脂質代謝異常や動脈硬化進展の識別に従来からAI (Atherogenic index: LDL-cho/HDL-cho比) が用いられてきたが, 病態を漏れなく捕らえるには限界があった。最近, アポ蛋白が自動化 (TIA法) できるようになり, 通常の脂質各分画成分と同時測定が可能となった。AIに代わる指標としてAPI (Atherogenic apolipoprotein index: アポB/アポA-I比) が活用され始め, 健診時における診断基準の設定が試みられ始めた。
1993年, 日本総合健診医学会のアポ蛋白研究会 (委員長: 清瀬闊) はアポ蛋白 (アポA-I, アポB) を用いたAPIの動脈硬化性疾患のスクリーニング基準, いわゆる共通の“ものさし”になり得るための基準範囲の設定を試みた。
それには, 本学会加入施設がデータを持ちより, その集積母集団解析から求めるのが望ましいとした。そこで, 当委員会は23施設に対しサーベイを実施し, 施設内, 施設問誤差及び機種間誤差をチェックした上で, 検査済みアポA-I, アポBデータの提供を願った。サーベイサンプルと各施設母集団値の両方でのチェックから著しい誤差は見出だせず, よって補正の必要性はないとし, 実測値のみの基準範囲を求めた。
しかし動脈硬化学会で発表した野間らの報告値とでズレが生じた。野間らが発表したアポA-Iの全体値は133±25mg/dl (当委員会値: 142±21mg/dl) , アポBの全体値は83±15mg/dl (当委員会値: 80±15mg/dl) , APIの全体値は0.65±0.16 (当委員会値: 0.58±0.14) となり, このズレを生じさせた主な起因は,
(1) 実験実施年月に5年以上のズレがあること
(2) HDL-cho値が45mg/dl以下の条件が加わっていなかったこと
(3) 国民の食生活, 生活様式が変化してきたこと
等が考えられ, 長期にわたっての検討の必要性を認めた。
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