口腔粘膜疾患患者は出血や疼痛によりセルフケアが困難となり,口腔衛生状態が不良となりやすい。さらにステロイド治療による口腔内の2次感染が懸念される。これまでに口腔衛生管理の重要性は報告されているが,病勢との関連性を詳細に検討した報告は少ない。本研究では,尋常性天疱瘡(PV)または口腔扁平苔癬(OLP)によりセルフケアが困難となった15名(PV:5名,OLP:10名)を対象に,病勢および口腔衛生状態の評価を行い検討した。PVにおいて,病勢と口腔衛生状態の間に強い相関(r=0.751,P<0.01)が見られた。一方,OLPでは相関を認めなかった(r=0.233,P>0.05)。
PVでは,口腔衛生管理が病勢の悪化とステロイド治療による2次感染を予防できる可能性があるため,歯科衛生士がPVの急性期に介入することが重要であると考えられた。OLPでは,口腔前庭狭小や患者背景などの増悪因子が口腔衛生管理の有効性に影響を与える可能性があるため,増悪要因の除去と患者個々にあった口腔管理が重要であると考えられた。
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