Journal of Applied Glycoscience
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46 巻, 4 号
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  • 北原 兼文, 上野 純子, 菅沼 俊彦, 石黒 浩二, 山川 理
    1999 年 46 巻 4 号 p. 391-397
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     調理後特徴的な性質を示す新形質サツマイモ塊根(低アミロース品種九系89376-12,高甘味品種九州127号,沖縄品種宮農36号)の澱粉の物理化学的性質を調べた.九系89376-12の澱粉はアミロース含量を除く他の構造特性はコガネセンガンのものと類似しており,両澱粉における糊化特性の相違はアミロース含量の差によるものと思われた.一方,九州127号と宮農36号は低い糊化温度と冷却時における高い粘度,高いグルコアミラーゼ消化性を示した.宮農36号は,見かけのアミロース含量と枝切り処理後の鎖長分布において低アミロース性は認められなかったが,そのアミロペクチンに多量の長鎖が存在することが判明し,したがってアミロース成分は少ないことがわかった.さらに,高性能陰イオン交換クロマトグラフィーにより,九州127号と宮農36号は重合度6-11の短鎖が多いことが明らかとなった.このように調理後特徴的な性質を示す塊根は,その澱粉の物理化学的性質に固有特性が認められた.
  • 茶圓 博人, 仲田 哲也, 西本 友之, 黒田 信江, 福田 恵温, 杉本 利行, 栗本 雅司, 辻阪 好夫
    1999 年 46 巻 4 号 p. 399-405
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     好熱嫌気性菌Thermoanaerobium brockii ATCC35047株由来耐熱性トレハロースホスホリラーゼをDEAE-トヨパール,ブチルトヨパール,ウルトロゲルAcA44の各種カラムクロマトクラフィーにより電気泳動的に単一にまで精製した.本酵素の分子量はゲル濾過で190,000,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で88,000であった.加リン酸分解の至適pHは7.0-7.5,合成の至適pHは6.0-7.0であった.至適温度は分解合成とも70℃ であった.本酵素はpH6.0-9.0,60℃ 以下で安定であった.本酵素活性はCu2+,Hg2+,Mg2+,Mn2+,Pb2+,Zn2+の各金属イオンで阻害された.本酵素のトレハロース,無機リン酸,グルコース,β-グルコース1-リン酸に対する.Km値はそれぞれ0.97mM,0.57mM,2.4mM,0.75mMであった.本酵素はこれまで報告されているトレハロースホスホリラーゼの中で耐熱性が最も高かった.
  • 小林 幹彦, 田中 英子, 高原 英成
    1999 年 46 巻 4 号 p. 407-412
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     タカアミラーゼA(TAA)を澱粉,デキストランなどの各種ジアルデヒド誘導体で架橋状に修飾した.ジアルデヒドー澱粉では修飾により,TAAの遊離のアミノ基量と酵素活性が速やかに,かつ,顕著に減少したが,ジアルデヒドーデキストランでは同量程度のアミノ基が修飾されてもTAAの失活は小さかった.SDSゲル電気泳動によりTAA-ジアルデヒドーデキストラン複合体の分子量の増加が示された.修飾したTAAの各種基質に対する作用を比較したところ,TAAの修飾の度合いが高まるほどマルトース,フェニルα-グルコシドへの作用性が増加することがわかった.これとは逆に,マルトトリオース,マルトテトラオース,γ-サイクロデキストリンに対する作用は修飾に伴って減少した.この場合にも,ジアルデヒドーデキストランで修飾したTAAの方がジアルデヒド澱粉で修飾した酵素よりも,これらのオリゴ糖に対して高い活性を示した.さらに,蛍光試薬のオルトフタルアルデヒドによる失活は,TAAをあらかじめジアルデヒドーデキストランで修飾しておくことで減衰されたことから,TAAとジアルデヒド誘導体との反応には酵素活性に致死的な影響を与えにくいアミノ基が関与していることが示唆された.
