種々の方位の単結晶を組み合わせた種子結晶からエピタキシャルに一方向凝固させることにより, 柱状晶の結晶方位および形状を三次元的に制御したAl-Cu合金の多結晶鋳塊の作製を試みた。
種子結晶からの方位の“受け継ぎ性”は, 溶質量の増加とともに劣化する。この“受け継ぎ性”の劣化は, 特に{111}成長面の種子結晶を用いたときに顕著にあらわれる。それは, 最密面である{111}面上で種子方位以外の結晶が新たに核生成し易いこと, さらに{111}成長面の結晶の優先成長性が極めて弱いためである。逆に,{100}成長面の種子結晶を用いたとき, 溶質量が増加しても, 種子方位の“受け継ぎ性”はさほど劣化しない。
種子方位を受け継いだ後の凝固過程においても, 溶質量の増加に伴い, 結晶粒が乱れ易くなる。しかし, {100}面を成長面とする結晶を種々組み合わせた鋳塊では, 溶質量が増加しても, 種子結晶の方位, 形状を保つて, 各結晶は安定に成長できる。これは, 溶質量が多く, デンドライト成長する条件では{100}結晶が優先成長性を示すためである。
実際, {100}面を成長面とし, 成長方向に垂直なY方向の方位のみを種々に変化させて組み合わせた種子結晶を用いた場合, JIS鋳造用アルミニウム合金ACIAおよびAC2Aでも, 柱状晶の結晶方位, 形状を3次元的に制御した多結晶鋳塊が容易に得られ, その結果, 鋳塊中のミクロ的なデンドライトの配列方向をも任意に変化させて組み合わせることが可能となつた。また, {110}および{111}面を成長面としたときでも, 工業用純アルミニウム組成程度であれば, このような鋳塊が20~30mmの長さ (R=3.0×10
-3cm/secのとき) で得られる。
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