現代監査
Online ISSN : 1883-9533
Print ISSN : 1883-2377
ISSN-L : 1883-2377
2014 巻, 24 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 森 公高
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 17-25
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/08
    ジャーナル フリー

    経済社会のグローバリゼーションは既に始まっており,我が国の公認会計士はその対応が求められている。将来的には,会計士資格の相互承認により我が国企業の海外進出に伴う海外での監査・会計業務が拡大するとともに,海外の会計士が我が国に参入することも想定される。経済の重要なインフラである会計や監査の質の維持,公認会計士,会計事務所,監査事務所の国際競争力の強化が求められることになる。

    このような状況の下,我が国の会計・監査制度,公認会計士制度等の現状を踏まえ,グローバリゼーションによる影響を考察し,今後の経済社会における,これらの制度に対する期待を分析し,公認会計士等の果たすべき役割,会計プロフェッションの育成の在り方,さらに,我が国における公認会計士の行う税務業務の国際標準の在り方について検討を行った。

  • 井上 善弘
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 26-34
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/09
    ジャーナル フリー

    会計プロフェッションの世界のグローバリーゼーションを主導する国際会計士連盟は,「公共の利益」を中心的なイデオロギー装置として,国際監査・保証基準審議会を通して国際的な監査規範の開発とその履行を企図している。ところが,何をもって「公共の利益」とするかについては,各国の文化や社会的な価値観の違いにより異なった解釈がなされる可能性がある。そこで,「公共の利益」を基本理念とした国際的な監査規範を国内規範として組み込む際には,それぞれの国の文化や価値観を考慮する必要がある。グローバリーゼーションの下での監査規範のあり方を考える上で重要なことは,公認会計士が経済社会からの信頼を失墜することなく,財務諸表監査に対する経済社会のニーズにどう応えることができるか,ということである。

  • 鹿島 かおる
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 35-41
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/10
    ジャーナル フリー

    企業活動のグローバル化の進展とITを中心とする技術革新はビジネスに大きな影響を与え,グローバルレベルでの企業再編や協働を促進し,また新たなニーズとともにリスクを生じさせたことで,これまでにないビジネスを生み出している。

    ビジネスの変化に伴って,会計プロフェッションに求められる資質も会計だけでなく,より幅広いものに変化し,必要な知識や情報は加速度的に増加している。

    この状況の中,会計プロフェッションが自ら必要な情報や知識をすべて収集することは困難であり,グローバルアカウンティングファームは業務に必要なナレッジ提供を組織的に行っている。

    また,継続的なサービスの品質向上のため,一方的なナレッジ提供だけでなく,会計プロフェッション一人ひとりがサービス提供の中で新たなナレッジを創造し,それを蓄積,共有する双方向の循環過程をも包含することが必要不可欠となっている。

  • 瀧 博
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 42-49
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/13
    ジャーナル フリー

    財務諸表監査において,大規模な会計スキャンダルが明らかになるたびに,社会的な信頼を回復するため,監査人の職業的懐疑心が重要な問題となりつつある。そこで,多くの研究がこの問題に取り組んでいるが,伝統的な哲学の文脈,あるいは,心理学の問題としている。実際,IAASBも,究極的には心の状態(mindset)の問題としている。

    しかしながら,そのような研究は,法廷での抗弁に耐える理論を展開できない。そこで,本稿では,これまでの形而上学的・心理学的な議論ではなく,論理学,科学としての証明の観点から職業的懐疑心の意義を明らかにする。結論は,①職業的懐疑心が現行の法制度下で財務諸表監査の立証構造に反証を採り入れるための1つのレトリックであること,②当初から職業的懐疑心という名の下に反証を入れた方が,過小決定問題や認知的錯誤の観点からも望ましいことの2つである。

  • 〜不正リスク対応基準の設定を巡って〜
    佃 弘一郎
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 50-59
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/14
    ジャーナル フリー

    「監査における不正リスク対応基準」が公表され,不正についての監査チーム内の討議や情報共有を行うことが求められている。不正リスクに対応するための手法の一つとして,監査チームの構成員間のディスカッションによるコミュニケーションが有効である。また,専門家との連携やグループ監査における構成単位の監査人との連携においても,不正リスクに対応するためにはディスカッションを実施することが望ましい。ただし,専門家との連携や構成単位の監査人とコミュニケーションを図る際には,バックグラウンドの違い,海外の場合には言語の問題や商習慣の違い等の様々な課題がある。