  • 前田 智子, 大倉 美紀, 森田 尚文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 413-422
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     分級精粒法により調製した分級小麦粉の特性と分級粉の代替によるドウ物性と製パン性について検討した.小麦穀粒が通常の方法で製粉されると,ほとんどの食物繊維やミネラルが除去される.そこで,穀粒すべてを保持できる分級精粒法を使用した.軟質小麦品種,農林61号の穀粒を,穀粒総重量の10%の割合で外層から中心部まで段階的に搗精した.いずれの分級粉もパンのボリュームは小さく,硬くなった.さらにドウの粘弾性(圧縮応力,弾性率,粘性係数)は増加した.ドウ中のSH基含量は市販の強力粉よりも多く含まれていたが,SS結合の量は少なかった.いずれの分級粉も単独では,良好な製パン性を示さなかった.通常に製粉された農林61号(N61)への10%の分級粉A-4(70-60%),A-7(40-30%)の代替により,比容積はN61単独の場合よりも若干増大した.更にヘミセルラーゼ(Hem)を添加すると,パンの体積は明らかに大きくなり,軟らかくなった.ドウの顕微鏡観察ではN61単独の場合よりもグルテンマトリックスが太ぐなり,ほとんどの澱粉粒子が包まれていた.N61への10%の分級粉A-4(70-60%),A-7(40-30%)の代替により,Hemの添加の有無にかかわらずドウの物性と製パン性を明らかに改善することがわかった.
  • 茶圓 博人, 山本 拓生, 西本 友之, 仲田 哲也, 福田 恵温, 杉本 利行, 栗本 雅司, 辻阪 好夫
    1999 年 46 巻 4 号 p. 423-429
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     好熱嫌気性菌Thermoanaerobium brockii ATCC35047はコージビオースを可逆的に加リン酸分解し,β-グルコース1一リン酸とグルコースを生成する新規酵素,コージビオースホスホリラーゼを産生する.本酵素を各種カラムクロマトグラフィーにより,菌体破砕抽出液から電気泳動的に単一にまで精製した.本酵素の分子量は83,000,等電点は4.3-4.4であった.本酵素の至適pHは5.5,至適温度は65℃ であった.pH安定性は5.5-9.7,温度安定性は65℃ までであった.本酵素の活1生はHg2+イオンとPb2+イオンで阻害された.コージビオース,無機リン酸,グルコース,炉グルコース1-リン酸に対するKm値はそれぞれ0.77mM,0.85mM,3.52mM,0.77mMであった.
  • 村田 健臣, 島田 睦, 渡辺 修治, 坂田 完三, 碓氷 泰市
    1999 年 46 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
     Aspergillus puiverulentus由来のβ-キシロシターゼは,4-O-β-D-キシロピラノシル-D-キシロピラノース(キシロビオース)からD-グルコースの1級水酸基への高位置選択的キシロシル移転反応を触媒し,6-O-β-D-キシロピラノシル-D-グルコピラノース(プリメベロース,1)を生成した.本2糖は活性炭-セライトカラムクロマトグラフィーにより29%の収率で容易に単離できた.同様にして,D-グルコースの代わりにp-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシドを受容体基質として用いた場合,本酵素によってp-ニトロフェニル6-O-β-D-キシロピラノシル-β-D-グルコピラノシド(pNPβ-プリメベロシド,2)が優先的に生成し,その構造異性体であるpNP4-O-β-D-キシロピラノシル-β-D-グルコピラノシドとpNP3-O-β-D-キシロピラノシル-β-D-グルコピラノシドも同時に生成した.3種類の転移生成物はトヨパールHW-40Sカラムクロマトグラフィーによって容易に分離され,目的化合物2を受容体基質当り13%の収率で得た.これらの糖転移反応は,1および2のワンポット合成法として有効であった.
  • 藤末 真実, 吉永 一浩, 室屋 賢康, 安部 淳一, 檜作 進
    1999 年 46 巻 4 号 p. 439-444
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     1,5-アンヒドロフルクトース(1,5-AF)の簡便な調製法を開発し,その抗酸化活性を調べた.まず,α-1,4-グルカンリアーゼ(EC4.2.2.13)を紅藻類のGracilaria verrucosa(おごのり)から抽出し,澱粉吸着により精製した.この酵素を用いて,360gのモチトウモPコシ澱粉からイオン交換樹脂とゲル濾過の行程を経て,150gの純度98.6%の1,5-AFを得た.産物はIH-13C COSY NMRによって1,5-AFと同定した.[α]D25は-16.8°であった.1,5-AFの抗酸化力をリノール酸の酸化防止を対象として,アスコルビン酸(VC)と比較検討した.その結果,1,5-AFはVCに対して,チオバルビツーノレ酸法やチオアシン酸法では,ほぼ1.8倍の抗酸化力のあることが認められた.
