日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2009年年会
選択された号の論文の235件中151~200を表示しています
R6:鉱物の合成・成長溶解・物性
  • 大藤 弘明, 黒木 清
    セッションID: R6-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    局所応力およびグラファイトの結晶度がグラファイト-ダイヤモンド相転移に及ぼす影響についてLHDAC実験と回収試料の微細組織観察より考察した.
  • 大井 修吾, 三宅 亮, 八島 正知
    セッションID: R6-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    本研究では、HT-Opxの安定領域を推定することを目的としている。そのためには、HT-Opxを含むEn-Di系のP-T projection を得る必要がある。本研究では、Caを含んだ斜方輝石(Ca-poor Opx)とCaを含まない斜方輝石(Ca-free Oen)を出発物質として、HT-XRDおよびDSCを行い、低温型―高温型の相転移の体積変化・エンタルピーを得た。 Ca-poor Opxを用いた実験ではのHT-XRDの結果、LT-OpxからHT-Opxへの相転移温度は約1170Cであり、その際の体積変化は10.05Å3/unit cellと求められた。またDSCでも同様に1185C付近でピークが観察され、その際の転移のエンタルピー変化は6.2kJ/molであった。 Ca-free Oenを用いたHT-XRD実験の結果、1000C付近の温度で一部の低温型斜方エンスタタイト(LT-Oen)がプロトエンスタタイト(Pen)へと相転移しはじめ、1130C付近で残りのLT-Oenが高温型斜方エンスタタイト(HT-Oen)へと相転移した。 Ca-poor Opxの時の相転移温度は1170C、Ca-free Oenの相転移温度は1130Cであり、Caを含む方が高温で相転移した。また、相転移温度と体積変化、およびエンタルピー変化によりdP/dTを求めたところ、0.07±0.01kbar/Cとなった。 この傾きとGasparik (1989)の示した熱力学モデルをもとにEn-Di系輝石のP-T projectionを描いたところ、HT-Opxは圧力のかかっている領域では、安定領域が広がることがわかった。
  • 阿部 利弥
    セッションID: R6-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    本研究では,Li2OやB2O3を添加したCaO-V2O5系のフラックスを使用して,アノーサイト(An)結晶の合成を試みた.結果,ひとつのフラックスにおいて,1200から1050℃,0.5℃/hrの冷却で,約8x3x1mmのサイズの結晶が得られている.この方法による育成は,温度などの育成条件を変えた現在も継続しており,さらに大きな結晶の育成を目指している.だだし,この場合,結晶に付着したフラックスを温水で取り除くことはできない.一方,もうひとつのフラックスでは,温水による洗浄での結晶分離が可能である.ただし,大きな結晶を得るためには不利で,透明な高品位の結晶に限れば,現時点で数ミリ大の結晶しか得られていない.しかしながら,2タイプのフラックスが見つかった意義は大きく,目的に応じ,フラックスを使い分け,結晶を育成することが可能となった.
  • 月村 勝宏, 鈴木 正哉, 鈴木 庸平, 村上 隆
    セッションID: R6-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    TRU廃棄物の処分地におけるPuのフェリハイロライトコロイドへの固溶量の将来予測を行うために、モル分率比という熱力学変数を導入した。ロシアのカラテャイ湖周辺の地下水中のフェリハイドライトコロイドに固溶しているPuの量の変化および熱力学的考察を行った結果、ほとんどのPuが長期間フェリハイドライトに固溶していることが明らかになった。
  • 牲川 菜月, 北村 雅夫
    セッションID: R6-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    六角柱状アラゴナイトの外形と内部組織を観察しその成因と形成過程を解析した。その結果、六方晶系のアラゴナイトの側面への斜方晶系のアラゴナイト個体の核形成・成長と、それに伴う六方晶系のアラゴナイトの相転移・結晶格子の変形によって形成されたことが明らかになった。
  • 北村 雅夫
    セッションID: R6-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    高速輸送経路の概念を用いて、らせん成長機構によって成長する多面体間の晶相変化を理論的に研究した。その結果、活性化エネルギーが増加すすると晶相変化が生じることが分かった。
  • 小松 隆一, 浅野間 奨, 益田 敬也, 山下 牧生, 中村 俊彦, 江上 誠一, 朝倉 悦郎, 吉崎 泉, 塚本 勝男
    セッションID: R6-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    月のレゴリスの加熱残渣物から生成されるC12A7(Ca12Al14O33)は、結晶構造中にゲージを有し、そのゲージの中には酸素が包接されている。本研究はこの月レゴリス残渣組成からC12A7を作製し、真空中で加熱したときの酸素発生を調べた。真空中で融解すると泡(酸素)が発生することが判った。また窒素雰囲気でのDTS-TG測定より1100℃より重量減少が観察された。この結果から、ゲージ中の酸素は真空中でも1100℃までは保持されると推定され、酸素発生材としては十分に検討可能であることが判った。その後の実験から真空下での融解時多くの気泡(酸素)が発生すること及びC12A7初晶領域に組成が存在すると酸素発生後に固化すると再度C12A7が析出固化し、これを再度加熱融解すると気泡発生が確認できた。
  • 田中 秀和, 三浦 裕行
