する触媒ドメインとC末端側に機能未知のDUF291様のドメインから構成されていた.DUF291様ドメインの機能を探る目的でこのドメインを削除した三つの変異タンパク質をコードする遺伝子を作製し,さまざまな系で発現を試みたが,いずれの変異タンパク質においても大腸菌内においてインクルージョンボディとして発現され,それらには全く活性が見出されなかった.
  • 小川 俊, 坂 雅典, 吉崎 隆之, 清水 哲哉, 奥野 智旦, 宮入 一夫
    2009 年 56 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    リンゴ銀葉病菌 (Stereum purpureum) の培養濾液から3段階のカラムクロマトグラフィーによりエンドポリガラクツロナーゼ (EndoPG) VIa,VIbを精製した.N末端アミノ酸配列分析をしたところ,両酵素は同じN末端アミノ酸配列を示した.ESI‐MS (electrospray ionization mass spectrometry) で分析したEndoPG VIa,VIbの分子量は,それぞれ36,017 Daと37,266 Daであり,Endo-β-N-acetylglucosaminidaseを用いてN‐結合型糖鎖を取り除くと分子質量がそれぞれ34,987 Daと35,202 Daに減少した.以上の結果から,EndoPG VIaとVIbは,以前報告したEndoPG Ia,Ib,Ic同様ポリペプチド部分が同じで,VIaには1本,VIbには2本のハイマンノースタイプのM5型糖鎖が結合していると考えられる.次にEndoPG VIとIを比較したところ,後者が約70℃まで熱安定であるのに対し,EndoPG VIは55℃と約15℃ほど熱安定性が低いことがわかった.また,円二色性スペクトルの昇温測定から求めたEndoPG Iの融解温度 (Tm) 値が79.5℃であるのに対して,EndoPG VIでは62℃と約17.5℃低かった.一方,ポリガラクツロン酸を基質に用いたときのEndoPG VIa,とVIbの比活性はそれぞれ448,421 U/mgであり,EndoPG Iの450 U/mgとほぼ同じであったが,基質特異性にやや違いがみられた.最後にN末端アミノ酸配列情報を用いてRACE法によりEndoPG IVのcDNAをクローニングしたところ,EndoPG IとEndoPG VI間のアミノ酸配列のホモロジーは72%であった.アミノ酸配列情報と,上で求めた酵素の分子量から,EndoPG IVではEndoPG Iにみられたような44残基におよぶ大きなC末端側の欠失はないと推定された.
Notes
  • 森 澄子, 金子 哲
    2009 年 56 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    エノキタケFlammulina velutipes NBRC33210を用いて,デンプンを原料としたエタノール発酵を検討した.5%のデンプンと菌糸の混合液を嫌気条件において発酵させた場合には,全くエタノールは生産されなかった.しかしながら,エノキタケを好気的に7日間培養した場合,デンプン分解酵素が誘導され,その後,デンプンを原料として発酵した場合にはエタノールの生産がみられた.デンプンからのエタノール変換率は32.4%であった.発酵する際に市販のデンプン分解酵素を添加した場合,α-アミラーゼは全く添加の効果がなかったが,α-グルコシダーゼ,グルコアミラーゼでは顕著に酵素添加の効果が現れた.0.1 U/mLのグルコアミラーゼを添加した場合,デンプンからのエタノール変換率は72.6%に達した.
  • 坂本 裕輔, 久野 恵理子, 富山 歩美, 平野 貴子, 久間木 寧子, 田中 明奈, 神田 裕士, 古屋 憲一, 袴田 航, 奥 忠武, ...
    2009 年 56 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    キチンオリゴ糖デアセチラーゼ(COD,EC 3.1.1)は,N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)がβ-(1,4)-グリコシド結合で連結したオリゴ糖(キチンオリゴ糖)の部分脱アセチル化を触媒する酵素である.以前,われわれは,(GlcNAc)2からCODによって生産されたヘテロ2糖(GlcNAc-GlcN)が,本酵素の遺伝子を有する数種のVibrio属細菌において,栄養となるばかりでなくキチナーゼ生産の誘導物質として機能していることを見出した.このように,CODはある種の細菌のキチン分解代謝において重要な役割を担っていることがわかった.しかし,CODに関しては,現在のところ3種のVibrio属細菌が生産するものについての報告しかなく,本酵素の生物機能,特異性および生物界における分布などについては不明な点が非常に多い.われわれは,CODに関するより多くの知見を得るため,自然界よりCOD生産菌のスクリーニングを行ったところ,静岡県下田市の爪木崎沖海底に沈めたキチン片に付着していた細菌からcarbohydrate esterase family 4に属する分泌型CODを生産する細菌(Vibrio sp. SN184)を単離することができた.本菌によるCOD生産量はきわめて少なかったため,分泌シグナル配列を含むCOD遺伝子をクローニングし,大腸菌によりリコンビナント酵素(rCOD)を培養液中に過剰生産させた.得られたrCODを精製し,GlcNAcとキチンオリゴ糖(重合度;2-6)に対する特異性を調べたところ,(GlcNAc)2と(GlcNAc)3に対して活性を示した.また,その活性は(GlcNAc)3よりも(GlcNAc)2に対して高かった(約3倍).このような特異性は,3種のVibrio属細菌由来のCODの中でもV. parahaemolyticus KN1699のものと類似していた.また,本酵素が(GlcNAc)2からGlcNAc-GlcNを,(GlcNAc)3からGlcNAc-GlcN-GlcNAcを生産したことから,キチンオリゴ糖の脱アセチル化は,非還元性末端GlcNAc残基の隣りのGlcNAc残基で起こることがわかった.この結果は,これまでに報告された3種のVibrio属細菌のCODの反応位置特異性と同じであった.
