大腸菌に起因する子馬の下痢症及び繁殖雌馬の子宮炎の治療に際して抗生物質選択の指針を得るため, 両疾病由来大腸菌株の薬剤感受性試験をディスク拡散法並びに寒天希釈法によって実施し, 各種抗生物質に対する耐性獲得状況と最小発育阻止濃度 (MIC) を検討した. 市販の薬剤感受性ディスク63種類を用いて大腸菌162株の薬剤感受性を調べたところ, 本菌が元来感受性を有すると考えられる抗生物質のうち, ストレプトマイシン, カナマイシン, テトラサイクリン, アンピシリン, クロラムフェニコールを含む13種類の抗生物質に対して供試株の10-30%が耐性を示した. また, 本試験の結果に基づいて44株の溶血性大腸菌と118株の非溶血性大腸菌の薬剤感受性を比較したところ, 両群の間にほとんど差異は認められなかった. さらに, 90株の大腸菌に対して61種類の抗生物質のMICを調べたところ, アミノグリコシド系, セフェム系, ペブチド系, ニトロフラン系, ペニシリン系に属する18種類の抗生物質が全ての供試株に対して低いMICを示し, かつ90%以上の供試株に対して3.13μg/ml以下のMICを示した. これに対して, テトラサイクリン, クロラムフェニコール, スルフォンアミドは100μg/ml以上の濃度でも供試株の90%以上の発育を阻止することが出来なかった. 今回の結果から, MICの低い18種類の抗生物質うちでも特に高い活性を示した3種類のアミノグリコシド系抗生物質 (ゲンタマイシン, シソマイシン, トブラマイシン) と5種類のセフェム系抗生物質 (セフォタキシム, ラタモキセフ, セフォペラゾン, セフチゾキシム, セフォテタン) が子馬の下痢症, 雌馬の子宮炎等の大腸菌感染症の治療に薬剤感受性の面から推奨される.
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