Journal of Applied Glycoscience
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53 巻, 3 号
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Regular Papers
  • 吉田 登, 佐藤 和香子, 端 秀子, 竹田 保之, 小野寺 秀一, 安藤 功一, 塩見 徳夫
    2006 年 53 巻 3 号 p. 175-180
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    主要フラクトオリゴ糖として知られている1-ケストースおよびニストースの腸内菌叢および腸内と全身免疫反応に及ぼす影響について,それらを個別に投与したマウスにおいて検討した.1-ケストースおよびニストースの投与はいずれも糞便中のLactobacillus (Lb) 増殖促進作用を示した (Table 1).しかしながら,これらフラクトオリゴ糖の投与はマウス糞便中に存在した2種のLb. reuteriLb. intestinalisのバランスは変化させなかった (Fig. 1). 1-ケストースおよびニストースを投与されたマウス糞便中のIgA量は投与4-7日目にかけて増加し,14日目にはコントロール群と同等のレベルに戻った (Fig. 2). Con A,抗CD3+抗CD28抗体およびLPSによる脾臓リンパ球増殖反応は,どちらのフラクトオリゴ糖の投与によっても減少した (Fig. 3).ニストースの投与は,脾臓リンパ球からのIL-2,IFN-γ,IL-12そしてIL-4産生を1-ケストースよりも強く低下させた (Table 2).これらの結果から1-ケストースおよびニストースは,どちらも腸内細菌および腸内と全身免疫反応に影響を及ぼすが,両者の効果の程度は異なることが示唆された.
  • 桐生 高明, 中野 博文, 木曽 太郎, 村上 洋
    2006 年 53 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    O-α-D-glucosyluronic acid α-D-glucosiduronic acid (トレハロース酸化物) を特異的に加水分解する Aspergillus niger 由来 α-glucuronidase はトレハロース酸化物を加水分解しD-グルクロン酸を生成する.本酵素のD-グルクロン酸生産への応用を目的に,酵素を珪藻土焼成担体に固定化した.グルタルアルデヒド処理した固定化酵素は,20回の繰り返し使用の後も,60%の活性を有していた.本固定化酵素は100 mMのトレハロース酸化物を完全に加水分解するが,基質初濃度が200 mMを超えると,生成物阻害により反応が進行しなくなることがわかった.基質を完全に加水分解するために,反応液を緩衝液により希釈し,D-グルクロン酸濃度を300-400 mM以下に保ったところ,500 mMのトレハロース酸化物をほぼ完全に加水分解し,グルクロン酸を生成した.カラムに固定化酵素を充填し反応させることで,D-グルクロン酸を連続的に生産することができた.本固定化酵素カラムは20日間の連続生産の後も,反応1日目の約80%の活性を保持していた.
  • 浅妻 悟, 澤田 千穂子, 北嶋 彩, 朝倉 剛, 三ツ井 敏明
    2006 年 53 巻 3 号 p. 187-192
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    イネの登熟期における種子においてα-アミラーゼアイソフォームであるI-1およびII-4の存在を確認した.それらの登熟期における機能を調べるため,われわれはα-アミラーゼI-1およびII-4のcDNAにカリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターをつなげたものを形質転換した組換え体イネ系統を作出した.どちらのアイソフォームも形質転換体植物の幼芽および緑葉組織においてα-アミラーゼのmRNAおよびタンパク質の双方が増加していた.葉におけるデンプン蓄積は,野生系統と比べてそれぞれ42%,82%減少していた.α-アミラーゼI-1とα-アミラーゼII-4の過剰発現であるA3-1とD1-4形質転換体イネ系統をさらにそれぞれ調べたところ,両方の完熟種子において高い酵素活性を示し,D1-4においてはその増加が顕著であった.A3-1とD1-4の完熟種子の乾燥重量にも有意な減少がみられ,それぞれ約4%,11%の減少であった.両系統で乳白米が多くみられ,D1-4においては障害が重度であった.これらの結果からα-アミラーゼ活性の増加は,貯蔵デンプンの蓄積を抑制し,イネの粒質を低下させることを強く示唆している.
  • 小澤 忠弘, 五十嵐 一暁, 尾崎 克也, 小林 徹, 鈴木 淳巨, 白井 剛, 山根 隆, 伊藤 進
    2006 年 53 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    好アルカリ性Bacillus sp. 株由来のα-アミラーゼ(AmyK) はArg181-Gly182を欠失させることにより,耐熱性のみならずキレート剤耐性も付与できた.欠失による耐熱性とキレート剤耐性メカニズムを明らかにするため,立体構造が判明したBacillus amyloliquefaciens 株既知のα-アミラーゼを雛型にして,AmyKのモデル構造を構築した.モデル構造より,ループ上のAla186とAsp188がカルシウムイオンと結合していることが判明した.分子動力学計算より,変異酵素においてAla186主鎖の酸素とカルシウムイオンとの親和性が増しており,これにより耐熱性とキレート剤耐性が向上するものと示唆された.
