日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
Online ISSN : 1884-4626
Print ISSN : 0386-4634
ISSN-L : 0386-4634
1986 巻, 23 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 2. サラブレッド種育成馬の行動からみた至適放牧頭数
    楠瀬 良, 畠山 弘, 市川 文克, 久保 勝義, 木口 明信, 朝井 洋, 伊藤 克己
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 1-6
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    育成期の馬を放牧飼養する時の適正な構成頭数の基準を得ることを目的に, 14-16ヵ月齢のサラブレッド種育成馬を毎日7時間, 雌雄それぞれ1頭から12頭まで, 2.4haの面積の放牧地に放牧し, 放牧地内での行動, 個体間距離を指標として検討を行った. 総移動距離は1頭の時がほぼ8000-15000mで最も多く, 3頭以上の時に3000-6000mとなり変化が認められなくなった. 逆に採食時間の割合の推定値は1頭の時が最も小さく0.5程度であり, 3頭以上の時に0.75程度で安定した. また, 1回当たりの採食時間は放牧頭数が1頭から4頭まで頭数が増えるに従って延長した. さらに, 15分おきに求めた放牧地内の各個体の相互距離の平均値は2頭の場合約5mだったのが, 頭数が増えるに従って延長し, 12頭の時には30-50mとなった. 一方, 各個体について最も近くにいる個体の距離の平均値は放牧頭数にかかわらず, 約5mで一定していた. 個体間距離の全データの放牧頭数ごとの分布は, 2頭から6頭までは1峰性であるが, 放牧頭数が12頭になると複合的な分布となった. これらのことより, 育成馬の自発運動を十分確保できると考えられる2.4haの放牧地に対して放牧する育成馬は, 3頭以上とすべきであり, 構成頭数が12頭になると群れの空間構造に明瞭な変化が起こることがわかった.
  • 吉原 豊彦, 兼子 樹広, 及川 正明, 兼丸 卓美, 長谷川 充弘, 富岡 義雄
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 7-13
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    北海道日高地区で生後間もない臨床的に虚弱な軽種馬幼駒45例の剖検において, 3-73日齢の子馬12例に胃潰瘍を認めた. 胃潰瘍はヒダ状縁隣接領域の前胃部を好発部位とし, このなかには穿孔性胃潰瘍2例があった. 日齢の若い子馬に認められた潰瘍は組織反応像に乏しい急性潰瘍であった. 前胃部潰瘍の初期病変は重層扁平上皮の不全角化およびその解離であった. 潰瘍部近在の粘膜固有層や下層に分布する細ないし小血管に多発性の水腫性粗鬆化が認められた. また, 胃の血管造影による解剖学的所見から, 子馬の前胃部は腺部に比べ血管分布に乏しかつた, これらの所見は生後間もない子馬の前胃部胃潰瘍の病理発生の一要因となりうるものと考えられた.
  • 藤本 胖, 斑目 広郎, 吉田 浩, 森口 良三
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 14-27
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    子馬の多発性筋変性症6例につき光顕的ならびに電顕的検索を行った. 1例 (2ヵ月齢) を除き5例は生後1日ないし4日の甚急性例で, 全身の諸筋に広域にわたって筋肉の蝋様変性が認められた. 病変の程度は後躯などの強大筋において特に重度に認められた. 同一例, 同一筋群に新旧病変が同時に認められた. 電顕的には筋原線維の変性脱落, Z帯の崩壊, 流失に始まる初期病変とhypercontraction band形成による急性凝固壊死病変とmacrophageによる清掃, さらには筋原線維の再形成, 核の増数などの再生性病変が同時に見られた. 原因としてのビタミンEおよびセレニウム欠乏説について触れた.
