メディア・英語・コミュニケーション
Online ISSN : 2436-8016
Print ISSN : 2186-1420
2 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
目次
研究ノート
  • ホーマン 由佳
    原稿種別: 研究ノート
    2012 年 2 巻 1 号 p. 217-228
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、コーパスを使用したワインディスコースの概念メタファー分析を試みた。特定の文脈でメタファーがどのように使われているかを考察する予備研究の一環として、「メタファーとは日常の言語や思考に深く根付いている認知メカニズム」と主張した Lakoff と Johnson (1980) のメタファー理論に依拠した分析考察を行った。また、直感に依存しないデータ処理をめざすためコーパスを使って対象語を抽出し、実際のメタファー判別作業は手動で分析した。 Caballero & Suarez-Toste (2008, 2010) による概念メタファーの 3 つの分類を参照しつつ、その分類の有効性と限界に言及した。

  • Yamamoto Azusa
    2012 年 2 巻 1 号 p. 229-240
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    この研究は、子供の言語発達過程を見るためにコーパスが有効に使用されうるかどうかを検証するためのパイロットスタディである。アメリカのテレビ番組 Full House の登場人物、Michelle Tanner の言語データを使い、彼女の8年間に亘る言語発達を分析した。Michelle の言語データはコーパスソフトウェア AntConc (Anthony, 2011) で分析され、頻出用語、1 文の平均単語数、BE 動詞、未来形、現在完了形、I 節、you 節、そして If 節のカテゴリーに分類された。その結果、8年間における Michelle の言語発達において、構文や文法習得にある程度の順番があるということが分かった。また、その言語発達プロセスは Gard, Gilman & Gorman (1993) らが指摘する子供の自然な言語発達過程と高い相関があることが確認された。このことから、コーパスは、いくつかの限界はあるものの、子供の言語発達を分析する上で効果的なツールになり得るとの結論に至った。

基調講演
研究論文
  • ストラデイバリとガルネリ・デル・ジェスをめぐる語り
    窪田 光男
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 15-31
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、現在、国際舞台で活躍する著名なバイオリニストが、メディアのインタビューに対して、自分自身が使用するアントニオ・ストラディバリやガルネリ・デル・ジェスといったバイオリンの銘器について、何をどのように語るかに着目することで、銘器神話の言語構造を分析した。分析にあたっては、ロラン・バルトの、神話は言語的に構築されていくという前提、および同じくバルトの概念である、人々の語りを支配し、語り手の主体性を奪っているエクリチュールの概念を援用した。分析の結果、バイオリニストが音楽家集団の中で共有されている、ある特定の語りに支配されているため、銘器について語る際、多くのバイオリニストに顕著な共通点が認められることがわかった。また、ストラディバリやデル・ジェスの名は、単に楽器そのものを指すだけではなく、そこに神話化の鍵となるいくつかの記号を取り込んでいることが明らかになった。

  • 英語をめぐる北部と南部の対立に着目して
    久保田 絢
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 33-50
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は独立前後のインドにおける公用語問題、特に英語を公用語にするかどうかをめぐる南北間の論争に着目し、両者が構築した「言語イデオロギー」の論理構造を明らかにすることを目的とした。北部は英語を公的地位から排除することで精神の脱植民地化と大衆との融合を図り、独立国インドのアイデンティティを構築しようとした。一方、南部は英語を公用語として残すことで、北部と対等な立場を維持し、南部独自のアイデンティティを守ろうとした。本研究は、特定の言語を選択し、それを正当化する論理が共同体構想の一部であり、言語の選択はその価値だけではなく、それを話す人びとやその社会の価値づけをも同時に行う。言語イデオロギーの構築は、集団的アイデンティティの構築の一環なのであり、特にインド独立期において、それが集団的(政治的)アイデンティティの性質を決定したといえるほどの重要性をもっていたと言えるであろう。

  • A Critical Analysis to uncover embedded ideologies within two media texts
    ロビンソン フリッツ
    原稿種別: research-article
    2012 年 2 巻 1 号 p. 51-70
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    世界中のメディア各社は特定の社会から談話を発信する社会的機関である。メディアの談話は、ジャーナリストを取り巻く社会の影響を色濃く受けた視点や価値観を通して生み出された言説である。本稿では、2 つのメディアが日本の歴史教科書と第二次世界大戦以後の日本を描く際にどのようなイデオロギーに基づいているのかを、批判的談話分析(CDA)の枠組みを用いて分析する。CDA を用いることで、メディアの談話が生み出される社会的文脈において、語彙や文法がどのように使用されているのかを分析することで、その背後にあるイデオロギーを分析することができる。

