日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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1987 巻, 24 号
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  • 3. サラブレッド種育成馬の行動からみた放牧地形状の得失
    楠瀬 良, 畠山 弘, 市川 文克, 沖 博憲, 朝井 洋, 伊藤 克己
    1987 年1987 巻24 号 p. 1-5
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    育成期の馬の放牧飼養に適した放牧地の形状を知ることを目的に, 面積は同一で縦横の長さの比の異なる四角形の放牧地に育成馬を放牧し, そこでの馬の行動を指標として比較検討を行った. 供試放牧地としてそれぞれ面積が2.4haで縦横の比が1:1のA放牧区, 1:2のB放牧区, 1:4のC放牧区の3面を設定し実験に用いた. 実験には14-16ヵ月齢のサラブレッド種育成馬雌雄6頭づつ, 計12頭を用いた. 雌雄別に6頭を1群とし, 各放牧区に毎日7時間放牧し, 行動観察を行った. 総移動距離は各放牧区とも平均5000m程度で差は認められなかった. 各放牧区でみられた駆歩を転回角度を基準にタイブわけし, 生起頻度を比較したところ縦横の長さの差の大きい放牧区ほど転回角度の大きい駆歩が増加する傾向が認められた. その生起頻度にはA放牧区とC放牧区との間に統計的に有意な差が認められた (P<0.05). また駆歩の停止した地点は, 放牧区の縦横の長さの差が大きくなるに従って放牧区の周辺部にかたよってくる傾向がみられ, C放牧区においては生起した駆歩の半数以上が牧柵から10m以内の地点で停止した. 馬の通過距離からみた放牧地の利用のしかたはA放牧区では比較的均一なのに対して, 縦横の長さの差が大きくなるに従って不均一になった. 以上の結果より2ha程度の放牧地に育成期の馬を放牧飼養する場合, 放牧地の形状は, 安全性ならびに放牧地の利用効率の観点から, 縦横の長さの差が少ないほうが有利であると考えられた.
  • 朝井 洋, 畠山 弘, 永田 雄三
    1987 年1987 巻24 号 p. 6-13
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    わが国の主要な軽種馬生産地である日高地方の採草地土壌および1番刈牧草 (チモシー) の成分について調査した. 調査牧場数は, 日高地方の9地区から抽出した151牧場である.
    土壌pHは, 土質による違いは認められなかったが, 土壌中のカルシウム, カリウム, マグネシウムの各含量は土質の違いによって差が認められた. また, 牧草成分についても, 粗蛋白質, カルシウム, リン, カリウム, 銅の各含量は土質によって差が認められた. 土壌成分と牧草成分間の関係は, 土質によって異なり一定の傾向が認められなかった. 草地管理方法と牧草成分の関係については, 更新後経過年数, 客土の有無, 化学肥料の施用量, 堆肥の投入量, 刈り取り時期の違いによって牧草成分に差が認められた.
    今後, 栄養価の高い牧草を生産するために, 各土質に適した草地管理方法の確立が必要と考えられた.
  • 吉原 豊彦, 及川 正明, 兼丸 卓美, 長谷川 充弘, 富岡 義雄, 兼子 樹広, 上原 伸美, 桐生 啓治
    1987 年1987 巻24 号 p. 14-22
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    臨床的に重度の中枢神経障害を示し, 予後不良のため安楽死され剖検に付された競走馬2例 (サラブレッド種, 雄, 2歳, 繋養地茨城県) の脳において, 出血および軟化巣が認められ, 同病巣から糸状虫 (計3匹) が見い出された。寄生虫学的ならびに組織学的検索の結果, これら寄生虫は形態学的にS. digitataと同定され, 2症例は脳脊髄糸状虫症と診断された。欧米の研究者の中には本寄生虫を他種セタリアと混同する者もおり, ここに2症例の臨床および剖検所見, 寄生虫学的ならびに組織学的所見について報告した.
  • 保存株から分離されたTaylorella equigenitalisの小型および大型集落変異株の性状
    鎌田 正信, 安斉 了, 兼丸 卓美, 和田 隆一, 熊埜御堂 毅
    1987 年1987 巻24 号 p. 23-32
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    保存株から分離されたT. equigenitalisの小型および大型集落変異株について形態学的, 血清学的, 細菌学的性状を調べた. 小型集落変異株は継代中に大型集落を散発的に産生した. この現象はブドウ糖無添加培地より添加培地で高頻度で認められる傾向を示した. 小型集落変異株は隆起した平滑な粘稠性の少ない無色透明な円形集落を形成し発育速度は大型集落変異株に比べて遅く, 培養7日目で直径0.7mm以下であった. 一方, 大型集落変異株は隆起した平滑な粘稠性の強い灰白色から淡褐色不透明な円形集落を形成し, 発育速度が早く, 培養7日目で直径3から5mmであった. 実体顕微鏡による集落形態の観察で, 小型および大型集落変異株は透明度変異においてそれぞれ透明, 不透明変異株と分類された. なお, 今回の実験において両株間での生化学性状の差は認められず, 交叉補体結合および間接血球凝集試験において両株は類似した抗原性を有することが明らかとなった.