  • 松村 富夫, 駒野 道夫, 杉浦 健夫, 鎌田 正信, 福永 昌夫
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 28-34
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    生産地の馬群における馬のウイルス感染症の防疫対策ならびにトレーニングセンター (トレセン) への入厩馬に対する検疫プログラムを検討するために, 5年間にわたって関東地方の一生産牧場を監視下におき, トレセンで発生の認められる馬鼻肺炎, 馬アデノ, 馬ロタおよび馬ライノ1型の各ウイルスに対する血清疫学調査を実施した. その結果, 1983年と1985年に当歳馬群と明け2歳馬群内に馬鼻肺炎の比較的大きな流行が3回認められ, その他の年度においても散発的に抗体上昇馬が認められた. また, 馬鼻肺炎ウイルスに対する抗体上昇馬は2月から12月までのほとんど各月に認められた. これらのことから, 生産牧場においては季節に関係なく高頻度に馬鼻肺炎ウイルスが若齢馬群間で伝播していることが明らかとなった. 近年現行ワクチン接種馬においても流産の発生が認められる事実と今回得られた成績から, 馬鼻肺炎ウイルスによる流産予防のためには, 若齢馬群と妊娠6ヵ月以降の繁殖馬群の完全隔離を徹底するとともに, 接種時期, 接種回数などのワクチンプログラムの再検討が必要であると思われた. また, トレセンへの入厩馬の防疫においては, いずれの時期における入厩馬も馬鼻肺炎の感染源となりうることを十分に考慮して検疫を実施する必要があると思われた. 一方, 馬アデノあるいは馬ライノ1型ウイルス感染若齢馬は春先の一定の時期に集中して, また馬ロタウイルス感染若齢馬は季節に関係なく散発的に, 毎年認められた.
  • 熊埜御堂 毅, 中村 肇, 松村 富夫, 杉浦 健夫, 秋山 綽
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 35-41
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    馬に対し種々の接種量 (1, 3および5ml) の日本脳炎不活化ワクチンを接種し抗体応答を検討した. 基礎免疫として1ml, 2回接種馬では53.1%が接種後2ないし2.5ヵ月において中和抗体陽性であった. 一方, 1ml, 1回接種馬では同時期において全例が中和抗体陰性であった. 第1回補強接種として1ml, 3mlおよび5mlを接種された馬の中和抗体価は接種前に比べそれぞれ3.0, 12.1および6.4倍上昇した. 一方, 第1回および第2回補強接種としてそれぞれ5mlと3ml, 3ml 2回, および1ml 2回接種された馬の第2回補強接種の効果は顕著に認められなかった. さらに, ワクチン接種後HI抗体が検出されなかった105例のうち54例 (51.4%) の馬に中和抗体が証明された.
    以上の結果から基礎免疫として1ml, 1回接種より2ml, 2回接種法は中和抗体の持続の面でより効果的であることが示唆された. また, 補強免疫として接種した3mlおよび5ml接種馬に補強効果が認められたが, 両者に顕著な差異は認められなかった. 加えて, 現行ワクチン接種馬におけるワクチン抗体の応答の評価には中和試験がHI試験より適切であることが明らかにされた.
  • 杉浦 健夫, 松村 富夫, 福永 昌夫
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 42-48
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    アフィニティークロマトグラフィー精製抗原を使用したエライサ法により, 馬伝染性貧血 (伝貧) の診断を行なうことを試みた. 使用した抗原は, 不連続庶糖密度勾配遠心を2回行なって精製した伝貧ウイルスをエーテル処理により破壊し, 抗牛全血清抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより混入する組織培養液由来の牛血清成分を除去して精製した. エライサ法は, 0.05mlの抗原を結合したエライサ用プレートをゼラチンでブロックし洗浄後, 0.05mlの被検血清を希釈しないで加えて37℃で90分間攪拌しながら反応させ, 再び洗浄後ペルオキシダーゼ標識抗馬IgG (H+L) を0.025ml加え同じく60分間反応させた. 次いで, さらに洗浄後0.25mlの0.08% 2, 2´-アジノービス (3-エチル-ベンゾチアゾリン-6-スルフォン酸) および0.003%過酸化水素を加え同じく50分間反応させ, 0.05mlの1%しゅう酸で発色を停止し, 415nmの波長で吸光度を測定した.
    以上の結果, 非特異反応は顕著に減少し, 野外から収集した血清の吸光度は, 寒天ゲル内沈降反応陽性の18例の血清で0.84から2.06 (平均=1.61, 標準偏差=0.373), 陰性の189例では0.01から0.32 (平均=0.15, 標準偏差=0.06), 陰性ではあるが非特異反応の認められた41例では0.04から0.33 (平均=0.14, 標準偏差=0.08) であった. 以上のことから, 本反応は, 伝貧の診断に応用可能であることが明らかとなった.
