現代監査
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2010 巻, 20 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 不正への対応を意識した監査の要点
    甘粕 潔
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 26-34
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    日本公認会計士協会が財務諸表監査における不正への対応指針として示した監査基準委員会報告書第40号は,「不正リスク要因」すなわち「不正に関与しようとする動機やプレッシャーの存在を示す,又は不正を実行する機会を与える事象や状況」の識別を重視している。不正リスク要因は,米国の犯罪学者クレッシーによる横領の発生要因に関する仮説に基づく概念である。クレッシーの仮説は,横領は信頼に背く行為であり,不正リスク要因は個々人の主観的認知により生じるなど,監査人が不正への対応力を高めるうえで有効な示唆を与える。不正は意図的に隠ぺいされ,その発見は容易ではない。そのため,不正対策の要点は,的確なリスク評価に基づく未然防止にある。監査人は,不正リスク要因の理解に裏打ちされた想定力・察知力・質問力を高めるとともに,不正防止・発見への対応強化に向けて,他の関係者との連携をより積極的に図らなければならない。
  • 松井 隆幸
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 35-43
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    現代の内部監査では,リスクマネジメント,コントロールおよび組織体のガバナンスの各プロセスの有効性の評価および改善提案が主たる役割とされ,不正の防止や発見は,主たる役割として明示されてはいない。しかし,内部監査人が不正の防止や発見に一定の責任を果たさなければ,主たる役割も達成されない。本稿では,主として内部監査人協会による「内部監査の専門的実施の国際基準」に基づき,不正に対する内部監査人の責任について検討し,コントロールに不正防止プログラムが組み込まれ,有効に機能しているかを評価し,改善を提案する役割を果たすべきことについて論述した。これを受け,その責任を果たすために内部監査人にとって必要な能力・経験および他の監査との連携について論述した。
  • 松本 祥尚
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 44-53
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    昨今の監査現場で生じている疲弊の現れとして,独立性規制に対する反応により,監査人が指導機能の発揮を躊躇し,適正な財務諸表の開示というディスクロージャー制度の趣旨を達成できていないという情況がある。本稿では,このような独立性に対する反応が,理論的にも法制度的にも不合理であることの論証を目的とする。そのために伝統的に監査の機能とされる批判機能と指導機能の内容を把握し,監査意見との関係で前者が後者に対して本源的でかつ優越的な位置付けであることを確認する。その上で批判機能と指導機能の2つの機能を前提にした場合には,監査人による指導は事後的に監査意見によって追随されることから,自己監査の可能性,すなわち独立性の侵害可能性,が検討されるべきことになる。そこで,監査人が監査過程において発揮し得る指導機能を付随的指導機能と建設的指導機能に区分し,それぞれの発揮が自己監査に陥る可能性のないことを論証する。
  • 大橋 博行
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 54-61
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    会計上の見積りや予測がますます重要な課題となっている環境下で,会計不正を未然に防止し,適正な財務情報であることを担保するためには,監査役,内部監査人,会計監査人の3監査主体に経営者を含めた4者の相互連携が不可欠である。連携を適時・的確に行うためには,日常から監査主体間の双方向のコミュニケーションとその前提としての用語・概念のベクトル合わせも必要である。会計監査人の選任議案や監査報酬の決定権に係る「インセンティブのねじれ問題」は対外向けには分かりやすいが,現行の監査役の同意権でも十分であり,監査役(会)が同意権を適切に発揮していないことの方が問題である。内部統制報告制度において,監査役としては,「監査役のねじれ現象」と「期ズレ問題」が懸念されたが,適用初年度においては,いずれも大きな問題となることなく終わった。しかし,「期ズレ」問題は会社法・金商法の監査の一元化による抜本的な解決が必要である。
  • 小野 行雄
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 62-69
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    内部統制報告制度による初年度の内部統制監査が終了した。本稿は,内部統制監査の現場における経験と課題を報告することを目的としている。内部監査人の作業の利用は,特に業務プロセスに係る内部統制のテストの領域で期待が大きい。内部監査のさらなる利用が,内部統制報告制度の充実のため必要であるが課題も多い。監査の実効性を上げるために監査役又は監査委員会と監査人の連携が重要であり,会社法および金融商品取引法の中での監査役又は監査委員会の内部統制の枠組みを同じにするなどの再検討が必要ではないかと考える。日本公認会計士協会は,金融担当大臣に金融商品取引法と会社法に基づく監査制度の一元化の検討を要請している。重要な欠陥が存在した企業の割合は,2009年3月期決算会社2,670社のうち56社(2.1%)にとどまり,日本の内部統制報告制度は,先行した米国の制度を参考に円滑な導入に努力が払われた結果ではないかと考えられる。
  • 別府 正之助
