罵り言葉に関する先行研究の課題の一つは,所謂罵り言葉の定義付けが定まっておらず,分析対象となる表現が一定していないことである。また,Jay (1981), Jay and Janschewitz (2008), Beck (2009), Fin (2017)などをはじめとする多くの先行研究では,fuck や shit あるいは bitch のような使用頻度の高い典型的な表現をまとめて扱っているものが多く,個別の表現の意味や用法に焦点があてられることが少なかった。このような背景を踏まえ,本稿では,先行研究では充分に取り上げられてこなかった罵り言葉として crap 及びこれを含む定型表現である cut the crap に注目し,大規模コーパスである Wordbanks Online を用いて語法分析を行った。コーパスから抽出した言語データ及び使用したコーパス検索式(CQL)を提示し,shit などのシノニムと比較しながら,話し言葉における crap 及び crap を含む定型表現の用法上の特性について考察した。
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