  • 濱保 健一, 藤田 孝輝, 原 耕三, 橋本 仁, 谷本 敏子, 小泉 京子, 中野 博文, 北畑 寿美雄
    1999 年 46 巻 4 号 p. 445-448
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     リゾチームの糖転移作用を利用して,N-acetylchito oligosaccharidesと分岐サイクロデキストリン(CD)からN-acetylglucosamineを結合したヘテロ分岐CDを合成した.N-acetylchitooligosaccharidesとmaltosyl-βCDからの転移物はN-acetylglucosamineがmaltosy1-βCDの分岐側鎖の非還元末端のグルコシル基にβ-1,3結合した,6-O-α-(32-O-β-D-N-acetylglu cosaminyl-)maltosy1-βCD、と同定レた.リゾチームによるN-acetylglucosaminyl-maltosyl-βCD合成の60℃ における最適pHおよびpH4。5における最適温度はそれぞれ,3.5-6.0,60-70℃ であった.リゾチームを用いてN-acetylglucosamineをmaltosyl-βCD,およびgalactosyl-βCDと非分岐CDに結合させることはできなかった.
  • 小林 幹彦, 千葉 養伍, 高原 英成
    1999 年 46 巻 4 号 p. 449-452
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     タカアミラーゼA(TAA)のアミノ基をトリニトロベンゼンスルホン酸,ホルムアルデヒド,ピリドキサール5'-りン酸で修飾し,蛍光試薬のオルトフタルアルデヒド(OPA)の場合と比較した.既報のように,OPAはTAAの強い失活をもたらすが,上記の3種類の試薬ではTAAの強い失活は起こらなかった三HPLCによる分析から,OPAとLys残基との反応はpHとCys残基の存在に依存して大きな差を生じた.これらの結果から,OPAとほかの3種の試薬によるTAAの修飾が異なる応答を示す理由として,Cys残基がOPA反応おいて重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 舟根 和美, 水野 幸一, 寺澤 和恵, 北村 義明, 馬場 忠, 小林 幹彦
    1999 年 46 巻 4 号 p. 453-457
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
     米,馬鈴薯,甘藷,小麦,トウモロコシ,サゴ,タピオカ澱粉に,コメの枝付け酵素の一つであるRBE1を作用させ,陰イオン交換-パルスアンペロメトリー高速クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)に供した.元の澱粉の構造に関わらず,RBE1処理された各種澱粉の構造は似通っており,10から11個のグルコース鎖の枝と,6個のグルコース鎖の枝の二つのピークを持つ形となった.RBE1反応の経時変化を調べたところ,長い糖鎖の転移は約10時間までに定常に達したが,短い6個の糖鎖は,反応22時間後でも増え続けた.アミロースでは短鎖,長鎖ともよく転移されたが,基質がすでに側鎖が多い場合には,RBE1による長鎖の転移が減少した.以上のことから,枝付け酵素の転移反応は,基質澱粉の側鎖の密度によって制限され,最終反応生成物の鎖長分布および側鎖の量はある定常状態に収束するものと考えられた.
  • 袴田 航, 西尾 俊幸, 奥 忠武
    1999 年 46 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     α-グルコシダーゼの基質特異性を解明するため,PNPα-D-gucopyranosie(1)の3-デオキシ体と6-デオキシ体(新規化合物)をMethyl α-D-glucopyranosideからそれぞれ7および4工程で合成した.1HNMRおよび分子力場計算から,これらも1と同様に重水中で4C1イス型構造を維持していることを確認した.これらを含むPNPα-D-glucopyranosideの4種のデオキシ体に対するrice由来α-glucosidaeの加水分解活性を測定した結果,3-,4-,および6-デオキシ体は加水分解されなかったが,2-デオキシ体はよく加水分解された.そこで,1および2-デオキシ基質について反応速度論的な解析を行った.
