本研究は,心の問題が深刻になり症状の悪化が懸念される生徒を,支援チームが専門医療機関(以下,専門医療という)へつなげる判断について研究をすすめた。研究1では,専門医療へつないだ事例1のなかから,症状や問題が好転した事例を対象に,つなげる基準がどこにあったかを分析した。その結果,「身体・精神症状」と「授業参加」から検討されていた。研究2では,それらの2要因を軸とした基準の「モデル」(以下:「つなぐモデル」)を作成し,その信頼性を現職教師や大学院生を対象に調査した。その結果,モデルを活用した基準の判断が研究者と調査者の間に84.4%の一致率が得られ,専門医療へつなぐ一つの指針になることが示唆された。
本研究の目的は,特別支援教育の巡回相談員が学校管理職などに与える満足感の要因を明らかにすることである。そのため,小・中学校の管理職と特別支援教育コーディネーターを対象として,巡回相談員への満足感に関する質問紙調査を2013年に実施した(n=857)。その結果,巡回相談員の「対人関係影響力」が満足感にもっとも影響していたことが分かった。さらに,巡回相談員が「肯定的配慮」と「専門知識」を身につけているとき,「対人関係影響力」も強まることが分かった。
本稿は中学2年生の女子(以下Cl)に行った認知カウンセリングによる学習支援の実践報告である。Clは文字を使った式の理解が不十分で,数学全般に対する苦手意識も強かった。そこで再活性化説にもとづく反復学習と“問題が解けた”という成功体験を得られるような支援を行い,知識の定着と苦手意識の克服を図った。その結果文字に関する理解が促進され,またClの発言からは自己効力感の向上と苦手意識を克服した様子が見られた。
本研究は,学校心理学における一次的援助サービスの促進的援助として,児童が自らの「道徳的強み」を自覚し,活用する短期間の介入プログラムを実施し,その効果について探索的に研究したものである。その結果,児童は「道徳的強み」を自覚することができ,生活全般で活用することが可能であった。また,活用の結果,多くの児童が充実感や満足感を感じ,well-beingも向上していた。本研究から,既存の学校教育のカリキュラムで行われている道徳教育や特別活動と関連付けて「道徳的強み」を活用する実践を行う可能性について検討した。
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