日本中央競馬会競走馬総合研究所報告
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1978 巻, 15 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 池田 正二, 山岡 貞雄, 渡辺 博正, 亀谷 勉
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 1-7
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    セルロゲル膜による競走馬の血清LDHアイソエンザイム分析法を検討し, 次の成績を得た。
    1. 馬血清に対する呈色液中の乳酸リチウム及びNADの至適濃度はそれぞれ0.167mol/l及び1.5mmol/lであった。
    2. 健康な競走馬45例の血清の分画値は百分比で示した場合, LDH1 15.5±2.8, LDH2 27.2±3.2, LDH3 37.4±2.2, LDH4 16.5±4.1及びLDH5 3.4±1.5であった。
    3. 2例の臓器アイソエンザイム分析からLDH1の多い赤血球, 心筋, LDH5の多い骨格筋, 肝臓を両極とした各臓器アイソエンザイム分布が得られた。
    4. 従来の寒天ゲル法と比較して操作手順が簡便であり, 短時間で結果が得られた。
    この試験を行うにあたり, 快く血液材料を提供された東京競馬場競走馬診療所の各位に深謝するとともに, 種々協力された競走馬総合研究所伊島道子氏に感謝する。
  • 兼丸 卓美, 及川 正明, 吉原 豊彦, 兼子 樹広, 桐生 啓治, 佐藤 博
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 8-17
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Pathological features of hepatocellular carcinoma seen in a Thoroughbred colt were briefly described. Carcinomatous growths were observed in the following organs and tissues: the liver, except caudate lobe, with multinodular lesions and venous cancer emboli; the posterior lobes of the lungs with multiple or scattering nodules and arterial cancer emboli; the cortices of the kidneys with scattering nodules and arterial cancer emboli; the gluteus medius muscle with a solitary nodule and arterial cancer emboli; the portal, anterior mesenteric (including the intestinal intramural branches), and posterior mesenteric veins with cancer emboli; the internal and external iliac arteries with cancer emboli; the splenic and lymph nodal sinuses with cancer emboli. Extrahepatic cancer metastases developed evidently via blood and lymph. There occurred osseous metaplasias in the proliferated fibrous connective tissue in the tumor lesions of the liver, lungs, and gluteus medius muscle.
  • 2. 肩関節の撮影条件の検討と臨床応用
    土川 健之, 上原 伸美, 多田 恕, 吉田 光平, 山本 栄一, 吉田 慎三, 竹内 啓
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 18-30
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    Investigation was made on the X-ray tube voltage and the tube current which were necessary for lateral oblique radiography of the shoulder joint of the horse in the standing position. Then examination was carried out to reduce the scattering beam effectively with a lead cone. As a result, it was possible to get radiographs available for diagnosis. (1) Movement was reduced in a horse administered intravenously with 0.6-0.8mg/kg of xylazinehydrochloride. The horse was restrained in a stock with the troubled forelimb stretched. The central ray was directed to the end of the cervical vertebra and lateral radiographs were taken from oblique anterior to posterior. (2) The X-ray tube voltage used was 80 kVp. It was enough for the radiography of the equine shoulder joint. A fine radiograph was taken when the tube voltage was 100-110 kVp and the tube current was 100-300 mAs. In this case a single Lisholm-Blende at a grid-ratio of 10:1, the focus-film distance used was 120cm. (3) Fine radiographs were taken by use of a lead cone to reduce the scattering beam. (4) Significant damage was found in 8 cases (3 cases of fracture of the scapula, 4 cases of fracture of the humerus, and 1 case of osteoperiostitis of the shoulder joint). It would account for the clinical signs of forelimb trouble in 40 cases.
  • 1. ウシ腎細胞継代弱毒株の馬に対する病原性
    川上 善三, 村瀬 信雄, 清水 悠紀臣, 菊池 直哉
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 31-36
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    To develop a live equine rhinopneumonitis virus (ERV) vaccine for the prevention of upper respiratory infection in colts, an attempt was made to attenuate a strain of ERV HH1 by making 320 passages in BK cell cultures. In growth experiments, the attenuated strain, HH1-BK-320, showed a very high titer when incubated at 30°C, but hardly multiplied a 40°C. CPE was observed at 48 hours of incubation, when the infective titer of the virus against BK cell culture ranged from 106.5 to 107 TCID50. A colt was inoculated intranasally with the attenuated virus. No characteristic respiratory signs were observed, but a small amount of virus was detected in nasal washings a short time after inoculation. After that, the colt showed a significant rise in titer of neutralizing antibody against the original HH1 strain. From these results, it was presumed that the HH1-BK-320 strain might be safe enough for use as live virus vaccine for colts.