    セッションID: R6-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    Mn3V2Si3O12は2価の8配位席にMn2+を持ち、3価の6配位席にV3+を持つgarnetである。 鞍瀬鉱山, 藤井鉱山・法花寺野鉱山の3鉱山でしか見出されておらず、桃井石(momoiite)として新鉱物申請中である。3鉱山に共通して8配位席にはCaが、6配位席にはAlがそれぞれ置換するという特徴的な化学組成が見られる。momoiite, goldmanite(Ca3V2Si3O12), spessartineならびにgrossularの4成分の固溶が推測され、momoiite成分は最大で60%程度であると考えられる。また、前述の4成分系において、Mnが増えるとVが減るという傾向が見られる。 Schreyer and Baller(1981)では1000℃において、8配位席と6配位席のイオン半径の大きさ組み合わせから、それぞれspessartine:常圧、goldmanite:常圧-0.4GPa, grossular:0.4GPa, momoiite:3.0-5.0GPaの圧力以上で安定としている。鞍瀬鉱山は約0.4GPa, 藤井鉱山、法花寺野鉱山はスカルンで生成されたと考えられる。よって、上記の3鉱山において端成分に近い組成のmomoiiteが産出しない理由の1つとしてとして、天然の圧力条件では圧力が低すぎるという点が挙げられる。そこでmomoiite-goldmanite系及びmomoiite-spessartine系の合成を行った。
  • 神谷 奈津美, 角森 史昭, 鍵 裕之
    セッションID: R6-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    ナノサイズの結晶成長に関する情報を得るために、動的光散乱法(DLS)を用いた粒径分布の時間変化観察を行った。不純物を添加しない条件で行うことに加え、これまで炭酸カルシウムの結晶成長及び溶解に影響を与えると報告されてきたランタンイオンを添加した条件で起こる不純物効果について調べた。ランタンイオン無添加条件においては反応開始から23分経過したところで溶液内における平均粒径が500 nmに達したが、それ以降は散乱強度が強すぎて多重散乱が起こる可能性があるために測定を停止した。しかしランタンイオンを添加した場合は反応開始から30分を経過しても散乱強度が弱く、約300分経過するまで平均粒径の時間変化を追うことができた。両条件とも散乱強度が十分高くなった状態の試料を取り出してSEM観察を行ったところ、測定結果と同様な大きさの粒子が確認できた。
  • 鈴木 正哉, 中西 亮介, 犬飼 恵一, 前田 雅喜, 月村 勝宏
    セッションID: R6-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体(以下ハスクレイとする)について、合成における加熱時間を変え、その生成過程をXRD、FTIR等から検討を行った。その結果、加熱時間が2時間までは非晶質アルミニウムケイ酸塩に特徴的な2θ=26°と40°付近にブロードなピークが見られたが、加熱時間3時間以降においては非晶質アルミニウムケイ酸のピークに加え、2θ=20°と34°付近に低結晶性粘土に由来するピークが確認された。赤外吸収スペクトル測定では、粉末X線回折において非晶質なピークのみを示している試料においては、1030cm-1付近にピークを有するのみであるが、ハスクレイの形成に伴い、1070、1030、950 cm-1付近にピークが確認された。
  • 眞岩 幸治, 中村 博昭, 木村 秀夫
    セッションID: R6-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    包晶関係のSr(NO3)2 (α相)とSr(NO3)2・4H2O (β相)、後者と共晶を作るH2O (γ相)がそれぞれ液相と共存する組成の溶液C1,C2,C3を種々の温度に冷却し、包晶凝固過程をその場観察した。溶液C1を冷却すると、α、β、γ相の順番で核形成するが、β相は必ずα相上に生じる。さらに溶液温度を下げると、どの溶液でもγ、α相の順番で結晶化し、多くの場合そのまま凝固が完了する。溶液C1、C2では、さらにα相上にβ相が発生する場合もある。これより次の結論が導かれる。β相はα相の周りに不均一核形成、成長するので、必然的に包晶を形成する。溶媒(γ相)の凝固が最初に起こる場合、いずれの溶液でもα相に対して過飽和な溶液が部分的に生じる可能性がある。α相が成長すればこれを核としてβ相の成長も可能となる。一方、β+γの組織が形成されることはない。
R7:地球表層の鉱物科学
  • 奥村 大河, 鈴木 道生, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: R7-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    多くの生体鉱物は結晶内に生体高分子を含んでおり、その形態や機械的性質に無機的な鉱物には見られない特徴が現れる。しばしば研究対象とされるcalcite(CaCO3)で構成された生体鉱物について、今回我々はその結晶学的特徴を調べ、無機的に形成されたcalciteとの違いを評価した。まずTG-DTA分析の結果、アコヤ貝(Pinctada fucata)の稜柱層は約2.8wt.%の有機基質を含むと見積もられた。また粉末X線回折(XRD)におけるピーク半値幅の拡がりから格子歪み(Δd/d)を算出すると、アコヤ貝の稜柱層のcalciteは非生物起源のcalcite(アイスランドスパー)より大きな格子歪みを持つことがわかった。また(0 0 1)面と低角度で交わる格子面ほど歪みが大きいという異方性があることも示唆された。このような結果から、生体鉱物は生体高分子が多く導入されると格子歪みを生じることが示唆された。
  • 宗本 隆志, 福士 圭介
    セッションID: R7-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    炭酸カルシウム鉱物の1つであるモノハイドロカルサイト(;以下MHC)は塩湖や海水環境における現在の堆積物から確認されている。最近では甲殻類などの甲皮を形成する炭酸カルシウムの構造がMHCと合致することが報告されている。このことから、MHCの生成は炭酸カルシウムの生成に重要な役割を果たしている可能性が示唆される。本研究ではMHCについて、鉱物の定量的な生成条件である溶解度積を決定した。本研究で得られたMHCの溶解度積は温度の上昇に伴って増加した。そのため、MHCは低温条件において安定な鉱物であると考えられる。また、5˚C以下の温度条件においてMHCの溶解度積は、ヴァーテライトより低くなることが確認された。この結果から、MHCは低温条件において3番目に安定な炭酸カルシウム鉱物であるといえる。