Note
  • 丸田 和彦, 久保田 倫夫, 山下 洋, 西本 友之, 茶圓 博人, 福田 恵温
    2006 年 53 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    マルトオリゴシルトレハロース合成酵素 (EC 5.4.99.15, MTSase) はα-1,4-グルカンの還元末端グルコースをα-1,4-グルコシド結合から α,α-1,1-グルコシド結合へ変換しグリコシルトレハロースを生成する.本酵素はグルカンの還元末端からグルコースを遊離させる弱い加水分解反応をも触媒する.我々はSulfolobus acidocaldarius ATCC33909由来MTSase遺伝子に部位特異的変異を導入し,その変異遺伝子を大腸菌にて発現させた.α-アミラーゼファミリーの触媒残基に対応するAsp228,Glu255,Asp443の変異は,酵素活性を消失させた (Table 1).各種MTSaseの間で保存されているLys390またはLys445の変異は,野生型に較べ転移活性を減少させたが,逆に加水分解活性を増加させた (Table 1).さらに,これらリジン残基を巨大な側鎖をもつトリプトファンへ置換することで転移活性はほぼ消失し (Table 2),MTSaseは転移酵素からα-1,4-グルカンの還元末端からグルコースを遊離させる新しい加水分解酵素へと変換された.
Review
  • Jay-lin Jane
    2006 年 53 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    Starch is synthesized in semi-crystalline granular structures. Starches of different botanical origins possess different granular sizes, morphology, polymorphism and enzyme digestibility. These characteristics are related to the chemical structures of the amylopectin and amylose and how they are arranged in the starch granule. In this paper, structures and locations of amylose and amylopectin molecules in the granule are reviewed. The branch structures of amylopectin molecules and their relationship with the polymorphism, structures, and morphology of the starch granules are discussed. Internal structures of starch granules revealed by confocal laser-scattering microscopy and by using a surface-gelatinization method are compared and their effects on surface pinholes and serpentine channels of the starch granules are discussed.
報文
  • 中西 泰介, 野村 圭, 竹田 靖史
    2006 年 53 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/05
    ジャーナル フリー
    市販イソマルトオリゴ糖製品中のオリゴ糖の定量法としてポリマー担体のアミノカラムを用いて,改良定量法を開発した.改良定量法では従来使用していたシリカ担体のアミノカラムよりも耐久性の高いカラムを用いた.本カラムを使用することにより市販イソマルトオリゴ糖製品中の各標準オリゴ糖の定量がRI検出による絶対検量線法で可能となった.グルコース,マルトース,コージビオース,ニゲロース,イソマルトース,マルトトリオース,パノース,イソマルトトリオース,マルトテトラオース,イソマルトテトラオースの濃度とピーク高の検量線を作成したところ17 mg/mLまで直線を示し,最小二乗法で相関係数0.999以上の高い相関性が認められた.各糖類ごとに直線の勾配は異なっており,グルコースが最も高く,イソマルトテトラオースが最も低くなった.グルコースの勾配に対して各糖類の相対勾配(各糖類の勾配/グルコースの勾配)を求め,変換ファクターとした.イソマルトオリゴ糖工業製品中の各糖類の濃度定量は液クロ分析で得られたピーク高より以下の式に従い算出した:
     (糖類Aの濃度,mg/mL)=(グルコース標準の濃度,mg/mL)×(糖類Aのピーク高)/(糖類Aの変換ファクター)/(グルコース標準のピーク高)
     改良定量法を用いて市販イソマルトオリゴ糖製品を分析した結果,製品100 g(糖固形分75.6 g含有)当たりに標準イソマルトオリゴ糖は42.7 gであった.その構成糖はイソマルトース19.2 g,イソマルトトリオース10.3 gを主成分として,パノース4.9 g,ニゲロース,コージビオース,イソマルトテトラオースが各々2.0,3.5,2.8 gであった.これら標準オリゴ糖の含有量は従来法と比較して高くなったが,これは従来定量法が各オリゴ糖の検量線法を用いて定量できなかったことに起因するものと考えられた.更に改良定量法ではニゲロース,コージビオース,4種類の未知のオリゴ糖の分離も可能となった.4種類の未知オリゴ糖の中で最も多い成分を単離・精製し,1Hおよび13C-NMR解析したところイソマルトトリオシルグルコースであった.
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