本研究は、COVID-19パンデミック等外部要因リスクが保険会社に与えるインパクトをリスクマネジメントの視点から分析する。最初に、厚生労働省が公表するCOVID-19関連のオープンデータを用いて、Susceptible-Infected-Recovered-Dead型感染症数理モデルにより、COVID-19パラメーターとしての基本再生産数の時系列を特定し、緊急事態宣言による感染拡大防止効果が保険会社の株価に与える影響を相関分析する。次に、特定した基本再生産数に加え、保険会社のデフォルト確率と財務指標のデータを使い、ロジスティック回帰モデルにより、COVID-19が保険会社のデフォルトリスクに与える要因を分析する。この分析により、保険会社の財務健全性はCOVID-19の影響を受けていることが明らかとなる。最終的に、保険会社は本研究で提示した分析手法をストレステスト等に考慮して、COVID-19リスクが将来の事業に与えるインパクトを、中長期的なホライズンで継続的に分析することを提言する。
本研究は対象国51カ国について、社会主義から資本主義へと移行した国と、これまで資本主義を採用してきた国に分類し、各国における生命保険会社の運用リスクと保険料収入に対して、財産権の強化が如何なる影響を及ぼすのかについて統計的に検定したものである。注目する議論は移行期経済を経験した国において、財産権とその内生的制度の間に制度的補完性が存在するのか否かである。本研究の推計結果によれば、財産権の強化は移行期経済を経験した国において運用リスクを低減し、同時に保険料収入を増加させる。資本主義を採用してきた国においても、財産権の強化は保険料収入を増加させるものの、運用リスクの低減は観察されなかった。財産権の強化は特に、移行期経済圏の生命保険会社に対して重要な要因となる。
すでにアカウントをお持ちの場合 サインインはこちら