  • 桐生 高明, 木曽 太郎, 中野 博文, 村上 洋
    2009 年 56 巻 4 号 p. 277-280
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    グルクロニル残基の転移活性を示すAspergillus niger由来β-グルクロニダーゼを市販酵素剤から部分精製した.pHや温度に対する挙動などの諸性質から,本酵素はすでに報告されているA. niger由来のβ-グルクロニダーゼと同じタイプの酵素であると考えられた.本酵素は,A. niger由来の酵素によるグルクロニル転移の受容体として報告されているD-グルコースなどの単糖の他に,2-デオキシ-,3-デオキシ-D-グルコース,2-デオキシ-D-ガラクトース,D-ガラクトサミンそしてD-グルコサミンを良好な糖受容体とした.一方,D-アロース,D-グロース,D-マンノサミンへのグルクロニル転移活性は認められない,または,認められても微弱であった.HPAEC-PAD分析の結果,D-グルコースへの転位物は3種類生成していることがわかった.最も生成量の多かった転移物をBio-Gel P2で精製し,NMRで構造を確認したところ,β-D-グルクロニル-(1→4)-D-グルコースであることが確認された.本酵素はp-ニトロフェニルβ-D-グルクロニド,β-D-グルクロニル-(1→2)-D-グルクロン酸やβ-D-グルクロニル-(1→4)-D-グルコースを加水分解したが,メチルβ-D-グルクロニドやβ-(1→1)グルクロニド結合を有するα,β-トレハロース二酸化物には作用しなかった.
報文
  • 塚本 篤, 福島 道広, 永島 俊夫, 橋本 直人, 齋藤 勝一, 野田 高弘
    2009 年 56 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯澱粉を副原料とした新規の発泡酒を製造するために,まず,品種および粒径の異なる数種の馬鈴薯澱粉の中から発泡酒醸造適性を有するものを選定した.また,このようにして得られた発泡酒の成分特性を評価した.馬鈴薯澱粉工場の10種類の製品について澱粉特性を検討した結果,風力分級機によって得られた極小粒子澱粉(メジアン径13.6μm)は,リン含量が高いが,RVAによる最高粘度は低いので,発泡酒の副原料として最適であると判断した.リン酸化澱粉が分解して生じるリン酸化オリゴ糖の分析の結果,このような馬鈴薯澱粉で醸造した発泡酒に明らかにその存在が認められた(600 ppm).一方,コーンスターチおよびサツマイモ澱粉で醸造した発泡酒では,リン酸化オリゴ糖はほとんど認められなかった.
  • 菊田 千景, 川西(朝岡) 正子, 大谷 弥里, 杉本 温美
    2009 年 56 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/04
    ジャーナル フリー
    世界各国から集めたジャガイモを日本の気候風土に合わせて栽培した,テイスティングポテトと呼ばれる10品種のジャガイモ(アンデスレッド,インカのめざめ,ジャガキッズパープル,ビオレッタ,タワラムラサキ,デストロイヤー,十勝こがね,ヨーデル,シェリー,シンシア)を,2°Cで2カ月ならびに7カ月貯蔵し,それらから単離した澱粉の理化学的特性に及ぼす低温貯蔵の影響を調べた.分析した項目は,粒度分布,X線回折,ラピッドビスコアナライザー(RVA)による糊化特性,示差走査熱分析,リン含量,アミロース含量,溶解度および膨潤度,酵素分解ならびに走査電子顕微鏡による観察である.テイスティングポテトの澱粉は,低温下での貯蔵期間が延長することにより,X線回折図形はB図形のままで変化がなかったが,RVAのセットバック,酵素分解性ならびにアミロース含量が増加する傾向にあった.しかし,その他の理化学的特性は,品種により変動はさまざまで,一貫性がほとんどなく,各品種の原産地などとの関連についても認められなかった.
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