現代監査
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2021 巻, 31 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 学術界と実務界の連携に向けて
    異島 須賀子
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 14-20
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    本稿は,2020年8月2日に桃山学院大学主催で開催された第43回西日本部会の統一論題について,「監査人のローテーション―学術界と実務界の連携に向けて―」という統一論題テーマを設定した背景と目的を明らかにしたうえで,3名の報告者の指摘事項等と討論会での議論を紹介し,本部会で得られた知見や学術界と実務界の連携のあり方について考察したものである。

  • 浦崎 直浩
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 51-58
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    本稿は,会計リテラシー教育を初等教育から高等教育へどのように展開すればよいのかという問題について,とくに大学初年次会計教育に焦点を当て,その目的と方法について検討したものである。身の回りに生じている現象や出来事を数で表現し,それを分類して,加減乗除の手法を用いて,計数的結果を得るという手続(写像行為)が,初等教育において体系的に教授されている。かかる会計基礎教育を大学初年次会計教育につなげ,会計リテラシー教育として実践するためには,会計教育を教養教育として位置づけ,会計の主体にインテグリティに基づいたアカウンタビリティが求められ,それが社会のリライアビリティ(信頼)を導くことを共通認識とした会計教育を組み立てる必要があることを論じている。

  • 桂 真理子
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 46-50
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    「会計リテラシー」を社会インフラとして普及させるべく行っている,会計リテラシー教育の現場の実態の紹介とその効果,課題解決のための今後の展望について,実施後の定量及び定性アンケートに基づく考察を行った。

    会計リテラシー教育の現場は子ども向けの「ハロー!会計」,社会人向けの会計基礎講座,社会全体向けの「会計リテラシー・マップ」である。それぞれの実施効果として,ハロー!会計では「気づきの機会創出」「利益重視の肯定」,社会人向け会計基礎講座では「会計の入り口の多様化」を挙げている。また,会計リテラシー・マップでは会計と日常生活とを関連付けて体系化している。

    このように有用な会計リテラシー教育を社会インフラとして定着させるために必要な施策とは何か,公認会計士として最前線の現場に携わっている筆者の視点から考察した。

  • 後藤 紳太郎
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 78-88
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    新型コロナ感染症拡大の影響もありKAMの早期適用会社は48社と想定より少なかったが,当初心配されていたボイラープレート的な記載は,少なく監査報告利用者にとって理解を容易にするための工夫がみられるものも多く見られた。

    新型コロナウイルス感染症の感染拡大により会計上の見積りが困難な状況であった会社は,一定の仮定を置き最善の見積り行い,その会計上の見積りの仮定に関して追加情報として記載しているが,その記載は,それぞれの会社の状況に応じた記載を行っている事例が数多く見られた。

    監査人は,情報価値の高いKAMを記載するため,このような記載をKAM記載の参考事例としてベストプラクティスを積み上げていくことが求められている。

  • 日本におけるKAM導入初年度の証拠
    佐久間 義浩
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 3-13
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    2018年7月,企業会計審議会は,監査基準の改訂を行い,金融商品取引法上の監査人の監査報告書において,「監査上の主要な検討事項」(Key Audit Matters: 以下,KAMという)の記載を義務付けた 。KAMの開示については,早期適用も認められ,2020年3月期決算の企業を中心に,日本においてもKAMを確認できるようになった。

    本稿では,まず日本のKAMの早期適用の開示状況を諸外国のKAMの開示状況との比較を通じて概説した。結果は,KAMの個数や領域について,諸外国とおおむね同様であった。次に,日本におけるKAM導入の影響を検証した。その結果,KAM導入企業全体では,一部,有意な差を析出したものの,おおむね影響が認められないことを明らかにした。さらにKAM導入企業の特徴として,監査コストを負担している企業や,指名委員会等設置会社を選択している企業,IFRS適用企業である可能性が高いことを指摘した。

  • 柴 健次
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 43-45
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー
  • 具体的交代理由に焦点を当てて
    酒井 絢美
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 21-32
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    近年では監査事務所の交代理由の具体的な開示が増加しつつあり,「新たな視点(fresh looking)」や「監査継続期間が長期にわたる」ことを理由に監査事務所を交代しているケースも散見された。そこで本稿では,当該ケースを監査事務所のローテーションと捉え,その特性について検討を行った。その結果,内部留保の蓄積が大きい企業ほど監査事務所のローテーションを実施する傾向にあることを示唆する証拠が得られた。また,2019年の制度改正を受けて,監査事務所のローテーションを監査事務所の交代理由として挙げるケースが有意に増加していることも確認されたが,機関投資家の持株比率が大きいほどローテーションを実施することを示唆する証拠は得られなかった。本稿の結果は,現在議論の渦中にある監査事務所のローテーションに関して1つの証左を提供するものである。

  • 小林 麻理
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 70-77
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    本稿は,会計の機能と目的が,社会を構成するすべての組織に適合すること,しかも社会経済活動の総体は,政府を含むさまざまな組織の経済活動の有機的なつながりによって機能しており,さまざまな組織,主体相互の社会的関係性の中では,アカウンタビリティが重要な意義を有することを論じて,会計自体が社会の基盤であり,それゆえ,会計教育そのものが社会インフラと位置付けられなければならないことを強調する。

  • 浅野 信博
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 33-42
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    一般に,何らかの規制設定を行う際に,学術界によって提供された証拠は数ある判断材料の1つとして重視されるべきと考えられる。しかしながら,規制設定者によるリリースの多くには,学術界によって蓄積された事実解明的研究(Positive Research)について一切触れられていない。

    本稿は,監査研究における学術界と実務界の連携のあり方および具体的方策について,さまざまな研究アプローチの観点から検討を行うものである。本稿で慎重に検討した結果,①これまでにわが国において研究者と実務者が共同して執筆した学術論文は極めて少ないこと,②実務界の協力が得られた場合にはわが国における監査論領域の研究機会が飛躍的に高まること,③学術界と実務界(および規制設定者)との間には監査研究に対する深刻な情報の非対称性が存在し,これを緩和するための方策が学術界にとって肝要であること,がそれぞれ判明した。学術界と実務界の連携の促進は,監査論研究の一層の発展をもたらすだけではなく,実務および規制設定に資する理論および証拠を提供できる可能性を高めるであろう。

  • 北山 久恵
    2021 年 2021 巻 31 号 p. 59-69
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2022/01/22
    ジャーナル フリー

    ビジネスの現場で会社経営や経済活動を理解するには,会計&ファイナンスの知識が必要である。会計とビジネスを結びつける「会計思考力」(会計の数字を使って,経営の現実を読み解く力+現場を変革する力),ファイナンスとビジネスを結びつける「ファイナンス思考力」,さらに近年は,非財務情報の重要性が増しており,経営戦略,リスク管理,コーポレートガバナンスなど経営全般に関する総合力が求められてきている。

    我が国の企業の競争力を高めるために,国民の会計リテラシーを向上させ,会計思考力・ファイナンス思考力を高め,会計&ファイナンスと経営を結びつけて経営全般を扱えるような会計人材を育成していくことが求められる。日本公認会計士協会においても,小学・中学生向けの会計基礎教育や社会向けの会計教育に力を入れており,さらに社会からの高まる期待に応えるため,これからの公認会計士に求められる資質の再定義,研修体系の見直しを行っている。日本公認会計士協会・実務補習所,監査法人などの監査現場,企業,教育機関等との連携がますます重要であり,会計人材の育成・確保のための教育や研修など施策を検討し実施していくことが必要である。

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