人口学研究
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表紙・目次
論文
  • 福田 節也, 余田 翔平, 茂木 良平
    原稿種別: 論文
    2021 年 57 巻 p. 1-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/18
    [早期公開] 公開日: 2021/07/07
    ジャーナル フリー

    「『誰が誰と』結婚するのか」という問いは,結婚における重要な問題でありながら,日本の人口学における知見は限られている。また,この問題に中心的に取り組んできた階層研究者の間でも,日本における学歴同類婚の趨勢については必ずしも一致した見解が得られてこなかった。本稿においては,1980年から2010年までの国勢調査の個票データを用いることにより,日本における学歴同類婚の趨勢を描き出し,その趨勢の変化と社会的・人口学的な含意について解説を加えた。妻30–39歳の日本人夫婦を対象として,記述統計ならびにログリニア分析を行ったところ,われわれの分析結果は,1)学歴同類婚ならびに女性の学歴上方婚の連関が弱まっていること,そして2)女性の学歴下方婚の連関が強まっていることを示した。また,学歴同類婚の連関の強さを学歴別にも分析したところ,3)大学卒の女性において下方婚の連関が強くなっているという結果を得た。これらの結果は,日本や中・先進諸国における学歴同類婚の世界的な新潮流と一致するものであった。本分析で示された学歴同類婚における変化は,どのように説明することができるのであろうか。本稿では,女性の高学歴化と前後して生じた,①グローバル化による労働市場の二極化(雇用の非正規化)と②ジェンダー革命による女性の経済的役割の変化という2つの社会変動との関連を指摘した。加えて,日本で大卒女性の下方婚がより生じやすくなっていることについては,大卒男性において非正規就業の割合が増えたことに伴い,大卒男性の所得分布が下方に推移し,大卒とそれ以外の学歴の者との経済的な境界が一部曖昧となりつつあることも一因ではないか,との見方も示した。すなわち,これらの社会情勢の変化によって,高学歴女性をはじめとする稼得能力の高い女性の結婚市場における魅力が向上した。また,従来よりも男性の学歴と収入の関係が曖昧となった結果,高学歴の女性の一部においては,結婚相手の学歴にこだわらずに結婚する者が出てきた。そのため,最近の研究にみられるように大学卒女性の婚姻率が上昇し,女性の学歴下方婚,とりわけ大学卒女性の下方婚がより生じやすくなった(Fukuda et al. 2019)。現時点においては仮説にすