日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会2008年年会
選択された号の論文の236件中151~200を表示しています
R6:鉱物の合成・成長溶解・物性
  • Pascua C.S., 田村 堅志, 八田 珠郎, 山田 裕久
    セッションID: R6-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    光触媒材料は、環境・エネルギー材料の一つとして注目され、現在はTiO2、ZnO等の酸化物半導体がよく検討されている。本研究では、ケイ酸塩系粘土鉱物・スメクタイトとZnOとの組み合わせに注目し、自身が光溶解するというZnOの欠点を補うとともに、有用元素Znの使用量を削減できる新しい光触媒材料の創製に関して検討した。特にスメクタイトの八面体シート内の金属元素をZnで置換したスメクタイトに注目し、その光触媒活性を評価した。
  • 門馬 綱一, 長瀬 敏郎, 栗林 貴弘, 工藤 康弘
    セッションID: R6-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    水晶の日本式双晶の成長組織と接合面の構造について、エッチング像やカソードルミネッセンス像の観察、分子動力学計算による構造シミュレーションを行ったので、報告する。 試料には長崎県奈留島産の日本式双晶を用いた。全ての試料において、接合面付近にブラジル双晶の濃集した砂時計型の領域が観察された。この構造が発達するのは、接合面が平滑な{11-22}面で接している領域とほぼ対応し、{10-11}ないし{01-11}面で成長した分域である。 分子動力学計算の結果、{11-22}接合面のみが整合的で低い界面エネルギーを持ち、それ以外の接合面では転位のような構造が導入されることが明らかになった。一方、日本式双晶の{11-22}接合面とブラジル双晶接合面が交差する場合には整合的な構造が保たれる。以上の結果は、日本式双晶の 接合面がブラジル双晶の発生源となっている可能性を示唆する。
  • 川崎 雅之, 篠田 圭司, 小沼 一雄
    セッションID: R6-P07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    人工水晶のX面について、モルフォロジーと成長過程をAFMとFTIRを用いて調べた。+X面とーX面のモルフォロジー及びセクター中の水含有量の違いから、ーX面に吸着した水が表面構造に影響を与え、モルフォロジーが変化したと判断できる。
  • 大藤 弘明, 奥地 拓生, 小竹 翔子, 鍵 裕之, 長友 正平, 菅田 充, 角谷 均
    セッションID: R6-P08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    パルスレーザーを利用したダイヤモンド加工は,機械研磨に比べて短時間で効率的に行えることから広く注目され,技術改良や加工表面特性について多くの研究がなされてきた.加工表面の物性評価は,主にラマン分光観察や光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡によって行われ,レーザー吸収熱によって生じたグラファイトを主とする切削屑層の存在などが報告されてきた.しかしながら,ダイヤモンド加工表面における微細組織と構造を詳細に観察した例はなく,パルスレーザーによるダイヤモンドの切削プロセスは物質科学的によく理解されていない. そこで本研究では3種類の合成ダイヤモンド:(1)Type Ib,(2)Type IIa,(3)ナノ多結晶ダイヤについてレーザー切削加工を行い,走査型・透過型電子顕微鏡を用いて加工表面の微細組織の直接観察を行った.  レーザー切削溝の表面観察より,切削溝内部は多量のデブリ(砕屑物)によって充填されることが分かった.デブリは,直径50 nmほどの球状微粒子の集合体より構成され,微量の酸素を吸着しており,レーザー照射によって気化(一部酸化)した炭素の析出物であることが示唆される.切削溝内部では,反応生成物は溝に平行に左右対称の成層構造をなし,未反応ダイヤとの境界部から溝内側に向かって,(i)高結晶性高配向グラファイト,(ii)高配向細粒グラファイト,(iii)無配向低結晶性グラファイトと分布する.観察結果より,ダイヤモンドのレーザー切削は,(1)表層のグラファイト化,(2)炭素(グラファイト)の昇華,燃焼(一部,再凝縮)の2段階プロセスとして理解することができる.
  • 古川 登
    セッションID: R6-P09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    天然の方解石結晶から, [0001],[10-11],[10-10],[1-210],[-1011]を切り出し,各面の赤外領域における吸収特性を測定した.各面は3umのダイヤモンドペーストまで研磨した.測定には,日本分光製FT-IR300を使用した.測定範囲は, 7900-400cm-1(1266-2500nm)である.しかし,赤外領域では,吸収が非常に強く,試料が10mm程度の試料では,通常のKBr錠剤法による吸収パターンと異なり,400-3000cm-1の範囲では赤外線はほとんど吸収され,スペクトルが得られなかった.一方,3000-7900cm-1の範囲では,倍音と思われる吸収ピークが多数みられ,これらのピークには結晶方位による明瞭な異方性がみられた.  このため,試料の厚さを薄くし,吸収スペクトルの測定条件を変更するなどの,測定方法の改良を試みた. その結果,約100μmよりも厚さが小さい試料であれば,吸収スペクトルを得られることがわかった.
R7:地球表層の鉱物科学
  • 河野 元治, 八田 珠郎, Hwang Jinyeon
    セッションID: R7-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    アモルファスシリカの溶解速度に及ぼすアミノ酸の影響と反応機能を明らかにするため、pH6、5、4の条件下で中性から塩基性に属する9種のアミノ酸を含む溶液中でのアモルファスシリカの溶解実験を行った。その結果、pH6条件下では塩基性アミノ酸による著しい溶解促進効果が認められ、その他のアミノ酸では溶解速度への影響は認められなかった。一方、pH4条件では塩基性アミノ酸に加え、それ以外の中性アミノ酸においてもアモルファスシリカの溶解速度の増大が確認された。このような溶液pHの違いによる溶解速度への影響は、pH低下に伴うアミノ酸陽イオン化学種濃度の増大と調和的であり、アミノ酸による溶解促進反応はアモルファスシリカ表面の負電荷サイトとアミノ酸陽イオン化学種との静電的結合による配位子促進溶解により支配されていることが示唆された。
  • 杉森 博和, 村上 隆
    セッションID: R7-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    Fe(II)酸化速度に対する大気酸素分圧の影響を調べた。速度は酸素分圧に対する一次依存性からずれており、このずれは酸素分圧が小さくなるにつれ、大きくなることがわかった。これは一次依存性を考えた従来のFe(II)酸化速度を古土壌に適用し、先カンブリア時代の大気酸素濃度を見積もると過大評価することを意味する。
  • 湊 秀雄, 小暮 敏博, 鍋田 敏之, 和田 信一郎, 森本 辰雄
    セッションID: R7-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    微量重金属で汚染した風化土壌を長時間含水環境下に置き、その濃集機構を調べた。EPMAによる特性X線像では汚染重金属であるPbの濃集部位が見られ、その場所からFIB法により試料を作製し、TEMによる解析を行った。Pbの濃集部には2種類の組織が見られた。ひとつはスメクタイトらしき微細な板状結晶の集合体であり、もう一つは約1.0 nmの周期を持つ雲母らしき鉱物のある特定の部位にPbの濃集が見られた。興味深いことに両組織からも常にPbと同時に相当量のMnが検出され、Pbと同時にMnが濃集することが示唆された。
  • 佐藤 努, 浅井 篤史, 安楽 総太郎, 森本 和也, Opiso Einstine, 沼子 千弥, 米田 哲朗
    セッションID: R7-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    近年、世界各地で問題となっている有害無機陰イオンによる地下水・土壌汚染は、多岐にわたる分野で解決が望まれている緊急課題である。有害無機陰イオンに限らず、土壌や地層などの天然における化学物質の挙動を解析する場合には、その移動媒体である天然水に溶出した物質がどのように存在し、どのようにして構成物質表面に濃縮され蓄積されるか(収着されるか)について記述し予測することが必要となる。そこで発表では、その記述や予測に不可欠となる代表的な無機陰イオン種のスペシエーションや代表的な鉱物への吸着・収着挙動についてまとめるとともに、それらを踏まえたうえで、天然における有害無機陰イオンのマネージメントの方策について議論する。
  • 岡本 真琴
    セッションID: R7-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     従来から研究している天然無害な物質を有効活用することによって、水域の環境浄化対策を早急に検討することが可能であると考えられており、様々な見地からの研究が進展している。そのために、これら水域の自然浄化能力の強化や浄化システムを組み合わせた総合的な水質改善対策が必要となってくる。本研究では、河川環境が汚染された地域の直接浄化対策に応用できる設置コストが低減かつ半永久的に維持できる方法である「天然ゼオライトの一種であるモルデナイトを利用した河川水の浄化」の基礎的検討を行った。  まず実際の河川から実験的に導入した人工貯水槽を利用して、天然モルデナイトと本調査地域に自生する竹炭の2種を比較することで、水質浄化能の 検討を行った。その後、実験室内で各種物性を測定して検討を重ねた結果、 従来から指摘されていたアンモニアの無害化である硝化過程と有機態窒素を 含む陽イオン交換能を持つことが詳細に示された。さらに、副次的な特性と して河川水に通常生息している大腸菌群の住処となり得る事を初めて明らかにした。これらは、今後検討する実験河川において基礎データとなり得る。
  • 小暮 敏博
    セッションID: R7-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    堆積性kaolinite中の積層不整の原因を主に高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)法を用いて調べた。試料はブラジル北部の堆積性カオリン鉱床からのもので、積層不整の程度を示すXRDパターンのHinckley-Indexは約1.1の値を示す。電子回折を見ると、各粒子間で積層不整の程度が大きく異なっており、ときにはnacrite中の積層構造の存在を示すstreakも観察された。HRTEM観察では、隣り合う層間のずれの方向(t1とt2)の混在が積層不整の主要な原因であるが、二八面体シート中の空サイトのdisorderもときどき観察された。このような結果は最近のこの試料のFT-IRの結果と整合的である。
  • 東 正治, 坪本 哲英
    セッションID: R7-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    KとNH4を特徴的に含む雲母粘土鉱物では2つの層間陽イオンはどのような分布をするのか。雲母単位層ごとに双方が個別分離してK雲母層(illite)とNH4雲母層(tobelite)が構成しながら,これらが互層して形成される混合層構造モデルの妥当性をXRD測定とシミュレーション計算に基づいて検証した。I-T混合層構造のX線回折では,I成分層(illite; 基本層10.00Å)からの回折角度とT成分層(tobelite; 基本層10.36Å)からの回折角度が僅かにずれることによる干渉が起きて回折プロファイルが幅広くなるので, その効果を測定評価すれば,干渉がみられない固溶体との識別のみならず,成分層I,Tの混合層構造がランダム型または規則型にどれだけ近いかの半定量的な判定までも可能になる。砥部石を含む多くの熱水性K-NH4系雲母鉱物試料のXRDプロファイルの特徴からは,ランダム型よりも規則型に近いI-T混合層構造の可能性が指摘できる。
  • 越後 拓也, 八田 珠郎, 根本 清子
    セッションID: R7-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    生成温度が針鉄鉱の表面構造に与える影響を考察するため、様々な温度で合成された針鉄鉱の結晶形態と表面化学状態を分析、検討した。その結果、低温で合成された針鉄鉱は粒径が小さく、高温で合成されたものは大きな粒径を持つことが判明した。また、X線光電子分光分析により針鉄鉱表面の化学状態を分析したところ、生成温度によってO1sスペクトルに顕著な違いが生じることが明らかになった。
  • 芳賀 信彦, 入江 悠介
    セッションID: R7-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    植物の葉に含まれる結晶の検出には粉末 X 線回折が使われる。葉を無処理で乾燥、粉末化すると、体積的には大部分が植物体の破片で、これらは cellulose と opal からなり、膨大なバックグラウンドを与える。そこで、Cellulose によるバックグランドを軽減させるために遠心分離と酵素による cellulose の分解処理を試みた。何種類かのシダ植物について葉を洗浄、乾燥後、粉末化し、水に懸濁させ遠心分離を行った。結晶の濃縮部の分画を取り出し、酵素の cellulase 溶液に懸濁し数日間反応させ、分解物を除去した。遠心、分解処理を繰り返し最終の残渣を乾燥後、試料とした。ミドリヒメワラビの場合、無処理では回折ピークは見いだせなかったが、処理後は whewellite, weddellite の多くのピークが出現し、これらの処理が有効に働いたことが実証された。
  • 田切 美智雄, 納谷 友規, 長島 万梨映, 根岸 正美
    セッションID: R7-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    河川では、夏期は冬期と比べ粘土鉱物分が多く、鉄分に富み、CaOに乏しい。その理由は、(1)水の張られた水田から粘土鉱物(Si,Al)が流出しやすい。(2)CaOは溶解度が低く、河川流入前に沈殿する。(3)FeOは溶解度が大きいうえ、地表面での酸化によって懸濁物質が生じやすい 。 (4)冬期は水田に水が張られておらず、粘土鉱物が流出しにくい。(5)冬期は土壌中のCaOを溶かし込んだ地下水が流出。 霞ヶ浦西浦の懸濁物質の化学的特徴と比較すると,河川の懸濁物質はSiO2やAl2O3が少なく,CaOやFeOが多い。その原因は、(1)河川の懸濁物質に含まれていたCaイオンはpH9の霞ヶ浦に流入すると石灰岩境界を越え、沈殿する。その結果、湖水の懸濁物質はCaに乏しくなる。(2)FeOは霞ヶ浦に流入すると高いpHにより沈殿し始める。その結果、湖水の懸濁物質はFeに乏しくなる。(3)中性の河川水では不溶性だったAl(OH)3はアルカリ性の湖水ではAlの親和性が増して溶解し始め、コロイド化する。その結果、湖水の懸濁物質はAlの多い粘土鉱物に変化する。底質の粘土鉱物の捲き上げも起こりやすくなる。
  • 奥原 洋人, 有馬 眞, 中村 栄子, 金子 慶之, 中野 孝教
    セッションID: R7-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    神奈川県北西部丹沢山地の渓流水の溶存成分について2001-2008年にわたり調査・分析を行い、各溶存成分の経年変化と地殻変動の関係について評価した。地殻変動の指標として地震回数を用いた。 2001-2008年の間、渓流水のpHは約4年周期で有意に変動していることが認められた。岩石・土壌起源と考えられる溶存成分間の相関を評価した。渓流水質は基盤地質を良く反映し、深成岩地域において、HCO3⁻とMg²⁺、Ca²⁺の間に有意の相関が、丹沢層群地域ではSO₄2-とanion当量との間に正の相関が、足柄層群地域ではHCO3-とSO₄2-とCa²⁺及びMg2+濃度間に正の相関が見られた。さらに、深成岩地域の断層にそって鉱泉水が認められ、その近傍の渓流水には、SO₄²⁻とCa²⁺、Mg2+間で正の有意の相関が見られた。 2001-2008年に丹沢山地の地震観測点で得られた震度1以上の有感地震回数と渓流水質の相関を評価した。地震回数とpHとの間に良い相関が認められた。渓流水質のpHは、震源の位置に関わらず、地震動の回数に大きく影響されていると考えられる。さらに、地震回数と各溶存成分濃度との間にも有意の相関が認められた。堆積岩地域において、地震回数と渓流水のHCO3⁻およびMg²⁺との間に同位相で正の相関が見られた。一方、深成岩や丹沢層群地域では地震発生から半年遅れて地震回数と渓流水の多くの陽イオン及びHCO3⁻との間に正の相関が見られた。更にSO₄2-濃度の高い鉱泉水地点ではSO₄2-との間に良い正の相関が見られた。  このような、渓流水質と地震活動の間に認められた相関は、鉱泉水から渓流水へのフローが地震活動により変動したか、あるいは、基盤岩に存在する割れ目の風化面が地震活動により更新され、岩石に含まれる各種イオンの溶脱が活発になったことを示唆している。
  • 杉田 律子
    セッションID: R7-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    阿武隈山地北部福島県田村市の花崗岩風化変質物中の黒雲母について分析を行った.この地域の黒雲母は鉄およびマグネシウムの含有量から二つに分けることができる.同一露頭から採取した新鮮な岩石中に含まれる黒雲母と風化変質を受けた花崗岩中の黒雲母では風化変質によってカリウムが元の組成のおよそ1/2程度まではMg値に大きな変化が無く,その後、カリウムの減少に伴いMg値に変化が見られた. 粉末X線回折の結果,本研究地域ではHydrobiotiteが形成されている試料と不規則型のバーミキュライト/黒雲母混合層鉱物が形成されているものがあり、hydrobiotiteはマグネシウム値の高い試料にのみ形成されていた.形成されている混合層鉱物は規則型,不規則型に関わらず非常にブロードなピークを示していることから結晶度は低く,また,hydrobiotiteは試料により長周期反射のピークの位置に変化が見られた.
  • 深澤 翠, 掛川 武
    セッションID: R7-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    黒鉱上盤泥岩中は約1300万年前に堆積し、泥岩中にフランボイダル黄鉄鉱がみられる。フランボイダル黄鉄鉱のサイズ分布と地質環境を対応させた結果、(1)黒鉱形成時及び黒鉱形成直後、海底近傍が貧酸素又はH2S-richな状態になった、(2)黒鉱形成から数百万年後には海底近傍は酸化的であった、事が示唆される。これは黄鉄鉱の硫黄同位体比と調和的である。H2S-richな海洋環境(黒鉱形成時)では、海水中での硫酸還元―硫黄酸化により硫黄同位体比が極端に軽く、酸化的な環境(黒鉱形成後)では、堆積物中の硫酸還元により黄鉄鉱が形成した事を示している。この事から、黒鉱形成時に近い時期ほど、微生物による硫黄代謝が海水中で活発に行われていたと推定される。
  • 渡辺 知也, 赤井 純治
    セッションID: R7-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    本発表では、近年問題になっているベトナムにおける地下水ヒ素汚染をあつかう。ベトナムの地下水ヒ素汚染地域におけるコア試料について、SSE分析や鉱物学的解析を行った。その結果、もっとも可能性の高い溶出メカニズムは鉄オキシ水酸化物の還元溶解であると考えられる。また、TEM-EDS分析の結果などから、この鉄オキシ水酸化物は黒雲母と関係があることがわかった。以上のことから、ベトナムの汚染地域における地下水ヒ素溶出のモデルを提示する。
  • 弘山 郁織, 大田 由貴恵, 佐藤 努, 米田 哲朗
    セッションID: R7-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    様々な研究によって酸化物や粘土鉱物がアミノ酸重合反応において触媒となることがわかっているが、相対湿度によって鉱物表面の活性を変化するという粘土鉱物の固体酸としての特性に着目した研究はない。鉱物の触媒作用の挙動を検証するには鉱物表面の水分をコントロールする必要があり、相対湿度はその役割を担うことができる。このことは鉱物表面でのペプチド生成メカニズム解明の手がかりとなりえる。著者らの研究により相対湿度を制御することによりアミノ酸重合反応に対する鉱物の触媒作用は変化すること、ヘクトライトが最も触媒として効果があることが明らかになった。この触媒作用に対する因子は鉱物の構造ではなく組成であることが示唆された。ヘクトライトは構造にMg-Oを持つためペリクレースを用いて相対湿度実験を行い、のMg-Oがアミノ酸重合の触媒部位となっていることが推察された。
  • 市村 康治, 村上 隆
    セッションID: R7-P07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    SEM-EBSD、SEM-EDS、FIB-TEMを使用して、カナダProntoの古土壌(24.5億年前)中に存在する二次的に形成されたと考えられる希土類リン酸塩鉱物の形成機構を推定した。その結果、monazite (-Ce,Nd,La)とrhabdophane (-Y,Gd,Dy) が共存していることが分かった。また、両者の結晶軸に明確な関係は見られなかった。これらの鉱物は風化時にrhabdophaneとして形成し、変成作用の時、熱的により不安定rhabdophane (-Ce,Nd,La)はmonaziteに転移し、(Y,Gd,Dy)型はそのまま残ったと考えられる。従って、monazite (-Ce,Nd,La)のCeは大気酸素進化を推定するための指標として有効である。
  • 横尾 直樹, 鈴木 道生, 猿渡 和子, 青木 秀夫, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: R7-P08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    アコヤガイはこれまで主に成体での貝殻形成機構についての研究がなされてきたが、幼生における初期貝殻構造についてはほとんど調べられていない。 そこで、その初期貝殻構造についてフォーカスイオンビーム法(FIB) による試料作成、および透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM) 等での観察を行った。 その結果、受精後12時間の試料では殻はほとんど形成されず、18時間ではすでに胚全体を殻が覆っていた。この受精後18時間試料でFIB-TEM観察を行った結果、全体が薄いaragonite結晶で覆われており、非常に高密度の双晶が形成されていることが判った。 一方、受精後48時間の試料ではその内側に粒径の大きなcalciteの結晶が確認された。 このように、アコヤガイの幼生では外側にaragonite、内側にcalciteという、生体とは逆の二層構造を持っていることが判明した。
  • 荒井 公, 都木 靖彰, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: R7-P09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    魚類の耳石はタンパク質等の有機基質を含む炭酸カルシウムの多結晶体である.硬骨魚類の耳石では,偏平石と礫石はアラゴナイトで,星状石はバテライトでできているという報告がある.しかし個体の生息環境等によりアラゴナイトとバテライトが共存したり,バテライトだけの偏平石も出現する. 今回,ニジマスの偏平石中のアラゴナイトとバテライトについて,主に熱重量‐示差熱分析を行い,偏平石を構成する炭酸カルシウムの特徴を調べた.比較対象として非生物起源の天然アラゴナイトと合成バテライトを用いた. その結果,扁平石のアラゴナイトには440℃付近に重量変化を伴わない発熱ピークが観察された.これは天然アラゴナイトでは観察されなかった.一方,扁平石のバテライトと合成バテライトでは共通して470℃付近に発熱ピークが見られた.このことから扁平石のアラゴナイトには特有の特徴があることが示唆された.
  • 猿渡 和子, 長坂 征治, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: R7-P10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    ココリスは、海洋性藻類の一種である円石藻の周囲に形成されている方解石の鱗である。単一のココリスは、数十個のサブミクロンサイズの方解石が、種に固有の形態を発達させながら惰円状の有機基質の周囲に規則的に配列している。Pleurocrysis carteraeでは、方解石のc軸が垂直に近いVユニットと、水平に近いRユニットが交互に組み合わさった円環構造をしている。これまでのココリス形成モデルでは、細胞内部で有機基質上に初期結晶が核形成し、成熟したココリスへ成長した後に細胞外へ放出される。本研究では、ココリスを形成している結晶方位の異なった方解石ユニットの形成・発達機構を解明することを目的に、初期から成熟体まで様々な段階のココリスの形態をSEM観察した。また、EBSDによる結晶方位解析、さらにSEM stereo -photogrammetryによる結晶面と稜線方向の指数の決定を行った。
  • 甕 聡子, 永井 隆哉, 坂本 直哉, 岨 康輝, 渡邊 剛, 圦本 尚義
    セッションID: R7-P11
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    造礁性サンゴはアラゴナイトによってその骨格を形成し、その骨格に含まれる酸素同位体比、あるいは微量元素量が古環境復元に利用されている。例えば、アラゴナイト中のSr/Ca比の変動は、骨格形成時の海水温度と相関を持つとされ、過去の海水温度復元に用いられている。これは、骨格に含まれているSr(Porites sp.であれば約7000ppm)が全てアラゴナイトに固溶し、固溶割合の変動が鉱物生成時の温度の違いに起因するものであると考えられているからである。 しかし、近年になりサンゴ骨格中にアラゴナイト以外の鉱物相の存在が示唆された。例えば、Greegor et al.(1997)はXANES、EXAFSを用いた実験で、Srの60%程度はアラゴナイト中に固溶しているが、残りの40%はアラゴナイト構造を持つSrCO3端成分として存在していると報告した。この報告が信頼できるとすると、Sr/Ca比を海水温度計として使うには注意が必要となる。一方Finch et al(2003a, 2003)は放射光を使ったmicro-EXAFSを用いての観察の結果、Srは全てアラゴナイト固溶体として存在するとGreegorとは異なった報告している。しかしながらいずれの報告もSrの配位環境やSr-O結合距離からの考察であり、これまで直接的な鉱物同定は行われていない。
R8:地球深部の鉱物科学
  • 小野 重明
    セッションID: R8-01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    本研究発表では、スピンおよびそれに関係のある磁気的な物性変化を正確に予測し、その変化を高圧実験によって確かめ、第一原理計算による物性予測を、地球内核に相当する高温高圧条件で行った。磁気相転移が起こると、結晶の体積変化を伴うため、実験においては、その体積変化に注目した。その結果、酸化鉄では85GPaで体積に不連続が確認され、その体積変化が磁気相転移に相当すると考えられる。純鉄の研究では、イプシロン鉄の磁気相転移圧力を第一原理計算で見積もった。相転移圧力は約60GPaであることが判明した。硫化鉄の研究では、最近、新しい相が報告されているが、この新相の磁気的な性質は明らかになっていない。そこで、第一原理計算によって調べた所、新相は、過去の研究で明らかになっている低圧相であるMnP相と同じ結晶構造を持つが、強磁性体から常磁性体へ磁気相転移した相であることが明らかになった。
  • 永井 隆哉, 瀬戸 雄介, 浜根 大輔, 佐多 永吉, 藤野 清志
    セッションID: R8-02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    Fe3Cの高温高圧下での安定性を調べるために、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを使った実験を行った。相の同定はSP8,PFの放射光を用いた。NaCl,Al2O3,CaSiO3を断熱材に用いたが、いずれの場合もFeOが出現した。Al2O3の場合は未同定の相、それ以外はFe7C3が観察された。このことはFe3Cが高温高圧下で酸化されることを意味する。
  • 浦川 啓, 近藤 忠, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    高エネ研PFのBL13Aにおいてダイヤモンドアンビルセルを用いてアモルファス鉄合金のX線回折実験を9GPaまでの圧力で行った。回折プロファイルからQ=8Å-1までの構造因子S(Q)を求め,フーリエ法によって最適化した。9GPaのS(Q)は1気圧よりピークが高Q側に移動しており,圧縮されていることがわかる。一方,相関係数には圧力による有意な違いは認められなかった。
  • 大谷 栄治, 林 宏美, 境 毅, 宮原  正明, 高畠 直人, 佐野 有司
    セッションID: R8-04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    マントルプルーム起源のマグマのあるものには186Os/188Osと187Os/188Osの同位体異常が報告されている。186Osは190Ptのα崩壊により生じ、187Osは187Reのβ崩壊によって生じる。したがって、Osの同位体異常はマグマの起源領域においてOs、Pt、Reが分別されていることを意味している。分化した隕鉄の化学組成の特徴にもとづいて,これらの同位体の特徴は、核における内核の結晶分化に伴いRe, Os, Ptが分別されて生じた外核物質によってマントル物質が核・マントル境界で汚染されたものと仮説が提案されているBrandon et al.(2005)。 この仮説を検証するために、マルチアンビルおよびダイヤモンドアンビルを用いて、高圧下におけるFe-S 金属融体と金属鉄固体の間のPt、Os、Reの元素分配を測定した。 5 GPaから100GPaの条件で鉄とFe-Sメルト間のPt, Os, Reの元素分配を決定した。この結果から、鉄とFe-Sメルトの間ではReおよびPtとOsの間に選択的な元素分配は顕著には起こらないこと、分配係数にはメルトのイオウ濃度依存性があることが明らかになった。この結果によると、外核が7-10%程度のイオウを軽元素含む金属鉄メルトであるとすると、内核の結晶化にともなう元素分別によって、186Os/188Osと187Os/188Osの増加は、外核の金属鉄メルトには期待されない。すなわち、核マントル境界における外核物質の混入によって、プルームマグマのOs同位体異常を説明することは不可能であることが明らかになった。
  • 坂巻 竜也, 大谷 栄治, 浦川 啓, 鈴木 昭夫, 片山 芳則, 寺崎 英紀, 西田 圭佑, 林 宏美, 中野 陽介
    セッションID: R8-05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    初期地球におけるマグマオーシャンから現在の地球が形作られたまでの分化プロセスを議論するために、ペリドタイトマグマの密度は重要な物性の1つである。それは冷却によって晶出してくる結晶とマグマの密度差によって形成される層構造に差異が生じる可能性があるからである。例えば、地球と同じような組成を持っていると考えられている月に着目してみると、地球では見られない斜長石から成る地殻が確認されている。地球と月は共にマグマオーシャンを経験しているが、そこからの分化・進化のプロセスが異なっていることが示唆される。その原因を解明する上で水の存在が鍵を握っていると考えられている。それは質量が大きく水を保持するための重力が十分にあったと考えられている地球と、質量が小さく水を含む揮発性物質に枯渇している月とではマグマオーシャン時の含水量が異なっていたと推測できるからである。水が存在しない月では地球に比べて相対的に重いマグマオーシャンが広がっていて、地球では浮かびえない斜長石が浮き上がり、地殻を形成したと考えることができる。しかしながら、含水条件下におけるマグマの密度測定の研究例は限られており、正確な議論を行うには研究が少ないのが現状である。そこで本研究では、過去の研究において我々が無水・含水条件下における玄武岩マグマの密度測定に成功しているX線吸収法を用いて、ペリドタイトメルトの密度を無水・含水条件下で測定し、分化プロセスに及ぼす水の影響を議論していく。 高温高圧条件下におけるX線吸収法には高輝度単色光を必要とするため、SPring-8のBL22XUを使用し、そこに設置されているDIA型キュービックプレスを用いて実験を行った。先端6mmのWCアンビルで,広い吸収プロファイルを得るためにX-rayのパスの部分だけ溝(深さ0.2mm×幅1.5mm)があるものを用いた。試料は内径0.5mm,外径1.0mmのダイアモンドカプセルに詰めた。ダイアモンドは変形しにくく,珪酸塩メルトと反応しない。また,珪酸塩メルトと比べるとX線をあまり吸収しないので,今回の実験に用いるカプセルとして最適である。圧媒体にはボロンエポキシを用い,加熱にはグラファイトヒーターを用いた。アンジュレーター光源からのX線はSi(111)の2結晶分光器で23keVに単色化した。これをスリットで50μm×50μmの大きさまで絞り,試料に入射した。入射と透過X線の強度はイオンチャンバーで測定した。温度はWRe25%-WRe3%で測定し,圧力はMgOの状態方程式から計算した。出発試料は合成したパイロライト組成の結晶で、含水パイロライトはMg(OH)2を後から加えて、5wt%の水を含むものを作成した。実験条件は5GPa,2100Kまでである。
  • 鈴木 昭夫, 大谷 栄治, 寺崎 英紀, 西田 圭佑, 林 宏美, 坂巻 竜也, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    NaAlSi2O6メルトの粘度測定を5.5 GPaまでの圧力下で1350から1880℃までの幅広い温度範囲で測定したのでここに報告する.実験は,高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設(PF)で行った.実験の結果,2.2 GPaおよび2.9 GPaで粘度の温度依存性が明らかになったが,活性化エネルギーの値は1 atmのものと殆ど変わらなかった.また,粘度の圧力依存性については,2~3GPaまで単調に減少し,さらに5.5 GPaまでは殆ど変化がないことが分かった.このような粘度変化は2 GPaまでとそれ以上でメルトの構造が変化している可能性を示唆している.このため,X線や中性子回折実験によって,この圧力範囲でのメルトの構造を調べることが極めて重要であると考えられる.
