日本口腔内科学会雑誌
Online ISSN : 2186-6155
Print ISSN : 2186-6147
ISSN-L : 2186-6147
23 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 山崎 裕子, 神部 芳則, 井上 千恵子, 若林 宣江, 野口 忠秀, 森 良之
    2017 年 23 巻 2 号 p. 63-68
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    今回我々は,味覚異常の訴えとして最頻の味覚減退のみを訴えた38症例(男性20症例,女性18症例)に対し,味覚閾値と味覚減退という自覚との関連性について検討した。検査項目として血液検査(亜鉛,鉄,銅)唾液分泌量検査,細菌検査,味覚検査として濾紙ディスク法検査,全口腔法を行った。味覚減退患者の臨床所見としては血清値の中央値は血清亜鉛70.7μg/dl,鉄91.5μg/dl,銅101.5μg/dl,随伴症状として舌痛症21.9%,口腔乾燥症38.3%,口腔カンジダ症32.7%であった。味覚減退のみを訴えた38症例中,全味質が分かりにくいと答えた者を全味質低下群,特定の味質のみが分かりにくいと答えた者を特定味質低下群とした。全味質低下群においては,全口腔法で全味質の閾値が上昇している症例は1症例のみで,特定味質低下群においては,塩味の味覚減退症例と塩味閾値の上昇は一致している症例が多かった。また酸味閾値の上昇は自覚として認知されにくい味質であることが示唆された。
  • 松岡 紘史, 宇津宮 雅史, 吉田 光希, 千葉 逸朗, 安彦 善裕
    2017 年 23 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,舌痛症患者の症状と健康不安との関連を検討するとともに,感情状態に健康不安が及ぼす影響を舌痛症患者と一般歯科患者で比較検討することであった。38名の舌痛症患者および100名の一般歯科患者を対象に,痛みの強さ,口腔乾燥感,Japanese version of Oral Health Impact profile-14(OHIP-14),Japanese version of Profile of Mood State-Brief (POMS-B)の緊張―不安,抑うつ―落込み,Short Health Anxiety Inventory(SHAI)を用いた調査研究を行った。その結果,健康不安は舌痛症の痛みの強さや口腔乾燥感,口腔関連QOLと関連はみられなかったが,不安状態や抑うつ状態とは関連があることが示された。
症例報告
  • 乾 眞登可, 柳瀬 成章, 堀 晃二, 伊藤 希, 黒原 一人, 新井 直也
    2017 年 23 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    高アミラーゼ血症は急性膵炎等が疑われ,精査ののち唾液腺型のS型高アミラーゼ血症として歯科を紹介される。今回,長期間原因が不明であったS型高アミラーゼ血症の2例を報告する。ともに過度の酸味嗜好があり,食事指導により改善を認めた。全身や唾液腺の疾患が否定され原因が特定されないS型高アミラーゼ血症では,食事嗜好への問診が重要であり,酸味嗜好が認められた際には食事指導が有効であることが示された。
  • 河野 多香子, 植埜 修司, 辻 要, 松島 由紀, 井関 富雄, 森田 章介
    2017 年 23 巻 2 号 p. 80-74
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)と診断された患者の両側上下顎智歯抜去を経験したので報告する。患者は37歳,男性。両側上下顎智歯部の違和感を自覚し,抜歯希望にて当科を紹介,受診した。浮腫対策として,抜歯1週前からトラネキサム酸(1,500mg/日)を内服投与させ,術当日にヒトC1-インアクチベーター(C1-INH)とトラネキサム酸の術前投与を行い,静脈内鎮静下で埋伏智歯抜去術を施行した。術後浮腫等の全身症状も認められず,経過良好であった。
  • 角田 和之, 佐藤 英和, 石井 秀太郎, 小澤 夏生, 角田 博之, 中川 種昭
    2017 年 23 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    クローン病は慢性の肉芽腫性炎症性疾患で,口腔に症状を伴うことがある。今回われわれは,歯肉腫脹が初発したクローン病を経験した。63歳女性で,歯肉腫脹を主訴に紹介受診した。経過中にアフタ性潰瘍,結節性紅斑が出現するもベーチェット病は否定された。その後,腹痛,下痢と体重減少があり,内視鏡検査にてクローン病と診断された。クローン病では口腔症状が先行することもあるため,口腔の腫脹,潰瘍病変の鑑別疾患として重要である。
  • 赤堀 永倫香, 神部 芳則, 青山 裕美, 作山 葵, 森 良之
    2017 年 23 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    Glycogenic acanthosis(以下GA)は,しばしば消化管下部で見られる白色病変である。口腔内におけるGAの報告は非常に稀であるが,今回われわれは両側頬粘膜,口底部にGAを認めた症例を経験したので,報告する。症例1:40歳女性。両側頬粘膜の白色病変を主訴に当科受診。両側頬粘膜に表面平坦,境界不明瞭な白斑を認めた。生検結果によりGAと診断した。症例2:72歳女性。口底部の白斑を主訴に当科受診。生検を施行しGAと診断した。
  • 山本 亜紀, 神部 芳則, 大田原 宏美, 柏崎 明子, 山下 雅子, 林 宏栄, 野口 忠秀, 森 良之
    2017 年 23 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    65歳の男性。繰り返す口内炎を主訴に,近医から当科を紹介され受診した。初診時,口腔内には多数のアフタを認めたが,偽膜形成は認めなかった。細菌培養検査にてカンジダ陽性であったため抗真菌薬を使用したが症状を繰り返した。外陰部潰瘍を認めていたことから内科に対診したところ,HIV感染が判明した。その後,HIV治療が開始され,現在は口腔内症状も改善し経過観察を行っている。
  • 山川 道代, 神部 芳則, 大谷津 幸生, 早坂 純一, 野口 忠秀, 森 良之
    2017 年 23 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2018/01/16
    ジャーナル フリー
    膿原性肉芽腫は皮膚や粘膜に生じる単発性の有茎性病変である。成因については不明確であるが,内分泌系の影響,感染,外傷等があげられる。今回われわれは,免疫抑制剤使用により舌縁に多発性に生じた膿原性肉芽腫を経験したので報告する。
    症例1:74歳,男性。腫瘍随伴性天疱瘡に対しステロイド療法中だった。舌縁に多発性に腫瘤状病変が出現した。
    症例2:42歳,男性。ホジキンリンパ腫に対し同種造血幹細胞移植後に移植片対宿主病(以下,GVHD)予防目的に免疫抑制剤を投与中に舌縁に多発性に腫瘤状病変が出現した。両症例とも切除生検の結果,病理組織学的に膿原性肉芽腫の診断であった。
    ステロイドあるいは免疫抑制剤による免疫力低下は,膿原性肉芽腫の発症につながる要因の1つである可能性が示された。
feedback
Top