本論文はサラブレッド種の心肥大を伴った筋性心室中隔欠損症の稀な症例報告である.
症例はサラブレッド種, 2歳の雌馬でtying-up症候群と軽度の運動不耐性の症状を示し, 心電図検査で心房細動が確認された.
キニジン療法により心房細動は良化し洞調律に復したが, A-B誘導による心電図検査では, 2峰性で幅が広く, 尖鋭化した左心房成分が特徴的なP波として認められた. また, 心臓の聴診時, 収縮期雑音が聴取され, 心音図検査でヒトの中等度の心室中隔欠損症に類似した漸減性の収縮期ならびに拡張期雑音が認められた. この心雑音は生存期間中継続して聴かれたが, 臨床的にはチアノーゼ, 浮腫などの循環不全を疑わせる所見は得られなかった.
4ヵ月後, 症例は襲歩にて調教運動実施中後駆蹌踉となり走路上で転倒, そのまま死亡した.
剖検の際, 6×3cm大の心室中隔筋性部の大欠損と著しい心肥大が認められ, 組織学的検索では肝臓の小葉中心性の鬱血と中心静脈壁の繊維性肥厚, 肝洞様血管の繊維化など, 軽度の慢性循環障害を示す所見と急性の肺, リンパ節の鬱血水腫が認められた.
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