  • 安部 淳一, 中西 泰介, 檜作 進
    1999 年 46 巻 4 号 p. 465-468
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     Aspergillus sp. K-27の粗酵素標品よりエンドグルカナーゼとβ-グルコシダーゼを精製した.エンドグルカナーゼはモノマーで分子量は,21kDaであった.セロオリゴ糖に対する活性はセロヘキサオース>セロペンタオース>セロテトラオースの順で,ゼロビオースには作用しなかった.カルボキシメチルセルロースはよく分解した.アビセルとセロトりオースにはほとんど作用しなかった.β-グルコシダーゼは分子量130kDaと105 kDaの二つのサブユニットからなるダイマー酵素であった.二糖類への作用はラミナリビオース>ゲンチオビオース>セロビオース>ソフォロースの順であった.セロオリゴ糖への選択性(Vmax/Km)はセロトリオースが最大であり、,セロビオースに対する値が最小であった.
  • 鈴木 雅之, 海野 剛裕, 岡田 嚴太郎
    1999 年 46 巻 4 号 p. 469-473
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
     酢酸菌Acetobacter capsulaturn ATCC11894株は,グルコースと微量のデキストリンを炭素源として液体培養すると,菌体外にグルコシル基転移酵素デキストリンデキストラナーゼ(EC2.4.1.2)を産生することが知られている.当該酵素は,各種クロマトグラフィーの操作を経ることなく,高速冷却遠心分離(4℃,20,000×9,20分間)のみにて,簡易かつ高純度に精製された.精製酵素の分子量はSDS-PAGE法から,約152kDaと推定された.また,当該酵素は,pH5.2および38℃ において最大活性を示した.精製酵素を各種pHで4℃,24時間処理すると,pH4.1-5.4の範囲で100%の残存活性が認められた.本酵素活性は,1mMのHg2+,Pb2+あるいはKMnO4により完全に阻害された.当該酵素により,マルース以外の一連のマルトオリゴ糖から生成されるα-1,6-グルカンは,1H-NMR分析の結果から,わずかにα-1,4-グルコシド結合の分枝を有することが示唆された.生成α-1,6-グルカンの分子量は,およそ1270kDaと推定された.
  • 山本 健, 海野 剛裕, 菅原 正義, 合田 敏尚
    1999 年 46 巻 4 号 p. 475-482
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2011/07/01
    ジャーナル フリー
     ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖含有シラップ(商品名:テイストオリゴ®)は,甘味の立ち上がりが緩慢で,芳醇な深み,こく味を有する優れた味質を有し,粘度,浸透圧,水分活性がショ糖に類似していた.吸・保湿性は,ショ糖より優れることから食品の調湿や乾燥防止に有効と考えられる.また,キャンディーテストにおいて,ショ糖と比較して直接還元糖の変化が少なく,pH変化がまったくないため,170℃ での構成糖の熱分解は少なく,テイストオリゴ®は安定性に優れていた. ラット小腸刷子縁膜によるα-グルコシド結合を有する二糖類の水解性は,その速度に差異はあるものの,α-グルコシド結合を有するすべての二糖類が水解されることが明らかとなった.とくにニゲロースは,マルトースの86%程度の水解性を有しており,比較的速やかに水解され,同様にニゲロシルマルトオリゴ糖の水解性は,マルトオリゴ糖とほぼ同じの値を示し,ショ糖の水解性とほぼ同様な数値であることが明らかとなった.またテイストオリゴ®の分解性は,ラット小腸刷子縁膜によりほぼ完全にグルコースにまで分解された.以上のことから,ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖のエネルギー値は,マルトオリゴ糖,ショ糖および乳糖と同様に4kcal/gであると考えられた. 以上の結果より,ニゲロースおよびニゲロシルマルトオリゴ糖含有シラップは,食品加工に幅広く利用可能な食品素材であることが示唆された.
  • 1999 年 46 巻 4 号 p. 483-495
    発行日: 1999/12/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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