本稿の目的は、筆者が考えている英文テクストの「深い読み方」と「高い読み方」を紹介することにある。もし、この二つの読み方が実践できれば、英語のリーディングの授業がよりいっそう、興味深いものになることが期待できるであろう。読む対象は、日本を開国するために来日した M.ペリーの遠征記の一部である。「深い読み」とは、分析的な読みを通して、隠されている意味を明らかにする方法である。このための手法として、N. グッドマンの「世界制作(worldmaking)」理論の次の「製法=processes」を利用する――(a) 合成と分解、(b) 重みづけ、(c) 順序づけ、(d) 削除と補充、(e) 変形。これらの製法によって、テクスト、つまり世界の制作メカニズムを見ることができる。これらの製法は、その数が少ないので、利用しやすいと考えられる。「深い読み」は、ことばそのものの読みが基本だが、「高い読み」は、テクストから少し離れて、つまり「高い学問的視点」から、テクストの内容を考える読み方である。その結果、ペリーは、 当時新しく形成されつつあった近代家族のなかで育った人間であるという仮説が導きだされた。
本稿ではトランプアメリカ大統領のツイッターとオンラインニュースにおける移民に 関するレトリックを考察する。ことに、移民政策とメキシコ(移民の出身国として重要な国で ある)との関係を作り上げるに際しての政府の無秩序という幻想を作り出すような言語の使用 を分析する。本稿では、トランプ政権が民主的ガバナンスのプロセスから人々を遠ざけるべく して混乱を引き起こす言語使用である「無秩序の言語」を用いていると主張する。これは、ド ゥルーズとガタリ(1987)による「秩序の言語」という概念を修正した概念形式であるが、 「秩序の言語」とは、語り手の真実性よりも聞き手の従順さが求められるコミュニケーション を指している。「無秩序の言語」を使うことにより、トランプ政権下のアメリカ政府による支 配は単なる非従順よりもむしろ、政治的反発を防げる混乱状態を作り出している。
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