  • 広告における対人的機能を中心に
    減 薇
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 71-87
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    広告は消費者に商品に関する情報を伝達することにより、消費者からの信頼を獲得し、商品 を購買する行動を起こさせる説得的コミュニケーションである。また、このコミュニケーションは国や文化によって異なる。そこで、本稿では、広告のコミュニケーションの特質に注目し、日米の雑誌から化粧品広告に関するディスコースを抽出し、選択体系機能理論における対人的機能に焦点をあてて対照分析を行うことで、広告主と消費者の役割関係が言語表現としてどのように具現されるのか、また国によってどのようなディスコースが構築されるかを明らかにする。

  • 小野田 榮
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 89-107
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    この論文は、英語専攻学生対象のメディア英語のコースにおいて、スピーキングにおける流暢さを高めることを目指して、Nation の four stands of teaching の中の流暢さを高めるタスクのひとつ、4/3/2 (Nation 2006) を利用した授業展開の効果について述べた研究報告である。このタスクには、流暢さを高める基本的な要素である formulaic language units (形式的な表現)、automatization(自動化)および task repetition (タスクの反復)が含まれており、形式的な表現は繰り返し学習によって自動化しやすいため、スピーキングの流暢さの向上に効果があるとのことが、これまでの研究でその効果は実証されている。この研究は、週に 2 回行われるメディア英語の授業において一年に渡り 4/3/2 を用い、ストリーテリングによるインタビューテストと大学で行われる Kanda English Proficiency Testを用いて、その授業方法の効果を検証した。その結果、スピーキングの流暢さはその両方のテストにおいて統計的に有意な向上を示し、Nation の 4/3/2 というタスクの効果を実証することとなった。

  • 濱田 陽
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 109-125
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は英語の多様性をリスニング指導法の 1 つであるシャドーイングに組み込む事である。現代では多様性に目を向けることは不可欠である。同時に、新しい視点である、動機づけ研究において、自らを国際的コミュニティに関連付けるという視点で「国際的志向性」が注目されている。しかし、学習者が World Englishes の概念を理解したとしても、効果的に言語スキルを向上させる事も必要である。リスニングは日本人学習者にとって最も難しいと考えられる中、シャドーイングは効果的なリスニング訓練法として 15 年程前から注目されている。故に、本研究では英語の多様性をシャドーイング訓練に取り入れる事が効果的かどうか、国際的志向性とリスニングカ伸長に関連が存在するかどうかを調査した。47 名の国立大 1 年生が研究に参加し、うち 23 名は教育系・保健系の学生で残り 24 名は工学系の学生である。様々な英語話者のインタビューが収録された CD を教材として用い、8 回の授業を行った。分析結果によるとシャドーイング訓練はリスニングカ育成に有効であり、またリスニングカと国際的志向性の高い学習者には関連がある事が分かった。

  • 山本 成代, 臼倉 美里
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 127-146
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、コミュニカティブな授業を実践しながら文法指導も効果的に行えるディクトグロスという学習活動に注目し、それを学習者のレベルに合わせて活用できるようにした実践例を紹介する。ディクトグロスとは、学習者にまとまった短い文章を読み聞かせ、学習者がメモを取り、そのメモをもとにグループで元の文章を復元していく活動である。学習者のレベルに合わせて教材や手順を修正していくことにより、より効果的に4技能を統合的に学習させることができる。学習者のレベルによって、ディクトグロスから得られる「気づき」の種類も変わってくることが、5 つのレベルの違ったクラスでの実践によって明らかにされた。レベルの低い学習者でも使用教材の工夫により、文法項目への「気づき」が多く見られ、自己をモニターするというディクトグロスの目的も達せられることが明らかになった。また、上級者レベルでは、メモ取りなどのストラテジー的な面での「気づき」が顕著となり、ディクトグロスを継続して行うことによって、学習者のメタ認知能力の育成にも期待ができることが示唆された。

