本研究は,1984–1987年及び2008–2011年に,Kohlberg理論に基づく発達調査を実施し,中学生の道徳判断の時代変化について検討した。その結果,24年前は対人的価値を重視する中学生が多かったのに対し,近年は集団的価値を重視する中学生が多いことが示された。また,道徳的葛藤の解決に際して,近年は段階3の観点選択比率が低下し,段階4の観点選択比率が有意に高くなっており,道徳的認知構造の時代変化が認められた。その変化要因の分析から中学校の道徳教育の方向性が示唆された。
本研究は,小学生の学校生活スキルと学級生活満足感との関連を検討した。その結果,学校生活スキルが高ければ,特に承認感が高まることが示された。また,学級生活満足群は社会領域や健康領域の学校生活スキルが高いなど,学級生活満足感による群分けによる特徴が明らかとなった。さらに,「満足群の少ない学級」では,健康領域に含まれる学校生活スキルが低いことなど,学級の特徴も示された。
本研究は,大学生を小学校にメンタルサポート・ボランティアとして派遣する実践をもとに,参加した学生の体験プロセスを明らかにすることを目的とした。ボランティア活動を体験した13名の大学生を調査対象として半構造化面接を行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。その結果,50の概念と9つのカテゴリーが得られ,学生のボランティア体験のプロセスとそのプロセスを支える要因が明らかとなった。その結果をもとに,学生ボランティアをサポートするためのシステムについて,受け入れる学校側と送り出す大学側から考察した。
中学生を対象とし,テスト不安と学習行動との関連が自己効力感の高さによって異なるかを検討した。研究1では,自己効力感が中くらいの群においてのみ,テスト不安が高い場合に学習時間が長かった。研究2では,科目を英語に限定して調査した結果,自己効力感の高い群において,テスト不安が高い場合にテスト前の学習時間が長かった。また,自己効力感の低い群において,テスト不安が高い場合に先延ばし行動が多かった。
本研究では,日中両国の中学生を対象に性差と学年差によって日中の過剰適応傾向を検討した。両国の共通点としては,女子が男子より過剰適応傾向が高いことが挙げられる。相違点としては(1)低学年において,日本のほうが「自己抑制」と「自己不全感」傾向が強く,中国のほうが「期待に沿う努力」,「他者配慮」傾向が強いことが明らかになった。(2)日本では学年差がみられなかったが,中国では学年差がみられた。これらの点について,日中の社会的・文化的背景から考察した。
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