南アジア研究
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2013 巻, 25 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
巻頭特集 ベンガル研究における文学的構想力と歴史的構想力の交差に向けて
論文
  • ―1980年代初頭インドの新聞報道とセキュラリズム―
    拓 徹
    2013 年2013 巻25 号 p. 83-105
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2014/07/28
    ジャーナル フリー
    本稿では、1982年にジャンムー・カシミール州(インド)の南カシミールで起きた禁酒運動の詳細を明らかにすると同時に、この事件をめぐる新聞報道の分析を通じて、インドの政治言説におけるセキュラーな主体の再考を試みる。
    1982年3月に南カシミールの中心都市アナントナーグで分離主義団体ピープルズ・リーグが起こした禁酒運動は、カシミール地元のウルドゥー語紙では広範な町民の支持を得た市民運動と報道された。だが、この運動が攻撃対象とした数軒の酒屋の経営者がすべてマイノリティー(ヒンドゥー教徒)だったため、この運動はインド全国英字紙ではイスラム原理主義的で反ヒンドゥー的な事件と報道された。これらのカシミール地方紙、インド全国紙はいずれも自らの言説を「セキュラー」と見做したが、ともにマジョリタリアニズムを含み持っており、歴史的なセキュラー言説がしばしば持つ偏りを露呈するものだった。
研究ノート
  • ―チベット難民ポップ歌手を事例に―
    山本 達也
    2013 年2013 巻25 号 p. 106-127
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2014/07/28
    ジャーナル フリー
    本論文は、インドおよびネパール在住のチベット難民のポピュラー音楽であるチベタン・ポップの音楽家たちの商業活動ネットワークに着目し、生業としての音楽家の実際の様相を描き出すことを目的とする。そして、表象やアイデンティティを取り扱ってきた旧来の研究が十分に論じてこなかった音楽家の実際の生活環境や彼らが形成するネットワークの様相を描きだすと同時に、チベット難民を取りまく現状の一端を提示することを目的とする。自らを取りまくメディア環境の変化等もあって、現在、1990年代後半から形成され、また独自の発展も伴う商業活動ネットワークに依拠した活動を音楽家たちは展開しており、彼らの生活はそのネットワークに支えられている。他方、彼らの音楽に金銭を払う主催者や聴衆、商人などの人びともまた、生計を稼ぐという音楽家の意図とは離れたところで音楽活動に独自の意味づけをおこない、それこそがチベタン・ポップを取りまく商業活動ネットワークの、そしてチベット難民や彼らを取りまく人びとの固有な状況の形成に寄与している。本論文は、音楽家の商業活動ネットワークを記述・分析することで、音楽家の生業としての側面およびその商業活動ネットワークの二重性、そしてそれが明示するチベット難民や彼らを取りまく人びとの現状を明示するものである。
  • ―電信を事例に―
    ボネア アメリア
    2013 年2013 巻25 号 p. 128-151
    発行日: 2013/12/15
    公開日: 2014/07/28
    ジャーナル フリー
    植民地期インドにおける新聞に関する研究は数多いが、新聞と通信技術のかかわりに焦点をあてた研究は僅かしかない。しかし、19世紀に実用化した蒸気船や電信は新聞の発達過程において大きな意味をもっていた。特に電信は、時間・距離・空間を越える技術として注目を浴びた。電信ネットワークの構築と拡張によって、インド亜大陸内だけでなく、イギリスとインド、ヨーロッパとアジアの間の情報交換はスピード化され、インドにおけるニュース報道にも変化がみられるようになった。本稿は、電信ルートの開設と普及を明らかにした上で、19世紀インドで刊行された英語新聞をいくつか取り上げ、インド新聞史における技術の意味と役割について検討する。
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