スポーツ選手の膝関節障害の発生機構と予防に関する一要因を明らかにする目的で, 大学の女子球技選手を対象として大腿四頭筋およびハムストリングの短縮性筋力と伸張性筋力を測定した。
対象は大学の球技系運動部に所属している女子学生で, 膝関節に既往症のない健常群 (C.G) 67名, 膝関節に既往症のある膝関節障害群 (I.G) 33名の計100名であり, 障害群は障害が測定2ヵ月前までにほぼ完治し, 測定に差し支えなく, 競技を行ううえでほとんど支障のない選手を対象とした。
筋力測定は等速運動速度下における短縮性筋力 (CON) と伸張性筋力 (ECC) の測定が可能なKIN-COM500H (米国Chattecx社製) を使用した。
本研究の結果の要約は以下に示すものである。
1) 伸張性筋力に対する短縮性筋力の割合は健常群, 障害群とも等速運動速度の増加に伴い, 指数関数的に減少を示し, 特に障害群のハムストリングにおいてその傾向が顕著であった。
2) 障害群におけるハムストリングの減少指数は健常群の大腿四頭筋とハムストリングおよび障害群の大腿四頭筋に比して, 約二倍以上の減少指数を示し, 弾性要素由来の張力 (EC) に依存する傾向が強いことが示唆された。
3) 健常群においては身長, 体重と筋力間においていずれも強い相関性を示したが, 障害群においてはその相関性はきわめて乏しかった。
4) 大腿四頭筋とハムストリングの関連性に関しては, 健常群においては相関係数γ=0.422 (
n-67) と0.1%水準で有意な相関を示したものの, 障害群においてはγ=0.109 (n-33) とまったく関連性を見い出すことができず, 全体機能のアンバランスさが目立った。
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