  • 三浦 保範
    セッションID: R7-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    本研究で炭酸カルシウム(方解石)が電顕観察で微細粒子の不規則組織か、楔状の集合組織を示し、微量のSi,Al,Mg,Niを含むことがわかった。 また岩塩含有SiCが樹枝状の微細組織として電顕で観察されたので、高温シリカ急冷時に割れ目空隙に捕獲されたと考えられる。 シリカガラスLDSGの空隙の溶融鉱物物質から隕石衝突の高温急冷で形成され、衝突生成時に捕獲した岩塩成分から海底衝突が、また溶融変成した炭素源のCa炭酸塩鉱物から浅海の海底衝突を示している。 大陸移動の39Ma頃の分布データから衝突形成地域が浅海付近であったことが確認できた。
  • 向井 広樹, 猿渡 和子, 鈴木 道生, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: R7-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    アラゴナイトは,Bragg(1924)によって報告されているように{110}面を共有した反復双晶(repeated twin)を持つことが良く知られている.また生体によって形成されたアラゴナイトにおいても{110}双晶を含むことが,これまで報告されてきた(e.g. Kobayashi and Akai, 1994).本研究において我々はイワガキ(Crassostrea nippona)の幼殻やコガモガイ(Lottia kogamogai)などアラゴナイトで構成された貝殻について解析を行ったが,これまでの報告と同様に{110}双晶が高密度に含まれていることが判った.しかし巻貝真珠層のタブレットを詳細に解析したところ双晶を含まない単結晶となっていることがあきらかとなった.すなわち巻貝における真珠層タブレットにはアラゴナイト単結晶とするための特殊な制御メカニズムが存在していると考えられる.
  • 橋爪 秀夫
    セッションID: R7-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    アロフェンを用いて生体で使用されていないアミノ酸であるノルバリンとノルロイシンのD体とL体の吸着をpH4、6、8で行い、吸着等温線を作成した。ノルバリンはDとL体の吸着量の差は用いたpH条件では殆どなかった。ノルロイシンについてはpH6と8でL体がD体より僅かに多くなる結果を得た。また、ノルバリンではpHが大きくなると吸着量が少なくなる傾向にあったが、ノルロイシンでは殆ど差がなかった。アロフェンはノルロイシンのL体選択性がある可能性がある。
  • 横山 正
    セッションID: R7-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    岩石-水相互作用を定量的に取り扱う上で,岩石間隙中の物質輸送と反応の速度やメカニズムの理解は重要である。本研究では,神津島の軽石質流紋岩の風化を研究対象として,移流(浸透),拡散,溶解の各要素について室内実験で評価を行い,反応-物質輸送方程式を用いた解析を行った。得られた結果をフィールドの解析から求めた風化速度と比較して,風化のメカニズムを考察した。その結果,フィールドにおいては,最大の流速,拡散速度(水飽和状態)を仮定しても,溶質の輸送が遅いため間隙全体として溶質濃度が高くなり,平衡濃度に近づいて溶解速度が小さくなることが分かった。このことは,フィールドの解析から求めた流紋岩のSiの溶解速度(約5E-19 mol cm-2 s-1)が,室内実験で求めた平衡から遠い条件での溶解速度(約2E-17 mol cm-2 s-1)より大幅に小さいことと調和的である。
  • 杉森 博和, 村上 隆
    セッションID: R7-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    Fe(II)を含むolivineの溶解を伴う異なる温度、pHで行い、溶解に伴うFeの再分配をモデル化した。モデル化には溶解速度、Fe(II)酸化速度、水流速、pH、温度などが考慮され、モデルにより、Feの再分配とPO2の関係が求められる。その結果、従来の古典的酸化速度式では、初期原生代のPO2を過大評価することがわかり、新しい速度式が提案された。
  • 森 亮順, 稲木 圭, 宇都宮 聡
    セッションID: R7-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    Iron oxides occur ubiquitously on the Earth surfaces and have strong affinity with various toxic metals, which govern the mobility of these metals in the environment. In general, the iron oxide occurs as nano-sized particle. In order to understand the effect of size on the association with toxic metals, we first establish the synthesis method of size-controlled hematite nanoparticles with targeted diameter <10 nm (S-hemNP) and ∼40 nm (L-hemNP). In addition, co-precipitation with As was tested and the preliminary results show that more than a few 100 ppm of As associate with hematite nanoparticles analyzed by X-ray adsorption analysis.
  • 宇都宮 聡
    セッションID: R7-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    Sorption of actinides, particularly plutonium, onto submicrometer-sized colloids increases their mobility, but these plutonium colloids are difficult to detect in the far-field. We identified actinides on colloids in the groundwater from the Mayak Production Association, Urals, Russia; at the source, the plutonium activity is ∼1000 becquerels per liter. Plutonium activities are still 0.16 becquerels per liter at a distance of 3 kilometers, where 70 to 90 mole percent of the plutonium is sorbed onto colloids, confirming that colloids are responsible for the long-distance transport of plutonium. Nano–secondary ion mass spectrometry elemental maps reveal that amorphous iron oxide colloids adsorb Pu(IV) hydroxides or carbonates along with uranium carbonates.
  • 坂東 知哉, 米田 哲朗, 木村 志照, 森本 和也, 佐藤 努
    セッションID: R7-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    洞爺湖の南東に位置する幌別硫黄鉱山は酸性坑廃水(Acid mine drainage, AMD)が発生している鉱山の一つであり、閉山してから30年以上経っている現在でも高濃度の鉄やヒ素を含むpH1.8の強酸性の坑内水が毎分4m3ほどで流出し続けている。そのため国や道などが毎年約3億円をかけて廃水処理事業を行っているが、酸性坑内廃水の発生への恒久的な対策は確立されておらず、そのためには水質悪化の要因であるヒ素の存在状態と溶出特性の把握が必要である。そのため、本研究では、ずり堆積場にて採取した鉱石試料について全岩試料分析として蛍光X線(XRF)分析、粉末X線回折(XRD)分析を行い、鉱物微小部におけるヒ素の存在状態についての解析として、偏光顕微鏡による観察とEPMA分析を行った。そして、TAO溶液・CDB溶液を用いて抽出実験を行った。また、溶出特性の分析には蒸留水を用いてバッチ試験を行いICP-AESでヒ素を定量し、これらからヒ素の存在状態と溶出特性の関係について検討をした。
  • 古川 登
    セッションID: R7-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    顕微赤外分光光度計を用いて,円石藻類の石灰質殻の赤外吸収スペクトルを測定した.Discoaster属の殻のスペクトルは,1500cm-1付近に現れるピークが2~3本に分離する.この特徴は,その方位がc軸方向と一致することが期待されるが,単結晶データでは,この波長付近の吸収が強すぎたため確認することができなかった,また,このようなピークの分離は非晶質の方解石の場合に報告されているが,今回の結果に適用できるかどうかは,さらに検討が必要である.
  • 市橋 弥生, 赤井 純治
    セッションID: R7-P05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    バクテリアは元素や鉱物の地球化学的循環において重要な役割を果たし,金の沈殿と溶解を積極的に行うバクテリアも知られている(e.g.Nakajima 2003,Lengke et al.,2006,Reith et a.,2006,2007,Kashefi et al.,2001,Konishi et al.,2006). 天然の佐渡産砂金のSEM観察と,塩化金水溶液を用いた培養実験で得られた試料を比較し,自然金の形成におけるバクテリアの関与,つまり,金のバイオミネラリゼーションを検討した.SEMにて砂金の表面観察を行った結果,バクテリアに類似する組織が観察された。培養実験には珪藻と硫酸塩還元菌(SRB)を使用した.その結果,細胞は金のナノ粒子に覆われ,細胞周辺に付着したナノ粒子とやや大型の自形結晶が共存する形でも見られた.以上のことから,今回用いた2種類の微生物とも金を濃集する能力があることが確認された.
  • 市村 康治, 村上 隆, 高井 康宏, 上原 誠一郎, 宮脇 律郎
    セッションID: R7-P06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    カナダProntoの古土壌(24.5億年前)中のrhabdophaneと他の希土類リン酸塩鉱物の関係を調べるため、rhabdophaneのY置換体鉱物[1]の加熱実験とPronto古土壌の組織観察と化学分析を行った。さまざまな結果から、古土壌のapatiteのrimに現れるmonaziteとxenotimeは、24.5億年前の風化によるrhabdophaneの形成を経て、その後の熱変成により形成したことが支持された。従って、rhabdophaneやmonaziteのCe含有は、定量的酸素進化推定のプロキシとして有用である。 [1]高井康宏・上原誠一郎(2007)日本鉱物科学会2007年度年会要旨集p.221.
  • 上石 瑛伍, 宇都宮 聡
    セッションID: R7-P07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    アパタイト(Ca5(PO4)3OH,F,Cl)はPbを固定する性質を持つ。そのメカニズムは、陽イオン交換や、Pbが難溶解性の層へと取り込まれるため起こると考えられる。本研究ではアパタイトーPb間相互作用による反応界面近傍のナノスケール現象を解明するため、pH = 5.0、室温、硝酸鉛溶液中(2 mM)で粉末HAPと単結晶の天然フルオロアパタイト(FAP)の溶解実験を行った。 HAP表面においてはb軸方向にエピタキシャルに成長しているハイドロキシパイロモーファイト(Pb5(PO4)3OH, HPY)の生成がみられた。このHPYには2つの生成メカニズムがみられた。一つは、飽和状態になった溶液からHAP上にHPYが生成するメカニズム、もう一つは、HAPの表面でHAPの溶解の後即座にHPYが生成するメカニズムである。 また、FAP溶解実験では断面透過電顕法からFAP表面のCaが選択的に溶脱すること、Pbは二次鉱物として固定されることが明らかになった。
  • 吉野 徹, 鍵 裕之
    セッションID: R7-P08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    カルサイト表面におけるステップ及びキンク位置へのアスパラギン酸の選択的吸着能を、エッチピットの形態変化の観察結果をTLKモデルで解釈することで評価した。その結果、L-Aspは[441]ステップよりも[481]ステップに、キンクについては、[481]ステップ上のキンクよりも[441]ステップ上のキンクに、より吸着しやすいことがわかった。
R8:地球深部の鉱物科学
  • 浜根 大輔, 八木 健彦, 岡田 卓, 藤田 尚行, 佐多 永吉
    セッションID: R8-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    Fe-Xe系のふるまいを地球コア条件下,約180GPa,3000Kまで調べた。今回調べ圧力温度条件において,新たな化合物を示す証拠は得られなかった。しかしながら,約120GPa以上の圧力領域ではhcp-Feの格子体積が従来のものより有意に大きい傾向を示し,XeがFe中に固溶している可能性が示唆された。
  • 浦川 啓, 松原 良輔, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    惑星の核を構成する物質の候補である鉄ニッケル硫化物の高圧物性の研究は重要である。我々は硫化物の高圧相,Ni3Sを発見した。その安定性と構造について放射光を用いたその場X線観察から調べた。その結果,Ni3SはFe3S相と同じFe3P型の構造をとることが分かった。Ni3S相の安定領域は6GPa以上で,それ以下の圧力ではNiとNi3S2相に分解する。また,700K以上の温度ではNiと液に分解溶融した。溶融温度は圧力とともに上昇し,その安定領域が広がっていくことが確認された。これらの結果からNi3SとFe3Sは完全な固溶体を形成し,NiがFe3S相に固溶することによりその安定領域だけでなく体積弾性率などの物性も変化していくことが予想される。
  • 大谷 栄治, 浅沼 英利, 境 毅, 寺崎 英紀, 鎌田 誠司, 平尾 直久, 大石 泰生, 佐多 永吉
    セッションID: R8-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
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    高温高圧実験には両面レーザー加熱のダイヤモンドアンビルセルを用いた。Fe-3.4 wt% SiおよびFe-9.8 wt% Ni-4.0 wt% Siでは、約100GPaではfcc相とhcp相が共存し、より高圧ではhcp相が安定である。これらの合金を252 GPa, 374 GPaまで加圧し圧縮曲線をバーチ・マーナハンの状態方程式でフィットした。Fe-3.4 wt% SiではV0 = 22.4(28) Å 3, K0 = 196(20) GPa, K’0 = 4.3(2)、 hcp–Fe-9.8 wt% Ni-4.0 wt% SiではV0 = 22.7(6) Å 3, K0 = 167(36) GPa, and K’0 = 4.7(4)。この結果、内核はFe 82-85 wt. %, Ni10 wt. %, Si 5.4-7.7 wt. %の組成を持つことが推定された。
  • 小野 重明
    セッションID: R8-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    地球内部で起こりうる二次の構造相転移の一つとして、シリカの高圧相転移であるポストスティショバイト相転移がある。この二次相転移境界を精密に決定することは、地球マントル中の精密な構造を明らかにする上で、きわめて重要である。そこで、本研究では、ルチル型構造を持つ金属酸化物に着目して、高圧実験と第一原理計算を用いて、二次相転移の可能性を調べた。高圧実験は、ダイヤモンドアンビルセルを用い、放射光X線を利用して、実験試料を観察した。第一原理計算は、近年、多くの研究グループで使用されていて、VASPと呼ばれる計算コードを使用した。まず初めに、高圧実験でイリジウム酸化物の構造相転移を観察した。その結果、二次相転移は起こらず、パイライト型構造への一次相転移を起こした。第一原理計算でも、CaCl2型構造への二次相転移は準安定な構造相転移であることが明らかになった。
  • 松井 正典
    セッションID: R8-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    金について、Mie-Grüneisen-Debyeタイプの取り扱いに基づいて高温高圧状態方程式(T-P-V EOS)を求めることを試みた。必要なパラメータは、240 GPaまでの衝撃圧縮データ、常圧での1300 Kまでの熱膨張データ、常圧での弾性定数の温度依存データの全てを高精度で再現すべく、経験的手法を用いて求めた。続いて、今回金について得られた結果を既存のMgOと白金の状態方程式(それぞれMatsui et al., 2000; 2009)と詳細に比較した。その結果、MgO、金、白金のT-P-V EOSが、広範な温度圧力範囲にわたって、互いに高精度で一致することを見出した。
  • 藤野 清志, 西尾浜根 大輔, 瀬戸 雄介, 佐多 永吉, 永井 隆哉, 石堂 知基, 鈴木 啓介, Li Lin, 新名 亨, 入舩 徹男 ...
    セッションID: R8-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     下部マントルの最大構成相であるMg-ペロブスカイト中の鉄の高圧下におけるスピン状態を調べるため,(Mg0.85Fe(3+)0.15)(Al0.15Si0.85)O3 組成の合成ペロブスカイト中の3価鉄について,X線発光分光法により 室温下200 GPa までの高圧下のスピン状態を測定した.測定にはダイヤモンドアンビルセルを用い,スプリングー8のBL-12で鉄のk-beta' のX線発光スペクトルを測定した.  測定の結果,Mg-ペロブスカイト中の3価鉄のスピン状態は,圧力の増加に伴い120 GPa あたりからスピン数が減少し,200 GPa では high spin とlow spin の中間状態になったが,low spin にはならなかった.これらの結果からすると,下部マントルでのMg-ペロブスカイト中の3価鉄のスピン状態は,スピン転移が正の温度勾配を持つとすると,low spin にはならないと推定される.
  • 岡田 卓, 八木 健彦, 浜根 大輔
    セッションID: R8-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    下部マントルにおけるNaのホスト相や挙動の解明を目指し、NaFe3+Si2O6エジリン輝石の高温高圧相関係を調べた。実験はレーザー加熱ダイヤモンドアンビルと放射光X線回折を組み合わせて行った。出発物質には天然又は合成したエジリン輝石粉末を用いた。室温で目標圧力まで加圧した後、YAGレーザーで1200~2000K程度まで加熱した。加熱前後に回折X線を取得し、存在する相とその格子体積を決定した。エジリン輝石は約15GPaでSiO2相+未知の立方晶系相に分解し、約38GPaでSiO2相+Cf類似構造に相転移した。その後、約70GPa以上では斜方晶Pv単一相が得られた。体積はMgSiO3-Pvに比べ3~4%大きく、常圧に戻すとアモルファス化した。本実験結果は、下部マントル深部ではNaとFe3+がカップリングしてMgSiO3斜方晶Pvに固溶する可能性を示唆する。
  • 糀谷 浩, 蒲原 真理子, 赤荻 正樹, 鍵 裕之
    セッションID: R8-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    カルシウムフェライト型NaAlSiO4は、下部マントルにおいて中央海嶺玄武岩の高圧相として存在していると考えられているカルシウムフェライト相の主要端成分である。本研究では、カルシウムフェライト型NaAlSiO4の熱容量測定を行い、125-400 Kにおける定圧熱容量を決定した。さらに、ラマンおよびIR分光測定を行うことにより格子振動の情報を取得し、Kiefferモデル計算により実測データのない温度領域の定圧熱容量を推定した。得られた熱容量を使用して、298 Kでの格子振動エントロピーが86.7 J/mol.Kと求められた。AlとSiの同じ陽イオン席における完全ランダム分布を仮定した場合の配置のエントロピー11.5 J/mol.Kと併せると298 Kでのカルシウムフェライト型NaAlSiO4のエントロピーは98.2 J/mol.Kと求められた。
  • 浜根 大輔, 片桐 聖智, 八木 健彦
    セッションID: R8-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    高圧高温下約10GPaにおいて,コランダム型Ti2O3がTh2S3型構造に相転移することを見いだした。このTh2S3型Ti2O3は約80GPaまで安定で,常圧下に回収可能であった。Th2S3型構造は構成多面体が7配位で特徴づけられる。
  • 浜根 大輔, 八木 健彦
    セッションID: R8-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ポストペロブスカイト相の圧縮挙動およびバルク音速へのFeOおよびFeAlO3成分の効果を実験的に測定した。空間群Cmcmのポストペロブスカイト構造は軸圧縮率に大きな異方性を持ち,b>>a>cであり,この圧縮率はc軸方向に配列する8面体同士にはたらくO-O間の反発効果で説明できる。また,FeOおよびFeAlO3成分はポストペロブスカイトの圧縮率に大きな影響を与え,結果としてバルク音速には相転移に相当するようなコントラストが生まれることが明らかとなった。
  • 入舩 徹男, 新名 亨, 舟越 賢一, McCammon Catherine, 宮島 延吉, Frost Dan, Rubie David
    セッションID: R8-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    焼結ダイヤモンドアンビルを用いたマルチアンビル装置により、50GPa程度の圧力下までのパイロライト組成の相関係・元素分配・密度変化を、X線その場観察および急冷回収試料の分析によりおこなった。また、得られた試料のいくつかにおいて、主要相であるMgペロフスカイトおよびマグネシオウスタイトのFeの価数をメスバワー分光およびEELSにより決定した。これら2相の間のFe分配は40GPa程度を境に大きく変化することが見い出されたが、これはマグネシオウスタイト中の2価Feの相対的濃集により説明でき、Feの高スピン-低スピン転移に関連づけられる。またパイロライトの密度は地震学的モデルと良く一致し、下部マントルの化学組成として適切であることが示された。
  • 川添 貴章, 西山 宣正, 西原 遊, 入舩 徹男
