日本インテリア学会 論文報告集
Online ISSN : 2435-5542
Print ISSN : 1882-4471
27 巻
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  • ロボットと共生する生活空間の計画技術に関する研究(2)
    太田 俊, 渡邊 朗子
    2017 年 27 巻 p. 1-5
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論では,実験の結果より次の事が明らかになった。 一つ目は,廊下空間において人間に心理的な面も含めて何らかの影響がでてくる廊下幅は,日本人と留学生の実験パターンごとに比較してもあまり差が見られなかった1.5m 付近と考えられる。国籍別でロボットからの影響よりも,周辺の空間からの影響に変化する境界が隠れていると思われる。 二つ目は,アンケート結果より,日本人成年男子は,ロボットの大きさ,廊下幅から空間の情報を捉えようとし,留学生成年男子は,ロボットの大きさ,ロボットの移動経路,見た目の情報から捉えようとする傾向があることが分 かった。
  • 齊藤 哲也
    2017 年 27 巻 p. 7-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ミラノ市郊外に残る産業遺産に着目し,工場建築の住居利用の可能性について明らかにするものである。保存登録された工場建築の再利用は,地域再生の核として期待され,なかでも住居利用は,居住者にとって魅力ある柔軟な保存活用が求められる。本研究で取り上げた旧マルティネンゴ・ニット工場建築の再生事例は,保存を前提にしつつも,居住者にとって自由度の高いコーポラティブ方式を採用し,民間資金による旧工業地域の住宅地転換という試みが特徴である。工業地域の周辺環境の把握から,工場建築特有の不規則な配置計画および空間特性を把握し,家族世帯の内部改修の実態調査により,中二階やドーマーを用いた住居スペースの平面計画や屋上テラスの増改築について明らかにした。現地調査による詳細な内部構成の把握を通して,所有エリアが柔軟に区分できるコーポラティブ方式による工場建築の保存活用の適性について考察した。
  • 藤井 容子
    2017 年 27 巻 p. 11-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ケア単位が異なる知的障がい児入居施設の重度障がい児の居室における内装材等の保全状況の調査をもとに,重度障がい児の特性に対する建築的アプローチの分析・考察を通して,今後の知的障がい児入居施設の居室デザインに生かされる知見を提供することを目的とする。 その結果,居室保全のアプローチにおいては,①安全性の確保への対応として,内装材の強度を増すこと,破損個所を隠すこと,内装材を交換することが,②問題行動への対応として,児童への刺激を減らすこと,児童の問題行動を予防すること,児童の関心をそらすことがなされ,汎用性・融通性等のあるデザインや強度・衝撃吸収性のある内装材の必要性が明らかとなった。
  • 江川 香奈, 木村 敦
    2017 年 27 巻 p. 17-24
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    病棟の食堂では,病状等から車いすの使用や移動式点滴台の保持など移動困難な患者による利用が多い。このため一般的な食堂とは異なる建築・インテリア計画が求められ,これらを明らかにすることで利用率の向上,ひいては患者の病状の早期回復の促進に繋がるものと考えられる。そこで本研究は,①車いす使用の有無など属性別にみた患者の病棟の食堂利用に対する評価,②現状の食堂の利用内容を明らかにすることで,今後の病棟の食堂を整備するための建築・インテリアに関する指針について検討が必要な事項を考察する。
  • 平成26年8月豪雨による広島市土砂災害において
    小原 太樹, 平田 圭子, 橋本 和幸
    2017 年 27 巻 p. 25-30
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,災害発生時の体育館など大空間の避難所において,被災者が避難生活空間をより有効に活用できるよう,「個人スペース」と「共用スペース」の関係をもとに災害時の状況に応じた避難所空間構成の指針を明らかにする事を目的とし,次のことが得られた。 ①災害発生時の状況に応じて以下の構成パターンを使い分けることが有効である。整頓型「SC」は共用のスペースを広く設けやすい等の特徴がある。混在型「SC」は避難所内コミュニティがより形成されやすい等の特徴がある。 ②構成パターンを使い分ける基準は災害の種類や避難者の属性によって判断することができる。幼児程度の子供が多い地域や,後の避難者増加が見込める災害等の避難所では整頓型「SC」が有効であり,休日の日中を避難所で過ごす割合が多い場合等では混在型「SC」が有効である。
  • 武田 美恵
    2017 年 27 巻 p. 31-36