  • Manthilake Geeth, 桂 智男, 山崎 大輔, 芳野 極, 松崎 琢也, 米田 明, 伊藤 英司
    セッションID: R8-07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
     東太平洋海嶺付近のアセノスフェア最上部で観測される高異方性の電気伝導度を説明するために、変形場におけるモデル部分溶融カンラン岩の電気伝導度測定を行った。測定試料のモデルカンラン岩は、鉄を含まないフォルステライトと玄武岩と炭酸ナトリウムの混合物である。測定は、変形装置付キュービックアンビルプレスとソラートロン社製1260インピーダンスアナライザを用いて、1600K ・2GPaの温度圧力条件と6×10-7 /sと2×10-6 /sの歪速度で行った。その結果、せん断方向の電気伝導度はその垂直方向と比較して、一桁以上高電気伝導度であることがわかった。また、その異方性の大きさは歪速度によらないことがわかった。以上の結果により、東太平洋海嶺の電気伝導度の異方性は、部分溶融カンラン岩による可能性があることがわかる。
  • 藤田 尚之, 八木 健彦, 小暮 敏博
    セッションID: R8-08
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    地球におけるmissing Xeの問題と関連して、Xe-SiO2系の高温高圧下における振る舞いを実験的に調べた。ダイヤモンドアンビルを用いてXeを圧媒体としてSiO2を約1GPaまで加圧し、レーザーで加熱後、試料をX線やラマン散乱、およびSEM、TEMにより調べた。その結果X線やラマン散乱では新たな化合物などの生成を示唆する結果は得られなかったが、回収試料のSEM観察ではスポット状にかなりの量のXeが残存していることが明らかになり、このXeは大気中で数百℃まで加熱してもそのまま安定に存在していた。どのような機構でこのXeが安定に存在しているのかを明らかにするため、回収試料の一部をFIBで切り出しTEMで観察したところ、SiO2の表面から数ミクロン程度内部に球状やいろいろな形状で封じ込められていることが明らかになった。これらの結果の解釈等について発表する。
  • 藤澤 英幸
    セッションID: R8-09
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    マントル遷移層の鉱物組成を、地震波速度の縦波・横波比、Vp/Vs 比を基にして議論する事が決定的に重要かつ有用であることがわかった。地球内部の地震波速度分布は、従来、縦波速度分布と横波速度分布を独立に求めることが普通であったから、信頼性の高いVp/Vs 比を求める事が困難であった。同一研究者が、同一地域について、同一観測データを用い、同一解析方法で得られたVpとVs のモデルを組み合わせることが理想的である。最近の地震学の進歩はこのような理想に近い組み合わせ得る事が可能になった。現在利用可能な全ての地震学的観測データと鉱物科学的実験データを比較すると、上部マントルは「かんらん岩」、遷移層は「ザクロ石的鉱物」という結論を得る。
  • 赤荻 正樹, 原口 摩衣子, 矢口 雅人, 糀谷 浩
    セッションID: R8-10
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    海洋堆積物や玄武岩の高圧相中に存在するCaAl4Si2O11組成のCAS相の安定領域を決定するために、高圧実験と熱測定実験を行った。その結果、CAS相は約13GPa以上、1100℃以上で安定であることが示された。また測定されたエンタルピーデータと文献値を組合わせることにより、CAS相がCaペロブスカイト、コランダム、スティショバイトに高圧で分解する境界線を計算した。その結果、地温勾配を仮定するとき、CAS相は遷移層から下部マントル最上部で安定であることが推定された。
  • 藤野 清志, 浜根 大輔, 瀬戸 雄介, 佐多 永吉, 永井 隆哉, 鈴木 啓介, 石堂 知基, 新名 亨, 入舩 徹男, 石井 啓文, 平 ...
    セッションID: R8-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    Mg‐ペロブスカイトにおける3価鉄の圧力誘起スピン転移を調べるため,ダイヤモンドアンビルセルに封じたMg0.85Fe3+0.15Al0.15Si0.85O3組成のペロブスカイトをX線発光分光法により調べた.その結果,50-80 GPa でスピン状態が高スピンから中間スピンに変わり,その後113 GPa に至るまで中間的なスピン状態であった.こうしたある圧力幅での中間的なスピン状態は,ペロブスカイトのAサイトに3価鉄が入り,その歪んだドデカヘドラルサイトの結晶場によって生じると説明できる.
  • 下宿 彰, 久保 友明, 大谷 栄治, 中村 智樹, 岡崎 隆司, Sumit Chakraborty, Ralf Dohmen
    セッションID: R8-12
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    ウォズレアイトとリングウッダイト中のSiとOの拡散速度を高温高圧下で明らかにし、マントル遷移層や沈み込むスラブの流動特性に関する考察を行った。高圧発生には川井型高圧発生装置を用いた。サンカルロス産のオリビン単結晶からウォズレアイトおよびリングウッダイトを合成し,表面を研磨した後,パルスレーザー蒸着装置を用いて29Siと18O に富む(Mg,Fe)2SiO4薄膜を蒸着し, 高温高圧下で拡散実験を行った。拡散プロファイルの測定には二次イオン質量分析計を用いた。得られた拡散プロファイルから拡散係数を推定した結果,(Mg,Fe)2SiO4ウォズレアイトとリングウッダイトにおいてどちらもSiの拡散速度はOの拡散速度よりも遅く,Siが結晶中の変形を律速している可能性が高いことが明らかになった。
  • 井上 徹, 吉見 勇, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-13
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    *1. **はじめに***
     蛇紋石は沈み込むスラブにおいて主要な含水相であり、この相を用いてこれまで数多くの高温高圧実験が行われてきた。それらの研究から、蛇紋石が脱水分解した際に発生する流体相は島弧マグマの成因に関与し、また生成された含水相は水を更に地球深部へと運搬し得ることが示唆された。しかしながら、沈み込むスラブは周囲のマントルに比べ非常に低温であると考えられ、実際のスラブにおける現象を解明するためには、その脱水分解反応の速度、時間変化を考慮する必要がある。そこで本研究では、放射光X線を用いて蛇紋石の脱水分解反応及び生成相の成長過程について、その場観察実験及び急冷回収実験を行った。
    *2. **実験方法***