  • 池 和憲, 鎌田 正信, 安斉 了, 今川 浩, 熊埜御堂 毅, 中沢 宗生, 柏崎 守, 久米 常夫
    1987 年1987 巻24 号 p. 33-41
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1982年から1986年に, 463頭の下痢症子馬から採取した直腸スワブおよび糞便について下痢症予想細菌の検索を行い, 加えて下痢症由来の大腸菌の疫学的意義を知るために, 下痢症あるいは子宮炎由来大腸菌のいくつかの性状を調べた. 細菌学的検索の結果, 数種の下痢症予想細菌が分離され, これらのうちβ-溶血性連鎖球菌様の明瞭な溶血性を示す大腸菌が慢性下痢症の子馬から頻繁に分離されたが, 正常子馬からは分離されなかった. 一方, この溶血性大腸菌の分離率は他の菌種のそれよりも2倍からそれ以上高いものであり, また5月における分離率は他の月のそれよりも5倍以上高いものであった. これらのことから溶血性大腸菌は繁殖シーズン, 特に5月における子馬の慢性下痢症に密接に関係していることが疫学的に示唆された. 下痢症子馬および子宮炎罹患馬由来の溶血性大腸菌の多くは血清型O101に分類された. このことは溶血性大腸菌が子宮炎罹患馬から伝播している可能性が強いことを示唆している. 一方, 下痢, 子宮炎あるいは正常馬から分離された大腸菌は多くの血清型に分類され, これらのうちO8, O101, O147が優勢であった. 供試株の多くはマンノース感受性および耐性の血球凝集性を有していたが, 既知の線毛抗原 (K88, K99, 987P) あるいは腸管毒素 (ST, LT) 産生能は有していなかった.
  • 安斉 了, 鎌田 正信, 池 和憲, 兼丸 卓美, 熊埜御堂 毅
    1987 年1987 巻24 号 p. 42-50
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    大腸菌に起因する子馬の下痢症及び繁殖雌馬の子宮炎の治療に際して抗生物質選択の指針を得るため, 両疾病由来大腸菌株の薬剤感受性試験をディスク拡散法並びに寒天希釈法によって実施し, 各種抗生物質に対する耐性獲得状況と最小発育阻止濃度 (MIC) を検討した. 市販の薬剤感受性ディスク63種類を用いて大腸菌162株の薬剤感受性を調べたところ, 本菌が元来感受性を有すると考えられる抗生物質のうち, ストレプトマイシン, カナマイシン, テトラサイクリン, アンピシリン, クロラムフェニコールを含む13種類の抗生物質に対して供試株の10-30%が耐性を示した. また, 本試験の結果に基づいて44株の溶血性大腸菌と118株の非溶血性大腸菌の薬剤感受性を比較したところ, 両群の間にほとんど差異は認められなかった. さらに, 90株の大腸菌に対して61種類の抗生物質のMICを調べたところ, アミノグリコシド系, セフェム系, ペブチド系, ニトロフラン系, ペニシリン系に属する18種類の抗生物質が全ての供試株に対して低いMICを示し, かつ90%以上の供試株に対して3.13μg/ml以下のMICを示した. これに対して, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, スルフォンアミドは100μg/ml以上の濃度でも供試株の90%以上の発育を阻止することが出来なかった. 今回の結果から, MICの低い18種類の抗生物質うちでも特に高い活性を示した3種類のアミノグリコシド系抗生物質 (ゲンタマイシン, シソマイシン, トブラマイシン) と5種類のセフェム系抗生物質 (セフォタキシム, ラタモキセフ, セフォペラゾン, セフチゾキシム, セフォテタン) が子馬の下痢症, 雌馬の子宮炎等の大腸菌感染症の治療に薬剤感受性の面から推奨される.
  • 藤井 良和, 平原 敏史, 吐山 豊秋
    1987 年1987 巻24 号 p. 51-55
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    交感神経活動性の指標とされる血漿中カテコールアミンの測定法を馬において確立するために, ヒトで繁用されているトリハイドロキシインドール法による高速液体クロマトグラフィーを導入し, 種々検討した. 前処理における低温下での除蛋白操作および移動相の組成について改善し, 良好な精度が得られた. また, 健常なサラブレッド種10頭の平均値および標準偏差は, ノルエピネフリンは184.9±56.7pg/ml, エピネフリンは119.4±44.9pg/mlであり, 他法の成績と比較してほぼ同様の値であった. 以上の結果から, この改良した方法は馬血漿中カテコールアミン分析法として有用であることが示唆された.
  • 間 弘子, 和田 隆一, 新田 仁彦, 竹永 士郎, 益満 宏行, 長谷川 晃久
    1987 年1987 巻24 号 p. 56-59
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬用気管支鏡を試作し, その応用性を検討した. 試作機は, 長さ3m外径5.9mmのファイバースコープで, 内径2.6mmの生検チャンネルを有し, 先端部は上下2方向に可動する. 馬の気管支鏡検査は, 枠場内起立位で, 鎮静剤による前処置と, 気管支粘膜の局所麻酔により実施した. その結果, 肺後葉後幹部を支配する区域気管支までの粘膜の詳細な観察を安全かつ容易に行うことができた. また, 供試馬の1例においてExercise-induced pulmonary hemorrhage (EIPH) の発症が確認された. 以上の成績は, 馬用気管支鏡による検査が, 馬の呼吸器疾患の診断, 治療に極めて有効な手段であることを示唆するものである.
  • 和田 隆一, 及川 正明, 吉原 豊彦, 富岡 義雄, 兼子 樹広
    1987 年1987 巻24 号 p. 60-64
    発行日: 1987/12/18
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    いわゆる息労馬の1例の肺を病理組織学的に検索した. 主な臨床症状である呼吸困難に深くかかわりのある組織学的所見として細気管支および肺胞管における粘液栓形成が注目されたことから, その病理発生を検討した. その結果, 多量の粘液は杯細胞化生した気管支粘膜上皮細胞から分泌され, 粘稠度の高い性質を有しているとみなされた. また, その排出障害には杯細胞化生による気管支粘膜上皮の繊毛消失と気管支平滑筋の変性が関与していることが示唆された.
  • 1987 年1987 巻24 号 p. e1a
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 1987 年1987 巻24 号 p. e1b
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 1987 年1987 巻24 号 p. e1c
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
  • 1987 年1987 巻24 号 p. e1d
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
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