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,キャビネットを土色に塗装し,土と木材で制作した化粧パネルにより側面を囲われた自販機と飲料メーカーが通常使用する自販機を並べて設置し,購買量にどのような違いが表れるかを明らかにする。また,土壁化粧パネルの設置により日射の影響による自販機のキャビネットの温度上昇を軽減できるかどうかを,キャビネット側面付近の気温計測から検証する。化粧パネルは,周囲の自然環境の色彩との調和と版築壁が持つ自然性のイメージを意識しながら制作した。実験結果は次の通りである。1. 日中,化粧パネル側面付近の気温は,通常の自販機よりも低く抑えられ,自販機のキャビネットの温度上昇を抑制する効果が示唆された。降水後,化粧パネルの含水により気温上昇が抑えられた。2. 夏季から冬季にかけての購買量は,どの月も化粧パネルを設置した自販機が通常の自販機を上回ることはなかった。
  • 広島県呉市豊島小野浦集落を事例として
    藤井 容子, 釜床 美也子
    2017 年 27 巻 p. 37-42
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,離島漁村集落における屋外での滞留の場の空間構成と滞留の実態を整理し,地域住民の交流を促す空間づくりのための有用な知見を得ることを目的として,集落の実測調査とともに,滞留者のマッピング調査やヒアリング調査を実施した。 その結果,滞留の場は人通りが多く開放的な湾岸部に多く分布し,住民自らによる手作りベンチに座っての会話が中心であることがわかった。また,路地との距離等の空間構成によって,暇つぶしを目的とする「たまり場」と用事ついでの移動者と滞留者とが交流する「ついでの場」に分類することができた。 このように,住民自らの手で路地周辺の空間構成に適した過ごし易い環境をつくりあげ,過ごし方を選択できる点が,小野浦集落における地域住民の交流を促す空間づくりの特徴であることを明らかにした。
  • 「雲伴居」書斎の構想過程に着目して
    羽藤 広輔
    2017 年 27 巻 p. 43-46
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,白井晟一(1905−1983)の木造住宅にみる付柱の意匠について,「雲伴居」(1984)の構想過程に着目しながら,その特徴を考察するものである。「呉羽の舎」に見られるように,付柱は白井の木造住宅において重要な要素であると捉えられてきたが,その構想過程に着目した研究は,いまだ見られない。「雲伴居素描」スケッチを用いた研究の結果,書斎西面の構想において,アーチ型出入口まわりの左右対称性の重視,古典を参考とした火床上収納まわりの構成,平面計画上の意図等,それぞれの意匠上の要求について,これらを統合して実現しようとする検討の中で,付柱が採用された過程を明らかにした。
  • 井上 翔太, 谷川 大輔
    2017 年 27 巻 p. 47-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年3月11日の東日本大震災以降,今後の公共建築 の在り方について様々な議論がなされており,特に生活に 最も密着した集会の場である地域集会施設は,公共建築と 地域との関係を再考する議論の中心にあると言える。その ような状況の中で,今後の地域集会施設を設計する建築家 は,さらに地域との関わりを具体化することが求められる と考えられる。しかし,これまで現代の地域集会施設を設 計する建築家が,地域との関係をどのように考えまた具体 化してきたかといった思考の総体は曖昧であると言える。 したがって本論では,現代日本の建築家の地域集会施設の 設計論の中から,地域と関わりをもつ主題を抽出し,さら にその主題の具体化を領域的に分類整理すること(地域と の接点領域の分析)で,建築家の地域における社会的枠組 みに関する思考の一端を明らかにしている。
  • 遺構からの検討
    千森 督子
    2017 年 27 巻 p. 55-62
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    紀州徳川家の下屋敷であった湊御殿は屋敷構成の全貌が明らかではないが,明治時代初期に多くの建物が取り壊される中,一部,寺院や個人住宅に移築された。その遺構が和歌山県内に現存する。本稿では,遺構から室内意匠について検討する。 その結果,残された建物は数寄屋造風の箇所もみられるが,基本的には書院造りの格式的な造りである。柱には上質の栂材を使用し,襖や杉板戸に紀州藩のお抱え絵師による花鳥画などが描かれ室内を飾るものもある。床の間をはじめとした座敷飾りの質も高く,中には規模の大きなものもある。また,襖の引手などに紀州徳川家の葵の紋が付けられており,ゆかりの要素が随所にみられ,一般民家とは趣が大きく異なる。湊御殿の全貌が明らかではないために,各建物を特定するに至らないが,規模も室内意匠も違うために,湊御殿のなかでも異なる用途の建物であったと考えられる。
  • 髙橋 浩伸, 森永 智年
    2017 年 27 巻 p. 63-66
    発行日: 2017年
    公開日: 2022/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,竣工以来,利用者からわかりづらいと意見が寄せられていた公共施設の1階ロビーにおけるサイン計画に関する調査報告である。本研究では,増設されたサインの多さから竣工時のサイン計画に着目し,個々のサインに関して現地測量調査を行い,文字・記号の大きさや色の対比といった表現様式と情報内容の調査・分析を行った。その結果,視距離に対するサインの文字高の大きさの不足や,表示板と文字・記号の明度差不足という問題点等が抽出でき,いくつかのサインに関して改善するポイントを見出せた。
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