日本口腔内科学会雑誌
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18 巻, 2 号
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原著
  • 梅澤 義一, 二宮 一智, 又賀 泉
    2012 年 18 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    カンジダ菌は口腔常在菌の一つでありながら,健常若年者における頻度に関する研究はなお十分とはいえない。そこでこの事実に基づいて,本研究では全身合併症を伴わない健常若年者を対象として,口腔からのカンジダ菌の検出率と口腔カンジダ症に関与すると考えられる複数の口腔環境因子との関係を明らかにすることを目的とした。研究対象は,同意の得られた日本歯科大学新潟生命歯学部に通学する学生108名で,平均年齢は23.5歳,男性81名,女性27名である。検査を行う前に現在の投与薬および全身合併症の有無について除外を目的に質問をおこなった。菌の分離培養にはクロモアガー培地を用い,API32C AUXにて菌を同定した。その結果,口腔から108名のうち33名にカンジダ菌が検出され,検出率は30.6%であった。検出された33名の菌種はCandida albicansが最も多く全例で検出され,1例はCandida glabrataが同時にクロモアガー培地から検出された。カンジダ菌の増殖に関与すると思われる異なる口腔環境因子とカンジダ菌検出頻度との間に統計学的有意差は得られなかった。しかし唾液分泌量のうち安静時混合唾液量の低下とカンジダ菌の検出頻度との関係は有意であった。これらの結果,唾液分泌量はカンジダ菌の増殖に関与すると考えられた。
  • 坂田 健一郎, 山崎 裕, 佐藤 淳, 秦 浩信, 水谷 篤史, 大内 学, 北川 善政
    2012 年 18 巻 2 号 p. 39-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    味覚障害の主因は亜鉛欠乏とされ,治療は主に亜鉛製剤の補充療法が行われている。しかし,実際の臨床において亜鉛製剤の補充で効果がない症例を経験することが多い。また,我々の過去の報告では心因性と同様にカンジダ症,口腔乾燥症,舌炎などが味覚障害を引き起こすことがわかってきた。そこで今回,当科外来の味覚異常を訴えた患者で,実際に血清亜鉛値が低下しているか否かを検索するために,味覚異常を主訴に当科を受診した患者(n=144:味覚異常群)と,年齢と性別が一致した他疾患患者(n=159:対照群)の血清亜鉛値,亜鉛/銅 < 0.7を比較検討した。血清亜鉛値のカットオフ値を4段階に設定した(60μg/dl未満,64μg/dl未満,70μg/dl未満,80μg/dl未満)。血清亜鉛値の平均値,中央値,最高値,最低値は,味覚異常群で,74.4,72.0,155,45.0μg/dl,対照群で,74.2,73.7,156,49.0μg/dlと両群間に差は認めなかった。血清亜鉛値のカットオフ値を60μg/dl未満に設定した時のみ,60μg/dl未満を示した症例は対照群と比較して味覚異常群で有意に多かった(味覚異常群14%,対照群6%)。亜鉛/銅 < 0.7に含まれる割合は,味覚異常群64%,対照群61%と両群間に有意差は認めなかった。本研究では血清亜鉛値が高度に低下している場合以外は,味覚異常の自覚症状と血清亜鉛値の関連は認めなかった。以上から,血清亜鉛値は味覚異常を訴える患者すべてを対象とすると必ずしも反映しないことがわかった。
  • 岩渕 博史, 岩渕 絵美, 内山 公男, 藤林 孝司
    2012 年 18 巻 2 号 p. 44-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    【背景】シェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症の新たな治療薬であるニザチジンの唾液分泌促進作用を検討した。
    【方法】アネトールトリチオンを対照とし,薬剤の投与順序を無作為割付したクロスオーバー試験にて唾液分泌量の経時的変化と副作用を調査した。
    【結果】ニザチジンの唾液分泌量は投与8週後,12週後において投与開始前に比べ有意(p=0.0084,p=0.0048)に増加した。しかし,自覚症状スコアに有意な変化はみられなかった。ニザチジンの副作用はわずかであった。
    【結論】ニザチジンはシェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症治療薬として期待できる可能性が示唆された。
症例報告
  • 中山 竜司, 丹波 嘉一郎, 渡辺 秀紀, 星 健太郎, 岡田 成生, 山下 雅子, 鹿志村 圭, 伊藤 弘人, 野口 忠秀, 小佐野 仁志 ...
    2012 年 18 巻 2 号 p. 52-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域の癌腫は全悪性腫瘍の1~2%であるが,年々増加する傾向にある。患者の心身的肉体的負担は大きな問題となる。進行例あるいは末期例は難治性疼痛を伴うことが多く,薬剤投与が困難な症例を経験することも多い。疼痛コントロールの現状について臨床的検討を行ったので報告する。
    対象は2005年4月から2010年3月までに当科及び緩和ケア部で疼痛コントロールを行った顎口腔領域悪性腫瘍患者37例である。内訳は男性17例,女性20例である。年齢は51~96歳で平均71.8歳であった。予後は原病死26例,担癌生存7例,不明3例であった。オピオイドローテーション回数は0回から4回,平均1.56回であった。病的骨折を認めた症例は6例であった。高カルシウム血症は14例に認められ,ゾレドロネートは9例,カルシトニンは2例,パミドロン酸ニナトリウムが3例に投与されていた。
  • 山下 裕美, 梯 裕恵, 池田 久住, 白石 剛士, 池田 通, 朝比奈 泉
    2012 年 18 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    膿原性肉芽腫は,皮膚,粘膜の結合組織に由来する良性非上皮性腫瘍である。われわれは,腫瘍様に急速に増殖し悪性腫瘍が強く疑われた膿原性肉芽腫の1例を経験したので報告する。症例は71歳男性で,8の抜歯約1か月後に抜歯窩からの腫瘍状病変の増殖を認め炭酸ガスレーザーによる蒸散をおこなったが,再び急速に増殖したため悪性腫瘍を疑い当科紹介となった。同時に発見されたS状結腸癌の治療を優先させた結果,歯肉の腫瘍は経過中に自然消失した。
  • 鵜澤 一弘, 坂本 洋右, 小山 知芳, 神津 由直, 小池 博文, 笠松 厚志, 小河原 克訓, 椎葉 正史, 丹沢 秀樹
    2012 年 18 巻 2 号 p. 63-67
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    後天性血友病は,第VIII因子(FVIII)インヒビターに起因したまれな血液疾患である。本報告は69歳女性の抜歯後出血を契機に発見された多因子活性低下を伴った後天性血友病の1例である。血行動態の安定化と免疫抑制剤投与により止血をみた。診断後11年経過した現在でもFVIIIインヒビターの消失には至っていないものの,血液内科専門医管理のもと創部再出血の症状は認めず経過良好である。
  • 桃田 幸弘, 茂木 勝美, 青田 桂子, 高野 栄之, 可児 耕一, 東 雅之
    2012 年 18 巻 2 号 p. 68-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/31
    ジャーナル フリー
    ワルファリン療法中に急速に増大・破裂した軟硬口蓋粘膜下血腫の1例を経験した。
    症例は76歳,男性。食事中,急に口蓋が腫脹し,呼吸困難を訴え救急搬送された。発作性心房細動,糖尿病,高血圧症でワルファリン療法中であった。正球性貧血とPT-INR値は1.52を呈した。呼吸・循環動態に異常なく,軟硬口蓋粘膜が広範に剥離していたが,圧迫止血後,粘膜弁を縫合閉鎖した。
    症例は留意すべき口腔の出血性合併症であった。
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