  • 熊埜御堂 毅, 鎌田 正信, 松村 富夫, 杉浦 健夫, 兼丸 卓美
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 49-54
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    ゲタウイルスに対する実験小動物の感受性を調べるため, 5種類の実験小動物, すなわち, ウサギ, ラット, モルモット, ハムスターおよびマウスにMI-110株104.5 TCID50/mlを腹腔および皮下接種した. ウイルス血症はこれらすべての動物に証明され, プラズマ中の最高ウイルス感染価はそれぞれウサギで103.0, ラットで104.0, モルモットで103.3ハムスターで105.8およびマゥスで104.8 TCID50/0.1mlであった. モルモット, ハムスターおよびマウスにおけるウイルス血症の持続期間は接種後連続3日であったが, ウサギおよびラットでは接種後1日のみであった. さらに, HI抗体は幾何平均値でウサギの1:113倍からハムスターの1:44倍の範囲ですべての動物に認められた. しかし, これらのウイルス血症, プラズマ中のウイルス感染価およびHI抗体は両接種ルートによって有意な相違はなかった. 加えて, 被毛の光沢失調を除き, 接種後2週間の観察期間中, 麻痺および死亡を含め顕著な臨床症状は認められなかった. 以上の結果, これら5種類の実験小動物はゲタウイルスに対し比較的高い感受性を有することが示唆された.
  • 鎌田 正信, 熊埜御堂 毅, 安斉 了, 兼丸 卓美, 仙波 裕之, 大石 秀夫
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 55-61
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    1985年の繁殖シーズン中に北海道日高地方の子宮炎および不妊雌馬より採集した478例の子宮頸管スワブのうち, 33例からT. equigenitalisが分離された. 市販のストレプトマイシン (SM) ディスク (50μg含有) を用いて25株の薬剤感受性を調べたところ, 4株が感受性で, 21株が耐性であった. ユーゴンチョコレート寒天培地3代継代株に対するSMの最小発育阻止濃度 (MIC) を寒天平板希釈法で測定したところ, SM感受性株に対するMICは12.5μg/ml, SM耐性株に対するそれは200μg/mlであった. SM感受性株を4代継代したところ, そのMICは200μg/mlとなった. これらのことから, SM感受性T. equigenitalisに対するSMのMICは初代培養時では12.5μg/ml以下であり, 抗生物質無添加培地でも数代継代後には急速に耐性化して200μg/mlとなることが示唆された. したがって, これらの感受性株は一般細菌のSM感受性株とは耐性の発現において異なっているものと思われた. 今回の結果から, 馬伝染性子宮炎を防圧または根絶するためには, 保菌馬から本菌のどのような株をも選択分離できるSM無添加培地を使用することが必要と考えられた.
  • 及川 正明, 吉原 豊彦, 和田 隆一, 兼子 樹広, 久下 倫生, 中島 滋, 大石 秀夫
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 62-66
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    重篤な子馬感染症の前駆的発症要因のひとつとされる母馬からの移行抗体伝達不全 (FPT) および初乳中の免疫グロブリンの異常を早期に診断するため, 初乳および生後間もない子馬の血清中のIgG量を野外でも簡易迅速に測定可能なソープフリーラテックスを用いたラテックス凝集反応 (LAT) を開発し, その有用性を検討した. その結果, IgG量がSRID法で400mg/dl以上を示した子馬血清42例はLATにおいて全例陰性 (P≒0.03) で, 400mg/dl以下を示した7例はいずれも陽性 (P≒0.02) であった。またIgG量が4000mg/dl以上の初乳11例は全例陰性で, 4000mg/dl以下の3例はいずれも陽性であった. このことから今回のソープフリーラテックスを用いたLAT法によって初乳中のIg量の異常ならびに子馬のFPTを簡易迅速に判定できることが示唆された.
  • 富岡 義雄, 兼子 樹広
    1986 年 1986 巻 23 号 p. 67-69
    発行日: 1986/12/20
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    0日齢から9歳11ヵ月齢のサラブレッド種およびアングロアラブ種19頭から得た第三中手骨 (Mc III) 32肢を用いて, 主に海綿骨からなるMc III遠位部における超音波伝播速度 (UPV) と骨塩含量 (BMC/BW) との関係を検討した. Mc III遠位部の測定に際し, 測定の再現性を高めるためポジショニングが容易な管靱帯窩を測定部位とし, 発受振子の骨への密着を増すため発受振子を測定具の内側へ各5mm突出させる改良を行った. その結果, Mc III遠位部での測定が確実かつ容易に行え, この部位におけるUPV値とBMC/BW値は相関係数r=0.970, 回帰式Y=0.004X-5.740, 危険率<0.001で表される有意の正の相関を示した.
feedback
Top