     出発物質には天然のantigoriteの粉末を用い、それを包むカプセル材として単結晶ダイヤモンドと貴金属(Pt, Au)を使用した。高温高圧発生装置は、高エネルギー加速器研究機構設置のMAX80及び愛媛大学設置のOrange-2000を用いた。X線その場観察実験から得られたサンプルの回折線と、急冷回収試料の走査型電子顕微鏡観察から生成相の同定、組成分析を行った。
    *3. **結果及び考察***
     6 GPa以下では650℃に到達するとantigoriteは40-350分で完全に消失した。この反応の時分割測定データを、結晶の核形成と成長の速度の割合を示すAvramiの式を用いて解析を行った。その結果と反応途中の組織観察から、enstatiteは結晶成長よりも核形成の方が速く、また多数の微結晶(数μm)で存在することが観察された。一方で、forsteriteは核形成よりも結晶成長の方が速く、少数だが非常に大きな結晶(数十μm)で存在することが確認された。これらの要因として、脱水分解で放出された流体相への選択的な結晶成分の溶け込みが深く関与していることが考えられる。一方、6 GPa以上ではantigoriteの安定領域を超えるとわずか30分ほどでtalcが生成された。そしてその後、高温領域でphase Aの生成が見られた。さらに詳細な結果については、講演時、紹介する。
  • 久保 友明, 鴛渕 孝太, 西 真之, 下宿 彰, 加藤 工, 肥後 祐司, 舟越 賢一
    セッションID: R8-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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     地球内部の上下マントル境界である660km地震波不連続面は、マントル主要鉱物であるMg2SiO4スピネル(sp)からMgSiO3ペロフスカイト(pv)とMgOペリクレイス(pc)への分解相転移(ポストスピネル相転移)が原因とされ、それは上下マントルを通過する対流運動に大きな影響を与えている。この相転移のカイネティクスはこれまで比較的wetな条件において成長のカイネティクスのみデータが得られていた(Kubo et al., PEPI 2002,2008)。本研究では、よりdryな条件においてポストスピネル相転移の核生成と成長の両方のカイネティクスを明らかにすることを目的とし実験を行った。  これまでに23.0-26.5GPa, 1000-1425℃において温度圧力条件の異なる9つのカイネティクスデータを得た。過剰圧の大きさによって核生成の待ち時間が大きく変化し、温度によって成長速度が大きく変化する。温度過剰圧条件が変化することにより核生成と成長のバランスが変化することが定性的に観察されており、今後定量的に解析することにより相転移の核生成と成長、両方のカイネティクスを明らかにできると期待される。
  • 鍵 裕之, 小竹 翔子, 福良 哲史, 荒川 雅, 太田 充恒, Harte Ben
    セッションID: R8-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    下部マントル起源のダイヤモンドに含まれるフェロペリクレース中のクロムの酸化状態をXANESスペクトルによって測定した。測定はKEK-PFのBL4のマイクロビームを用いて蛍光法で行った。その結果、フェロペリクレース中で、無視できない量のクロムが2価として存在し、その濃度は試料ごとに異なることがわかった。地球の試料でクロムの2価が見つかったのは今回の結果が初めてである。
  • 篠崎 彩子, 平井 寿子, 近藤 忠, 八木 健彦
    セッションID: R8-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    マントル中のメタンの存在は酸化状態、温度条件から限定的であると考えられてきたが、近年、ダイヤモンド包有物中やマントル捕獲岩中にメタンや高次炭化水素が存在することが報告されている。高温高圧実験、熱力学的計算の結果からも、マントルの温度圧力、酸化還元条件下でメタンや高次炭化水素が安定に存在することが示されている。本研究ではカンラン石の共存下で、メタンの安定性と高次炭化水素の生成を検討するために高温高圧実験を行った。カンラン石とその高圧相、個体メタンに加え、新たな物質の生成が示された。DAC内試料のラマン分光からエタンおよび他の炭化水素のC-C振動と考えられるピークが観察された。回収試料のラマン分光からは、常温常圧下で固体として存在する高次の炭化水素、黒鉛、無定形炭素の存在が観察された。マントル中で、メタンの分子重合が起き、さらに炭素単体と水素への乖離が起きると考えられる
  • 町田 真一, 平井 寿子, 川村 太郎, 山本 佳孝, 八木 健彦
    セッションID: R8-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    水素ハイドレートとは氷と水素分子からなる固体結晶である。水素ハイドレートは、氷惑星や衛星、原始星などの主要な構成成分と考えられており、これら天体の形成過程に重要な役割を果てしている可能性がある。この水素ハイドレートの高圧構造であるfilled ice Ic構造は、60 GPaまで存続することが報告されており、際立った高圧安定性を示している。本研究では、水素ハイドレートの高圧相変化を調べ、また構造内で働く分子間相互作用を検出して、高圧安定性の検討を行った。80.3 GPaまでの高圧実験の結果、20 GPa付近でハイドレート中のゲスト水素分子の回転が抑制され、一部の水素分子の放出が観察された。これらの現象は、高圧下における構造中の非常に接近した配置を解消し、構造の安定化をはかるための現象であると解釈された。さらに35 GPa付近では、ホスト水分子に水素結合の対称化が起こる可能性が示された。
  • 松井 正典, 伊藤 英司, 桂 智男, 山崎 大輔, 芳野 極, 横山 綾子, 上田 安紘, 舟越 賢一
    セッションID: R8-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    我々は今回、SPring-8に設置の川井式マルチアンビル高圧装置を使用した放射光高温高圧X線解析により、温度800~1600 K, 圧力21~42 GPaの範囲における11個の高精度な白金のT-P-Vデータを得ることができた。得られた11個のT-P-Vデータを既存の室温における静水圧縮データと組みあわせて、Mie-Gruneisenタイプの熱圧力に基づく解析を行い、高精度な(∂P/∂T)V値を得ることに成功した。得られた(∂P/∂T)V値に、電子熱圧力の寄与を加えることにより、白金について、温度3000 K、圧力150 GPaまでに適用できる信頼できる圧力スケール(温度-圧力-体積状態方程式)を求めた。
  • 浜根 大輔, 藤野 清志, 瀬戸 雄介, 佐多 永吉, 永井 隆哉, 新名 亨, 入舩 徹男, 石井 啓文, 平岡 望, Cai Y.Q.