  • Politenessを中心に
    豊倉 省子
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 167-187
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    言語を人に何かを伝えるというコミュニケーションのための道具と考えた場合、どれだ け言語に関する知識を積み上げても、それによって何が伝えられるのかという点に着目しなければ、言語教育としては片手落ちだ。英語の知識を実際のコミュニケーションで使いこなしていくためには語用論的知識が欠かせない。なかでもポライトネスの概念は重要である。ところが現在の英語教育の場では、指導時間の不足など、さまざまな原因によってポライトネスについて学ぶ機会はごく限定的なものになっている。そこで本稿では、大学生を対象に Brown & Levinson (1987) の提案するポライトネス理論を枠組みとして、映画および字幕翻訳を使ってポライトネスについて学ぶことを提案し、それによって言語教育にどう貢献できるかを議論する。

  • 吉田 国子
    原稿種別: 研究論文
    2012 年 2 巻 1 号 p. 189-200
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    理論上の自己調整学習モデルでは、学習者は自己の学習の全過程をモニターし、適切な修正を試みながら学習を進めていく。ところが、近年の大学生の中には自分の力でその循環をうまく回していくことができない者が多い。適切な目標設定ができない、自己学習活動を適切にモニターできない、失敗の原因を適切なところに求めることができない等の問題を抱え、結局、学習の輪からドロップアウトすることなる。本研究は、そうした現状を踏まえ、自己調整学習理論に拠って学習者が記録した learning log (学習記録) の分析を通し、学習者が困難を抱える場面を抽出することを目的としている。対象者は大学 1~2 年生 106 名で、分析にはテキストマイニングアプリケーションである KHCoder を使用した。習熟度別に分析をした結果、初級学習者グループでは自己省察、学習活動のモニターに、また、初級、中級学習者グループどちらも、学習活動の遂行コントロールの段階に問題があることが示唆された。

実践報告
  • 是恒 孝子
    原稿種別: 実践報告
    2012 年 2 巻 1 号 p. 147-166
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    「メモからのフルメッセージ復元練習による言語産出訓練」は通訳訓練の中で行われている訓練法をもとにしているが、この訓練法が一般の大学生に対しても応用可能か、また応用できるとすればどのような効果が期待できるかについて検証することを目的に、英語を専門としない大学2年生 35 名を対象に 15 週間のパイロットスタディを行った。学生は、インプット段階で十分に学習済みの英文テクストを使って、その内容のメモ(スケルトン)を見ながらオンラインで口頭で原文を復元することが求められた。実験期間前後に行ったプレテストとポストテストの結果から、ほとんどの学生に文構築能力の伸長の可能性が示唆された。また、このトレーニングに対する学生の感想は概ね好ましいものであり、自己効力感もあったことが伺える。この結果から、この訓練が Swain の Output hypothesis の理念に沿った訓練法であり、Levelt の言語産出モデルの観点からは言語産出プロセスの文法符号化の機能強化に強く働きかける可能性があることを論じる。

  • 英語教員の現職教育を中心に
    木村 友保
    原稿種別: 実践報告
    2012 年 2 巻 1 号 p. 201-216
    発行日: 2012/08/20
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は、時事英語のトピックを使ってライティングを教える中で、教師が生徒に提供するフィードバックの意義について行った論考である。特に、筆者が過去9年間にわたって高校教員の現職教育に携わってきたため、教員研修の中で受講生に書かせたライティング指導の中での経験に関連づけて考えたものである。フィードバックの効果に関してはFerrisとTruscottの議論が有名であるが、この論文ではその議論の原点と言うべき(1995 年のFerrisと1996年のTruscottの)論文を取り上げた。まず両者の論文の類似点と相違点を検証した結果、両者とも学習者の学習過程の向上に情熱を傾けていることがわかった。違いはそれぞれの調査または研究の成果の捉え方にあった。次に日本の教育現場で行われたライティング指導の実際に基づく研究2つを検証した。その結果は、両方とも研究対象となっている学習者の学習過程には十分な配慮がされていないことが判明した。最後に、最近のフィードバック研究から学習者の学習過程により多くの注意が向けられたものを概観し、それを2011年度筆者が関わった教員研修の一事例に当てはめてライティングおよびライティング指導について考えてみた。

feedback
Top