  • 千田 哲生, 久保 勝義
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 37-46
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    8頭の無麻酔立位の馬の右心房を電気刺激したところ, いずれの馬にも心房細動 (AF) を発症させ得た。
    1) USCI製MPI型カテーテル (電極間隔1.7mm) を, 無麻酔立位の馬の右心房腔内に頸静脈を経てそう入して刺激電極とした。
    2) 三栄測器製ES-103型電気刺激装置によって電圧10V, 持続時間20msの矩形波を連続2回発生させ, 1組の刺激波とした。
    3) この矩形波の間隔を0.1秒から0.5秒まで約0.01秒間隔で延長しながら, 各間隔約10回宛心房を刺激した。
    4) 最初の矩形波による刺激によって心房は興奮しP波が生じた。
    5) 矩形波の間隔が短い場合 (個体によって差があるが0.14-0.39秒以下) 心房は2回目の矩形波に反応しなかった。
    6) 間隔が長い場合 (0.25-0.42秒以上) 心房は2回目の矩形波に反応しP波が記録された。
    7) 間隔が両者の中問の場合心房は反応して, f波やP波を生じた。
    8) この時期は, 最初の矩形波によって興奮した心房筋の受攻期と考えた。
    9) P波持続時間, PP間隔, PR間隔と, 受攻期の間にとくに相関関係はなかった。
    10) 前述の矩形波を連続発生させ, 15秒間心房を刺激した。
    11) 刺激頻度は, 60/分から始め, 120/分, 180/分, 240/分, 300/分, 360/分と, 刺激停止後もAFが持続するまで, 60宛刺激頻度を高めた。
    12) 刺激頻度180/分で1頭, 240/分で5頭, 300/分で1頭, 360/分で1頭と全例とも刺激停止後もAFが持続した。
    13) この刺激頻度とf波頻度および受攻期の間にとくに相関関係はなかった。
    14) 正常な馬の心房を, その受攻期に刺激することによって容易にAFが発症することが明らかになった。
  • 天田 明男, 栗田 晴夫
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 47-61
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    競走馬の固定性心房細動の3例に対し, 臨床ならびに心電図学的観察を行なうとともに, 硫酸キニジンの経口投与による治療を実施した。いずれの症例も, 心房細動はレース時に発症したものである。心房細動発症から治療実施までの期間は, 症例1が71日, 症例2が3日, そして症例3が15日であった。硫酸キニジンは, 症例1に対して計25g (試験量5g, 治療量10gを2回), 症例2および症例3に対してはそれぞれ治療量10gの1回投与だけで除細動に成功した。除細動時のキニジン血中濃度は約1mg/1もしくはそれ以下であった。
    治療前ならびに治療後の運動負荷心電図検査により, 除細動によって運動時の心臓機能の著しい改善が認められた。症例1は除細動後13日目から, 症例2および症例3は除細動の翌日からそれぞれトレーニング運動を開始し, レースに復帰した。いずれの症例も, 心房細動の再発もなく, 良好な競走成績をあげ得た。
    これらの結果から, 競走馬の心房細動について若干の考察を行なった。
  • 山岡 貞雄, 池田 正二, 渡辺 博正, 長沢 良信, 滝沢 勇, 長谷川 充弘
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 62-78
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    日本のサラブレッド競走馬のtying-up syndrome 15症例つき, 臨床所見を観察すると共に, その中の8例の発症後の血清酵素活性及び血清LDH isoenzymeの推移を調べ, 次の成績を得た。
    発症時の主な臨床症状は, 調教中又は調教後短時間における歩様蹌踉又は不能, 後躯の筋硬固と疼痛, 呼吸速拍, 著しい発汗と重症例における筋の振顛といえ, 腸蠕動の停止又は尿閉も伴っていた。しかし疵痛との類症鑑別は赤褐色尿又はオルトトリジン又はミオグロビンに対する尿の陽性反応でなされた。また発症に関連する要因として, 明け3歳牝馬の寒冷期の調教, 休養, 急激な調教の強化が強調されるが, その予後は, 概して良好といえた。