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 70-78
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    財務報告に係る内部統制評価・報告制度が一段落した今,内部監査部門は「経営に役立つ内部監査」を目指してどの方向に進むべきかを改めて考える時である。内部監査部門長は,CEO と監査役を味方に付けるためにあらゆる努力を重ねるべきである。CEO直轄組織として,CEOの全面的なサポートを得ない限り,PDCA経営の重要なツールとしての役割は果たしがたい。監査役(会)とは,立場の違いを十分理解したうえで,徹底して連係を図り,力を合わせて「経営を監視する」機能を発揮しなければならない。監査の品質を向上させるためには,自己流の監査から体系的で規律のある監査にレベルアップする必要がある。そのためには,自社に閉じこもらず,外部との交流,外部機関からの品質評価受け入れなどに積極的に取り組むことが肝要である。
  • 奥西 康宏
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 79-88
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿は,国際会計士連盟の国際監査・保証基準審議会が,2008年2月に公開した国際監査基準第540号について,特に「見積りの不確実性」の内容と役割を分析したものである。筆者は,結論として,「見積りの不確実性」は,この基準では,簡単な定義と例示および影響を与える複数の要因の指摘によって説明されているにすぎないが,リスク評価手続において,重要な虚偽表示のリスクの代理変数としての役割を果たしていることと,特別な検討を要するリスクのある見積りに対する追加手続において,監査上重要な検討対象としての役割を果たしていることを示した。「見積りの不確実性」は,実務上どのような影響を与えるかについては,現時点では判断できないが,今後の見積りの監査手続の軸となる概念であると見られる。
  • 島 信夫
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 89-98
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
  • 島田 裕次
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 99-109
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    内部監査は,組織体に付加価値を与えることを目的するアシュアランス活動及びコンサルティング活動である。付加価値を与えるためには,リスクマネジメントや業務管理などが一定水準にあることを保証するだけでなく,リスクマネジメントや業務管理などが企業目標の達成につながるように向上させるための監査を実施することが重要である。有益な改善勧告を行うためには,社内規程や業務マニュアルなどに基づいて作成したチェックリストに従って,問題点の発見,原因究明,改善勧告という手順で監査するだけでは十分ではない。リスクマネジメントや業務管理の「コンポン」に立ち戻って,リスクマネジメントや業務の目的は何か,目的を達成するためのあるべき姿は何かを検討して,改善勧告を行うアプローチが必要になる。このアプローチがブレイクスルー思考である。本稿では,ブレイクスルー思考を用いた内部監査アプローチの適用可能性について検討する。
  • 髙田 知実
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 110-121
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    本稿では,監査報酬と監査環境の変化がゴーイング・コンサーン(GC)の開示に及ぼす影響を実証的に分析する。近年,監査報酬の多寡や監査環境の変化が,監査人の独立性や保守的傾向に影響を及ぼす可能性が指摘されている。先行研究では,このような問題意識の適否を検証するため,監査人による判断が影響を及ぼす事象と報酬や環境変化との関係が分析されてきた。本稿は日本企業を分析対象とし,報酬の多寡と環境の変化が財務困窮企業におけるGCの開示状況に及ぼす影響を検証した。そして,(1)監査報酬とGCには正の関係があり,(2)監査環境変化の前後でGCの開示頻度は変化していない,という検証結果を得たのである。これらの結果は,(1)報酬の多寡が監査人の独立性に影響を及ぼし,その結果としてGCを開示しないという関係はない,および(2)環境の変化が監査人の保守的傾向に影響を与えない,ことを示唆している。
  • 田中 智徳
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 122-132
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
    わが国の「監査基準」等は財務諸表監査の意義と役割,および,かかる監査に対する監査人の役割と責任について検討することを求められたことに起因して,昭和25年の制定以来,複数回にわたり改訂が行われている。これらの改訂の歴史を振り返ると,監査人の主たる役割は財務諸表の適正性に関する意見を表明することであり,不正の摘発,発見は副次的な役割であるとの認識ないしは理解については,次第に変化がみられる。そこで,本稿では,20世紀末にいたるまでのわが国の「監査基準」等の改訂の内容を検証し,不正に対する監査人の役割に関しての課題を明らかにすることとする。なお,21世紀に入ってからの「監査基準」等の改訂では,国際的対応も念頭に,20世紀までの「監査基準」等に対する理解を一変する状況がみられることから,本稿での対象とせず,別途,研究することを予定している。
  • 小澤 康裕
    2010 年 2010 巻 20 号 p. 133-140
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2016/05/09
    ジャーナル フリー
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