    セッションID: R8-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ウォズリアイトの塑性流動特性はマントル遷移層付近でのマントル対流の様子を理解するために重要である。今回、DIA型変形装置を用いてマントル遷移層温度圧力条件下でのウォズリアイトの変形実験を可能にしたので報告する。高温高圧下での変形実験を行うために、DIA型変形装置(D-DIA)に6-6式加圧方式を組み込んで用いた。17-18 GPa・1700 Kにおいてウォズリアイトの変形実験に成功した。アニ-ル実験および変形実験の急冷回収試料の鉱物は、それぞれウォズリアイトおよびウォズリアイト・リングウッダイトであった。歪は変形させた試料と変形させずに高温高圧状態から急冷回収した試料との厚さの差から見積もり、歪は15 %であり、歪速度は5.6 × 10-5 s-1であった。
  • 土井 菜保子, 加藤 工, 久保 友明, 下宿 彰, 白石 令, 鈴木 昭夫, 大谷 栄治, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    玄武岩質海洋地殻の主要構成鉱物の1つである斜長石の端成分albiteが高圧相であるJadeite とQuartzの2相に分解する相転移について、その機構と速度に対する応力の影響を調べる実験を行った。出発物質には粒径10μm程度のalbite多結晶体試料を用いた。変形実験にはKEKのPF BL14C2に設置されたマルチアンビル型高圧変形装置(D-CAP)を使用した。出発物質を目的の温度圧力条件(1.4-3.6 GPa、 673-973K)に保持した後、一定の歪速度で変形をおこなった。試料に単色X線を照射し2次元X線回折パターンから応力と相転移率の、X線透過画像から歪の時間変化を測定した。得られたalbiteの安定領域、高圧相の安定領域それぞれについての実験結果から相転移と塑性流動について議論する。
  • 平賀 岳彦, 橘 ちひろ, 大橋 直樹, 佐野 聡
    セッションID: R8-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    forsterite ± enstatiteの粒成長システマティックスを明らかにした。
  • 宮崎 智詞, 平賀 岳彦, 吉田 英弘
    セッションID: R8-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    材料工学で普通に用いられる大気圧下での一軸圧縮・引っ張り試験機内でクリープ可能な試料開発およびクリープ実験を行った。
  • 富永 愛子, 加藤 工, 久保 友明, 黒澤 正紀
    セッションID: R8-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ウォズリアイト中の不適合元素の拡散係数を求めるため、ウォズリアイト多結晶体と地殻物質との反応実験を行った。LA-ICPMS分析で得られるdepth profiling を用いてNa, K, Rb, Sr, Ba, Nb, Alの有効拡散係数を求めると、16GPa, 1500度の条件ではD=7.8×10^-14-5.6×10^-13 am2/sec となる。この値はオリビン中(3GPa, 1100度)のそれと比較すると0.5倍から1桁小さいことが明らかとなった。
  • 山崎 大輔, Chamathni Hegoda, Ralf Dohmen, 圦本 尚義, Sumit Chakraborty, 桂 智男
    セッションID: R8-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    高温高圧下でのフォルステライト中のSi自己拡散係数の決定を行った。実験的に拡散係数を決定するために、川井型高圧装置による高圧実験と2次イオン質量分析計(SIMS)による同位体濃度分析を行った。高圧実験の出発試料には、研磨表面に29Siに富んだMg2SiO4をコーティングした合成単結晶フォルステライトを用いた。拡散実験中の最表面の同位体組成を一定に保つために、コーティング層を200-300 nmの厚みにした。圧力3、8、13 GPa、温度1600, 1800 Kで一定時間拡散させた後、結晶表面から深さ方向への同位体濃度プロファイルをSIMSにより測定した。予備的な解析結果では、拡散係数D=7×10-21m2/sとなる。
  • 西 真之, 久保 友明, 加藤 工, 富永 愛子, 下宿 彰, 土井 菜保子, 肥後 祐司, 舟越 賢一
    セッションID: R8-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    メージャライトの低圧相への相転移はダイヤモンドがマントル遷移層領域でメージャライトを捕獲してから後の、温度、時間、圧力環境に制約を与える可能性がある。我々は上部マントル条件下で、メージャライトがその低圧相であるガーネットとパイロキシンへ分解する速度を実験的に明らかにした。実験はSPring-8に設置されているMA型高圧発生装置SPEED1500を用いて行い、相転移は放射光X線回折によりその場観察した。出発物質はあらかじめ九州大学のMA型高圧発生装置 (QDES)で合成したメージャライト多結晶体を用いた。メージャライトから低圧相(ガーネット+パイロキシン)への分解相転移を放射光X線回折プロファイルと、回収組織の組織観察、組成分析から確認した。この相転移は、天然のダイヤモンド包有物のものと同様、母相の粒界から進行した。また、X線時分割測定から低圧相の拡散律速成長のカイネティクスを明らかにした。
  • 平井 寿子, 本田 瑞穂, 山本 佳孝, 川村 太郎, 八木 健彦
    セッションID: R8-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    CO2ハイドレートはメタンハイドレートなどと同様のクラスレート水和物のひとつで、構造Iをとる。CO2ハイドレートは多くガスハイドレートが示すゲストサイズと圧力依存の一般則から逸脱する特異な性質を示す。たとえば、他のハイドレートの分解曲線は正の傾きを示し、室温下では数GPaまで安定であるが、CO2ハイドレートは分解曲線の傾きが、0.3 GPa, 294Kを境に正から負に転じ、安定領域が低温側に限られる。そして、この低温高圧領域での相変化や安定性はいまだ明らかにされていない。そこで、本研究では低温高圧領域での実験を行い、X線回折とラマン分光法により相変化や安定性を明らかにし、室温下での不安定性の原因を検討した。