    また,循環取引を発見する手段の一つとして,取引先企業の監査人との連携が議論されている。

    しかし,現実に実施するためのハードルは高いと考えられる。

  • 柴原 啓司
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 60-71
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

     「監査基準の改訂について」(平成25年3月26日企業会計審議会)において,「監査役等との連携」が追加された。これは,「今般の不正リスク対応基準の検討において,不正リスクの内容や程度に応じ,適切に監査役等と協議する等,監査役等との連携を図らなければならない」とされたことによる改訂である。従来の監査基準においては監査役等との連携に関する規定がなかったが,監査における監査役等との連携は,不正が疑われる場合に限らず重要であると考えられることから,監査人は,監査の各段階において,適切に監査役等と協議する等,監査役等との連携を図らなければならないことが明記された。

     監査基準の改訂に際し,企業会計審議会監査部会長を務められた脇田良一先生は,「現行の監査基準の体系は,旧大蔵省,金融庁,日本公認会計士協会,監査実務の担い手により,苦心惨憺・試行錯誤の結果として築き上げられたものである」と述べられたうえで,「思うに,現行の監査基準(企業会計審議会)の規定するところに,新たに加えることは無い」と述べられている(脇田[2012]109頁)。今回の監査基準の改訂に盛り込まれた内容が,結果として「審査」に関する事項と「監査役等との連携」の2つであることを考えれば,監査役等と監査人との連携に関して重要な意義をもつ改訂であると考えられる。そこで,監査役等と監査人との連携についてのこれまでの経緯を振り返りつつ,不正リスク対応基準の設定による影響について考察する。

    また,不正リスク対応基準に新たに規定された,監査人または業務執行社員の交替における引継ぎの品質管理についても考察する。

  • 小西 範幸
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 72-80
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/16
    ジャーナル フリー

    本稿では,現代において保証が不正リスクに対応せざるを得ないそもそもの原因の1つであるリスクの概念に焦点をあて,その情報の開示と保証の意義について検討してみた。

    会計事象はリスクあるいは不確実性を伴うリスク事象であり,当該情報の積極的な開示は,財務報告の枠組みの中で財務諸表以外の情報の開示を求めると同時に,財務諸表との統合開示を要求する。その結果,合理的保証の検討だけではなく,財務諸表以外の情報に対する限定的保証の検討が必要となっていく。

    このように財務報告の対象となるべき情報を考える上では,合理的保証に加えて限定的保証の可能性がいかなる意義を有しているのか,また,限定的保証の限界はどこにあるのかを検討する必要がある。したがって,現在では,財務報告と保証におけるリスク概念の共有が限定的であるとしても,今後に向けてはリスク概念の共有を図っていかなければならない。

  • 秋坂 朝則
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 81-91
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/17
    ジャーナル フリー

    株式会社は,少額の資本を拠出した株主が糾合した会社であり,その業務執行は取締役等の業務執行役員に委ねられている。このことが,業務執行役員による不正行為の遠因となっている。

    このため,監査役等の非業務執行役員が業務執行役員の職務執行の監視・監督をし,業務執行役員による不正を減らす仕組みが株式会社には内在している。また,当該非業務執行役員がその職務を適切に行えるようにするため,業務執行役員からの独立性の確保が図られている。そこで本稿では,非業務執行役員の業務執行役員からの独立性を確保するための規制内容を明らかにするとともに,業務執行役員の不正行為に対する監査役等の職務内容を検討している。そして,監査役等の権限の範囲は広範であるにもかかわらず,監査役等の監督が業務執行役員の不正に対し十分には機能していない理由を検討し,会計監査人等との連携の重要性を指摘している。

  • 〜システム監査を含めて〜
    島田 裕次
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 92-102
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/20
    ジャーナル フリー

    不正リスクでいう不正には,財務報告上の不正,コンプライアンス上の不正,社内規程への違反,情報セキュリティ上の不正など様々なものがあり,内部監査では,組織体の運営に関して発生する多種多様の不正リスクを対象としている。内部監査は,組織体の目標達成に向けて,リスクマネジメントの適切性を監査する役割を担っており,不正リスクを含めて多様なリスクに対するマネジメントの適切性を点検・評価する。

    また,組織体の運営が情報システムを基盤として行われることから,情報システムに関わる不正リスクも監査対象とすることになる。従って,情報システム監査の判断尺度として用いられる経済産業省『システム管理基準』を参照しつつ,情報システムに関わる不正リスクの監査についても検討する。