    セッションID: R8-P01
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    放射光X線回折,発光分光を用いて,FeAlO3を固溶した珪酸塩ペロブスカイトの圧縮率および鉄のスピン状態を測定した。珪酸塩ポストペロブスカイト中の3価鉄は約50GPaでスピン5/2のハイスピンであったが,約80-113GPaの圧力領域では中間スピン状態であった。体積および軸長は圧力の増加に伴いスムーズに減少し,大きな不連続は見いだせなかったが,体積弾性率は純粋なMgSiO3ペロブスカイトに比較して小さな値を示しており,スピン状態との関連が伺える。
  • 河野 義生, 大藤 弘明, Greaux Steeve, 井上 徹, 入舩 徹男, 肥後 祐司
    セッションID: R8-P02
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    Grossular garnetの弾性波速度測定,その場X線観察実験を圧力最大16.4GPa,温度最大1650Kで行った.圧力約10GPa以上で約1000℃以上に加熱した後,弾性波速度の明らかな増加が見られた.約1000℃以下で加熱した後,採取した室温下での弾性波速度は過去に報告されているgrossular garnetの弾性波速度結果と調和的であるが,1000℃以上で加熱した後の室温下での弾性波速度はそれらよりも1-1.5%速い速度である.一方,その場X線回折測定からは,grossular以外のピークは確認されなかった.しかしながら,X線回折で確認できない程度の少量の鉱物の生成とそれに伴うgrossularの組成変化が,弾性波速度の増加を引き起こしている可能性が考えられ,TEM観察などによる原因解明が必要である.
  • 新名 亨, 入舩 徹男, 井上 徹, 大藤 弘明, 舟越 賢一
    セッションID: R8-P03
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    含水高圧鉱物(DHMS)の中で最も高圧まで安定なphase Dの安定性と高温圧縮特性を調べるため、焼結ダイヤモンドアンビルを使用したマルチアンビル高圧装置と放射光を組み合わせたX線その場回折実験を行った。実験条件は約28-46GPaの圧力範囲、温度1300Kまでの領域で行った。得られた回折パターンから格子定数を計算し、高温の状態方程式を導いた。
  • 富永 愛子, 加藤 工, 久保 友明, 黒澤 正紀
    セッションID: R8-P04
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    地球内部における微量元素の存在度やその挙動は、マントル内部の化学的不均一性や物質循環を解明する上で非常に重要な役割を果たす。また、微量元素はマントル内部の粒界・界面に貯蔵されることが明らかになり、マントルダイナミクスを考える上で、粒界・界面の役割は非常に注目されている(Hiraga et al., 2004など)。本研究は副成分鉱物を除いたオリビン多結晶体を用いて粒界の特性と拡散メカニズムの関係の解明を目的として地殻物質との反応実験を行った。
  • 西 真之, 久保 友明, 加藤 工
    セッションID: R8-P05
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
    地球深部に沈み込むプレートの内部は周囲より低温の環境であり、鉱物の反応速度が非常に遅い。そのため、平衡相境界を超えても相転移しきれない準安定相が存在する可能性が指摘されている。準安定相の存在領域を知るためには、鉱物の相転移速度を決定する必要がある。本研究では、海洋地殻玄武岩層がマントル遷移層領域へと沈みこむ過程で起こるeclogite-garnetite相転移のメカニズムとカイネティクスを実験的に明らかにすることを目的とした。 実験は九州大学設置のマルチアンビル型高温高圧発生装置(Q-MAX)を用いて行った。出発物質にはMORB組成のガラス粉末から3.9GPa,1100℃の条件下で合成したEclogite (garet + clinopyroxene) 多結晶体を用いた。今回の実験研究から、eclogite-garnetite 相転移は2段階で進行することが明らかとなった。
  • 久保 友明, 梶原 由美, 加藤 工, Durham William
    セッションID: R8-P06
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
    会議録・要旨集 フリー
     固体天体のテクトニクスや対流運動を理解するには、固い物質に少量の軟らかい物質が混ざったときの挙動に着目した2相系レオロジーの系統的な理解が必要である。CO2氷はH2O氷に比べ非常に軟らかいため、H2O氷に少量のCO2氷が混ざっただけでも流動応力を大きく減少させる可能性がある。本研究では、CO2氷とH2O氷の2相系において170-220K, 120MPaまでの圧密実験を行い、空隙率がほぼ0の出発物質を作成した。それを用いて常圧下および高圧下(50MPa)においてそれぞれ定応力および定歪み速度の塑性変形実験を行った。20 vol.%のCO2氷が含まれると、pure H2O氷に比べ粘性率が半分以下に低下する。これまでの予備的結果によればH2O-CO22相氷は、歪み一定および応力一定モデルの平均に近い挙動を示している。
  • Sanehira Takeshi, Wang Yanbin, Prakapenka Vitali, Rivers, L. Mark
    セッションID: R8-P07
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/04/07
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    Temperature measurement in large volume press experiments has been based on thermocouple emf, which has well known problems, e.g., unknown pressure dependence of emf, chemical reaction between thermocouple and materials related on cell assembly, and so on. There have been several attempts to measure temperature in large volume press experiments using techniques other than thermocouples. Here we report a new development using pyrometry in the multianvil press, where temperatures are derived on the basis of spectral radiometry. Several high pressure runs were conducted using the 1000 ton press with a DIA module installed at 13 ID-D GSECARS beamline at Advanced Photon Source (APS). The cubic pressure medium, 14 mm edge length, was made of soft-fired pyrophyllite with a graphite furnace. A moissanite (SiC) single crystal was built inside the pressure medium as a window for the thermal emission signal. An MgO disk with 1.0 mm thickness was inserted in a gap between the top of the SiC crystal and thermocouple hot junction. The bottom of the crystal was in direct contact to the tip of the anvil, which had a 1.5 mm diameter hole drilled all the way through the anvil axis. An optical fiber was inserted in this hole and the open end of fiber was in contact with the SiC crystal. Thermal spectral radiance from the inner cell assembly was obtained via the fiber and recorded by an Ocean Optics HP2000 spectrometer. The system response of spectrometer was calibrated by a tungsten ribbon ramp (OL550S, Optronic Laboratories, Inc.) with standard of spectral radiance. The cell assembly was compressed up to a target load of 15 tons, which was close to ambient pressure and then temperature was increased up to 1573 K. Radiation spectra were mainly obtained above 873 K and typical integration time was 1 ms. Two different calculations were made to derive temperature based on pyrometry. One was made based on Planck radiation function and the other was made by the J-function which is defined based on Wien's law (Yagi and Susaki, 1992, High Pressure Research: Application to Earth and Planetary Sciences, eds., Y. Syono and M.H. Manghnani, pp. 51-54). Calculated temperatures above about 1200 K were generally consistent with those obtained from the thermocouple emf within less than about 25 K. In addition to these measurements, new results using smaller cell will be also discussed.
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