人口学研究
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28 巻
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表紙・目次
論文
  • 永瀬 伸子
    原稿種別: 本文
    2001 年 28 巻 p. 1-15
    発行日: 2001/06/01
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー
    本稿は,1995年11月の『家計調査』と『貯蓄動向調査』の同一世帯標本をリンクさせて作成した家計・資産両面の個票データを基に,子どもの短期および長期のコストの推計を試みたものである。まずエンゲルの食費シェア関数を用いて子どもを持つ短期のコストを家計簿から推計した。夫婦のみからなる世帯と同じ消費水準を達成するために,6歳以下児1人のいる世帯で約1割,小学生以上の子ども1人は約25〜30%の補償所得が必要,また子どもコストは小・中学で上がる山型を描くとの結果を得た。なお同じ方法で,共働き世帯は,家事労働の帰属所得の減少により,同額の消費支出を行っている妻が無業の世帯と比べ,5〜10%の補償所得が必要との結果も得た。ただしエンゲルモデルは,子ども数や世帯収入を外生変数として扱うから,公的年金の充実や妻の就業機会の拡大が,長期の選択としての子ども数に与える影響はわからない。そこで子どもを持つことが,金融・実物資産蓄積および妻の就業選択とどうかかわるか,クロス集計,最小自乗法,プロビット法,二段階最小自乗法を用いた分析を行った。子ども数を外生変数とすると,子ども数が増えるほど金融資産蓄積は低下し,また子ども数が増えるほど持ち家居住が増加する。しかし金融総(純)資産と子ども数の決定を内生化し,二段階最小自乗法で推計すると,因果関係は,子ども数の増加が世帯の金融資産を減らす方向であって逆ではないことが示された。子どもが貯蓄と代替的な老後資産として位置づけられ子どもの投資収益が下がったため少子化が進んだという仮説は否定された。ただし子どもは40歳台前半までの夫婦の金融総資産を1人あたり300万,純資産で600万円ほど低下させる。老後の夫婦の生活水準を低下させ,短期のみならず長期のコストも高いことが示された。なお住居形態は子ども数および資産蓄積に大きい影響を与える。持ち家,公営借家・公社・公団住宅居住の世帯では,民間賃貸住宅居住世帯に比べ,有意に子ども数が多く,一方社宅居住は大きく金融資産蓄積を高める。他方,女性の勤労収入の増加は金融資産,実物資産蓄積を有意に増やすが,子ども数に対しては,非有意ながら負の影響を与えることが示された。
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