    発症後の血清酵素の上昇度合は, CPKが極端に大きく, 以下ALD, LDH, GOT, GPTの順位がみられた。再発例のCPK, ALD活性は, 臨床像とよく一致していた。なお, 肝特異酵素とされるSDH, GLDH, γ-GTはほぼ正常範囲内にあった。CPK, LDH, LDH5とLDH4は, 発症第1病日に最大ピークに達し, 後7-10日にかけて正常に復していた。ALD, GOT, GPTの各活性値は翌日にピークを示し, 正常への復帰はALDでCPKと同等, また, GOT, GPTにおいては15日又はそれ以上を要した。3例の再発例の中の1例で, 病初からLDH5, LDH4の著増に加え, 軽度な心型活性 (LDH1, LDH2の順位) を示したが, この現象は病気の強度と関連するように考察された。
    今回, 調査した症例は, 諸外国においてtying-up syndromeと報告される病気に一致するもので, 本症は臨床並びに酵素学的にみて麻痺性筋色素尿症の軽症と推察された。
  • 渡辺 博正, 池田 正二, 山岡 貞雄, 亀谷 勉, 長沢 良信, 滝沢 勇, 長谷川 充宏
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 79-90
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    競走馬の筋疾患解明の一助とするため血清中及び尿中の筋色素 (以下Mb) の免疫拡散法による検出法及び半定量法を検討し日競研報No. 12に報告した。今回は1976年10月から1977年3月の間に, Mb血症の認められた競走馬の筋疾患症例8例について発症日及び経日的に血清中のMb濃度, および発症日に採材できた4症例の尿中Mb濃度を測定した。ついで, 本症におけるMb濃度の診断上の意義を検討するために発症時の臨床症状の軽重と血清中及び尿中Mb濃度の多少との関連を検討した。
    症例はサラブレッド種で雌3歳5例, 雌4歳1例, 雌5歳1例及び雄3歳1例であり, 2例が調教中に, 6例が調教後に発症した。一時的な歩行障害もしくは強拘歩様, 発汗及び筋の硬化, 疼痛がほぼ全例に観察され, 筋の振顫, 尿閉及び蠕動の減弱もしくは廃絶も認められる症例があった。歩行障害は歩行不能3例, 歩行困難1例及び歩様強拘4例に区分でき, 臨床症状の軽重の指標として, もっとも明瞭と考えられたため, これによって検討した。その結果, 発症時の血清中Mb量は, 次のとおりであった。
    歩行不能例 384μg/ml≦Mb<768μg/ml
    歩行困難例 192μg/ml≦Mb<384μg/ml
    歩様強拘例 48μg/ml≦Mb<192μg/ml
    また, 4症例の尿検体はすべてMb陽性であり
    最大値は 6144μg/ml≦Mb<12288μg/ml
    最小値は 192μg/ml≦Mb<384μg/ml
    であった。
    血清中Mb量は発症時に最も高値を示し, その後漸減し, 発症の翌日もしくは第3病日には概ね消失した。以上のように, 血清中のMb量は発症後最初に採材された検体において最高値を示し, このような症例の筋障害の程度をよく反映すると考えられることから, 早急な鑑別診断に有効であり, また病性の判定にも有用と推察された。8症例のうち2症例にMb血症を伴なう比較的軽度の再発があったが, このことについてはさらに症例を加えて検討することが必要であると考えられた。
  • 鎌田 正信
    1978 年 1978 巻 15 号 p. 91-96
    発行日: 1978/12/01
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    東京競馬場に所属する3歳乃至4歳のサラブレッド300頭から採取した血清について, ウマアデノウイルスの抗体検索を4種類の血清学的試験法によって行なった。その結果, 中和抗体を保有していたものは供試した300例の被検血清のうちの82.7% (248例) で, HI抗体の58.0% (174例), CF抗体の44.3% (137例) および沈降抗体の16.0% (48例) よりも保有率において高く, ウマアデノウイルスの抗体検索法としては中和試, 験が最も優れていた。
    今回供試した被検血清の大部分のものに非特異HI活性は認められず, 8単位のHA抗原を用いたHI試験の成績は抗体価において中和試験の成績と密接な相関関係を示した。さらに, HI抗体を保有していた174例のうちの167例が中和試験陽性であった。このことから, 中和試験と同じようにHI試験を野外におけるウマアデノウイルスの抗体検索に応用できることが明らかになった。
    一方, CF抗体を保有していた137例の被検血清中52例が中和試験かまたはHI試験のいずれかが少なくとも陰性で, 両方とも陰性のものが8例あった。また, 沈降抗体を保有していた48例はいずれもCF試験の成績も陽性であった。なお, CF試験陽性例のうち16倍以上のCF価のものが35例もあり, 競馬場における頻繁なアデノウイルスの伝搬がうかがわれた。
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