    なお,不正リスクの監査においては,CAATs(Computer Assisted Audit Techniques:コンピュータ利用監査技法)が監査技法として有効であることから,それについても言及する。

  • 酒井 絢美
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 103-114
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/21
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,監査人の交代という情報の公開が被監査企業の資本市場における評価に対してどのような影響を及ぼすかについて検証することである。本稿で取り上げるのは,株主総会の普通決議を経ず期中に監査人の交代があり,それに伴って一時会計監査人が選任される(期中交代)ケースである。期中交代は,米国にはない日本の監査人交代の大きな特徴の1つであるが,投資家にとってはBad Newsとなる可能性がある。そこで本稿では,累積異常リターン(CAR)を用いて期中交代と通常の交代との比較を行い,期中交代が被監査企業の株価にどのような影響を与えるかについて検討した。その結果,資本市場は通常の交代よりも期中交代についてよりネガティブに反応することを示唆する証拠が得られた。すなわち,期中交代という情報は投資家にとってネガティブな情報価値を有しており,ネガティブな投資行動を引き起こす要因となり得ることを意味している。

  • 松本 祥尚, 町田 祥弘
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 115-125
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/21
    ジャーナル フリー

    わが国の四半期レビューは,国際レビュー基準やアメリカのレビュー基準と同様に,質問と分析的手続を中心としながらも,最終成果として業務報告書が強制されたり,継続企業の前提への対応が求められたり,といったわが国固有の特徴を有している。本研究では,そうした状況の下,わが国監査人が,実際に,いかなる対象項目にどのような手続を実施し,最終的にいかなる程度の保証水準を確保したと認識しているのかについて,四半期レビューの業務実施者である監査人

    (公認会計士)を被験者とする実験的調査を実施した。

    結果として,監査人は,業績の悪い企業では,主に基本的かつ必須の四半期レビュー手続である質問,分析的手続の実施にウェイトを置いているのに対して,業績の良い企業では,四半期レビュー手続を効率化して,実証手続にヨリ多くの監査資源を割いていることが明らかとなった。

  • 任 章
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 126-136
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/21
    ジャーナル フリー

    21世紀監査厳格化の顕著な傾向は,上場企業トップの利益マネジメント傾向と,被監査企業と会計プロフェッションとの癒着傾向に対する,市場監督者のカウンター・バランス政策の結果である。会計プロフェッションのスタンスは,実のところ経済的インセンティブの捻れにより脆くされる。それが故に監査品質とプロフェッションの独立性が脅かされているという危機感が,市場監督者の意識に内在してきた。

    本稿では米国における監査厳格化プロセスの一断面を見通す。その目的で米国ニュー・エコノミー勃興期とされる1990年代を軸に,市場監督者,経営陣と会計プロフェッションのマインドセットの相克状況を考察した。そして会計プロフェッションの自主規制に終焉を迎えさせた往時のSEC委員長アーサー・レビットの言説を手掛かりに,市場監督者とプロフェッションの対峙,会計の政治化プロセスとパワーゲーム,さらには自主規制に対する創造的破壊のプロセスを回顧する。

  • 胡 大力
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 137-148
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー

    本稿では,日本内部統制報告制度(以下「J-SOX」と略す)のもとでの開示情報を用いて監査クライアントの内部統制の質を測定し,J-SOXへの対応で監査法人に依頼したことを監査クライアントがより大きな交渉力を有するとみなし,内部統制の質と,監査クライアントの交渉力が財務諸表の監査報酬(以下「監査報酬」と略す)にどのような影響を与えているかを検証した。検証の結果は,①J-SOXのもとで開示された内部統制の質が監査報酬に有意な影響を与えている,

    ②J-SOXへの対応で監査法人に依頼したことが直接的に監査報酬に有意な影響を与えていない,ただし,③監査報酬の決定要因が監査報酬に与える影響は,それらの企業がJ-SOXへの対応で監査法人に依頼した企業であるかどうかによって異なっている,ということを示した。これらの結果からは,日本における監査リスク・アプローチの適用・運用の実態およびJ-SOXの実施効果に対して証拠を示したとともに,監査報酬に関する研究のあり方に対してもインプリケーションを提示した。

  • 藤原 英賢
    2014 年 2014 巻 24 号 p. 149-165
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2017/06/23
    ジャーナル フリー
feedback
Top