現代監査
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2018 巻, 28 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 弥永 真生
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 12-20
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    会計監査人制度は株主保護のみならず会社債権者保護を主要な目的として導入されたが,徐々に,株主保護の観点からの意義が高まり,現在では,コーポレート・ガバナンスの改善の観点から重要な役割を果たすことが期待されている。社外取締役の導入の実効性を確保するためには,計算書類等の信頼性を確保する必要があるが,会計監査人監査は計算書類等の信頼性を確保しようとするものである。また,監査報告書に監査上の主要な検討事項を記載することを要求することには,単に,株主や投資家または会社債権者への投資または与信に役立つ情報提供にとどまらず,コーポレート・ガバナンスの改善に資することが期待されている。

  • ― 監査人のインセンティブに着目して
    越智 信仁
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 21-29
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,近年,見積りの不確実性を逆手にとる経営者関与の不正の手口も目立ってきている状況下,そうした不正に伴う重要な虚偽表示を見逃さない深度ある監査の実現に向け,監査人のインセンティブに着目した制度改善の視点を提供することにある。まず,懐疑心の発揮状況に係る監査人と株主等のエージェンシー問題として,KAM(監査上の主要な検討事項)開示が情報の非対称性解消に資するシグナルとなることを起点に,監査人への開示規律とともに会社にも事前的牽制機能を発揮し得ることを論じる。次に,見積り等に紛れた不正の疑義を監査人が解明していく過程で,経営者と対峙して手続を進める必要が生じた場合に,その足枷となりかねないホールドアップ問題を採り上げ,不完備契約に伴う問題状況の改善に向け,変動報酬契約や監査役等の報酬決定権,金融商品取引法193条の3に係る法令要件明確化,セーフハーバー・ルール導入等の必要性に論及する。

  • 中村 元彦
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 30-36
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    会計監査において,ITの利用はすでに一般的となってきている。例えば,CAATを利用した仕訳テストなど,精査的な手法での利用は広く実施されているが,定型的な業務が中心である。見積りの監査へのITの活用は,貸倒・賞与引当金などの見積りの不確実性に関して,客観的な評価方法やデータが利用可能で主観性が少ない場合は実施されているが,繰延税金資産の回収可能性など主観性が強い場面におけるITの適用は,必ずしも深い利用に至っていない。

    AI(人工知能)などの技術を監査においても取り込むべきであり,特に主観性が強い場面において,監査人の判断に資する情報を提供することは有用である。また,過去データ,外部データ,非財務情報の活用も有用である。さらに,監査のリアルタイム化と監査における付加価値の提供も実現可能と考える。但し,被監査会社から提供される情報の信頼性,被監査会社におけるITの活用状況,データの標準化と守秘義務の問題が課題となっている。

  • 岡野 泰樹
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 37-48
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    本稿は,国際統合報告評議会(International Integrated Reporting Council: IIRC)のパイロットプログラム参加企業が公表している保証報告書をサンプルに,統合報告書に対する保証業務の実態を調査・検討するものである。検討の結果,統合報告書に対する保証業務では,①保証命題として統合報告書の作成プロセスが重視される可能性が今後強まりうること,②評価規準としての『国際統合報告フレームワーク』の利用は限定的であり,保証範囲・保証水準の拡大・向上と関連して,他の評価規準の利用や,新たな評価規準の開発を検討する余地があること,③先行研究で指摘されてきた,会計士と非会計士による保証業務の明確な特徴の差の縮小による,利点・欠点を考慮する必要性,が指摘される。

  • 武田 和夫
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 2018 巻 28 号 p. 49-56
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    日本監査役協会が公表した『監査役等と内部監査部門との連携について』と題する報告書において,内部監査人を実質的に監査役の補助使用人とする提言,とくに会社が内部監査人を監査役の補助使用人とする決定をしていない場合であっても,監査役が内部監査人に対して報告徴求権や財産調査権の行使の名のもとに調査を指揮・命令できるようにすることが含まれていることは不適切であると思われる。すなわち,この提言に従うと内部監査人が監査役の実施すべき監査を代行することになりかねず,監査役に与えられた報告請求・調査権の濫用が懸念される。

    また,内部監査は内部統制システムの一環であり,その方針の決定については取締役会の専決事項である。監査役は,取締役の職務の遂行状況の監査を行うのであって,内部統制システムの整備・運用状況は監査の対象である。監査役補助使用人として内部監査人を指揮・命令して使用している間,当該内部監査人は内部監査業務を行うことは適切ではなく,一般的にはその間執行側から独立させ,その指揮・命令系統から外れる。このため,当該内部監査人は内部監査業務を実施できず,したがって内部統制システムの整備・運用状況は改善される機会を失う。これは,監査役が取締役の職務の執行を妨げているように見えることから,内部監査人が監査役補助使用人を兼任することは不適切と思われる。

  • 丸山 恭司
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 57-68
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    自治体では不正経理が忘れた頃に発覚し,監査の実効性が問われてきた。自治体監査の実効性向上の一方策として監査業務の外部委託や共同化がある。わが国の都道府県,政令指定都市および中核市に対して監査組織の実態,外部委託および共同化の現状についてアンケート調査をした。監査組織については,民間企業の内部監査部門に比較して同等の人数が監査委員事務局に配属されていた。だが,監査実務経験年数が3年未満の監査担当職員が多く,会計や監査に係る専門的資格の保有者が少ないことが明らかとなった。外部委託については,公共工事の工事監査を外部委託する事例は,多数確認されたものの,会計専門職や監査法人に財務に関する監査業務を委託する事例は少なかった。共同化については,ほとんどの自治体で検討すらなされていないことが明らかとなった。自治体の会計基準や監査基準を民間企業に適用されている会計基準や監査基準に近づけるなどの環境整備,国からの財政的・技術的な支援が重要となる。

  • ─ 監査証明書の長文化に向けて
    小松 義明
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 69-80
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/08/17
    ジャーナル フリー

    ドイツ監査報告制度においては,企業内部向け長文報告書と外部向けの監査証明書である確認の付記という2つの報告書がある。本稿は,確認の付記を考察の対象として,EU規範と国際監査基準(ISA)の最近の動向が確認の付記に与える影響を示す。その目的は,監査上の主要な検討事項(KAM)の導入に関する対応状況から顕在化するドイツ監査報告制度の特質の解明にある。監査報告制度のEU規範とISAへの適合は,ドイツ商法上の年度決算監査の現実化と国際化をもたらした。一方,公共の利益にかかわる企業(PIE)の確認の付記に導入されるKAMの報告は,Non-PIEには適用されなかった。Non-PIEの場合のKAMに関する情報は,内部用長文報告書において考慮すべきとされたのである。

    以上から,確認の付記の長文化をもたらすKAM導入に関する考察において,現実化と国際化を特質とする制度的対応がみられる一方で,コーポレート・ガバナンス構造を背景にした内部用長文報告書の意義が確認される。ここにドイツ監査報告制度の顕著な特質を見出すことができる。

  • 佐久間 義浩
    原稿種別: 研究論文
    2018 年 2018 巻 28 号 p. 83-103
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/07/03
    ジャーナル フリー
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