一酸化窒素(NO)合成酵素eNOSによるNO産生は血管障害に対し保護的に働くが,糖尿病では酸化ストレスを介したeNOS産生の異常がみられる。本研究では,酸化ストレス阻害剤N-Acetyl-L-cystein(NAC)が糖尿病の病態とeNOS発現変化,および口腔粘膜創傷治癒に与える影響を検討した。糖尿病モデルKK-A
y/TAJclマウス(KK-A
y)では,糖尿病を発症しないC57BL/6JJclマウス(C57)と比較して体重,血糖値が高く,eNOSの血管内皮細胞での局在が消失傾向にあった。NAC 投与によりKK-A
yの糖尿病症状の改善がみられ,eNOSの発現の上昇が認められ,さらに,KK-A
yでの口腔粘膜創傷治癒の促進が確認された。以上の結果から,糖尿病モデルマウスにおける実験では,酸化ストレス阻害剤はeNOSの発現上昇と共に糖尿病の病態,および口腔粘膜の創傷治癒遅延を改善することが示唆された。
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