  • 町田 真一, 平井 寿子, 川村 太郎, 山本 佳孝, 八木 健彦
    セッションID: R8-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    水素ハイドレートは近年、氷惑星や衛星、原始星などの主要な構成成分と考えられるようになり、これら天体の形成過程に、重要な役割を果てしている可能性がある。水素ハイドレートのfilled ice Ic構造は我々の研究で、少なくとも80.3 GPaまで存続することが明らかとなり、他のガスハイドレートと比較して、際立った高圧安定性を示している。このことから、filled ice Ic構造内では、高圧安定性を保証する特異的な相互作用が働いていることが予測される。本研究では、重水素置換の水素ハイドレートの高圧実験を行い、高圧構造変化や振動状態変化の同位体効果を調べて、構造内で働く分子間相互作用を検出し、高圧安定性の検討を行った。X線回折実験の結果から、重水素置換を行った水素ハイドレートの圧縮率が35 GPa以上で、軽水素系のハイドレートより大きくなることが観察された。この同位体効果は、filled ice Ic構造内の分子間相互作用の違いにより導かれていると考えられた。
  • 井上 徹, 徳永 雄哉
    セッションID: R8-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    上部マントルの主要構成鉱物はカンラン石、輝石、ザクロ石であり、これらの鉱物の高圧下での溶融関係を明らかにすることは、地球内部のマグマの生成を理解する上で重要である。また、水は地球の重要な揮発性成分の一つであり、マグマの成因における水の影響を明らかにすることは極めて重要であると考えられる。このような理由から、現在までにカンラン石 (olivine) 、輝石 (enstatite 、diopside) 、ザクロ石 (pyrope garnet) で、含水条件下での高圧溶融実験がなされてきており、これらの鉱物の溶融における水の影響が明らかにされてきている (e.g. Inoue, 1994)。しかしながら、pyrope - enstatite - H2O 系に関しては、未だ溶融に関する水の影響は明らかにされていない上、どの圧力下まで液相不混和現象が存在するのかという疑問に対しても明らかにされていない。よって本研究では、pyrope - enstatite - H2O 系での高圧溶融実験を5 GPaで行い、その溶融関係、及び生成されるマグマの組成を決定し、5 GPaでの液体不混和現象の存在の可否を明らかにした。
  • 山田 明寛, 井上 徹, 亀卦川 卓美
    セッションID: R8-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ダイヤ型マルチアンビル型プレスと放射光X線を用いて、含水アルバイト組成メルトの構造変化を調べるため高圧X線その場観察実験を行った。実験により得られたメルトの回折データを解析した結果、動径分布関数中のT-O(Si-O, Al-O)ピークは2.3 GPa以下の低圧領域では一本のピークとして現れ、両原子間距離を区別することができなかった。しかし、それ以上(3.6 GPa以上)の圧力では、Al-O原子対のピークが長距離側に大きくシフトすることでSi-Oピークと明瞭に分離した。このAl-O距離の長距離化は、特にAlの酸素配位数の増加と解釈することができ、Alの配位数変化の圧力は、徐々に起こると考えられるものの、固相の相転移(jadeite + quartz)場合とよく似た圧力領域で起こると考えられる。
  • 永井 隆哉, 佐野 亜沙美, 鍵 裕之, 飯塚 理子, 栗林 貴弘
    セッションID: R8-23
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    科研費新学術領域研究が採択され、含水鉱物中の水素の地球深部でのダイナミカルな挙動の解明を、高温高圧下での中性子回折実験から目指すプロジェクトが始まった。研究の第一歩として、粉末中性子回折データのRietveld法によるCa(OD)2中の重水素位置精密化を行ったので報告する。 粉末のCa(OD)2試料は、CaOと過剰な重水を240℃飽和水蒸気圧条件下で24時間反応させ合成した。粉末中性子回折実験は、茨城県東海村にある原研研究用原子炉JRR-3のHRPD(角度分散法λ=1.82307A、10<2θ<162)において、室温条件、He雰囲気で行った。得られたデータは、RIETAN-2000を使用してRietveld解析を行った。精密化したパラメータは、プロファイル関数・格子定数・原子座標で、原子変位パラメータは現在のところ等方性のものを用いている
  • 飯塚 理子, 鍵 裕之, 小松 一生, 牛嶋 大地, 永井 隆哉, 佐野 亜沙美, 中野 智志
    セッションID: R8-24
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    Ca(OH)2は含水鉱物の典型例であるbrucite型金属水酸化物に属し、圧力・温度誘起の構造変化が数々報告されている。高圧下では、結晶構造中でCaO6層間に位置するOHイオンと酸素あるいは水素との相互作用により、20 GPa以下でアモルファス化や結晶構造相転移を起こす。本研究では、Ca(OH)2の高圧下での構造変化を詳細に解明することを目的として、単結晶および粉末試料の高圧下その場観察を行った。また、重水素化物Ca(OD)2についても同様に実験を行い、圧力応答への同位体効果の有無を検討した。DACを用いたラマン・IR分光および粉末X線回折測定を行った結果から、アモルファス化する前に高圧相へと相転移することが分かった。その圧力応答は粒径や圧力媒体の寄与が大きいことが示唆される。
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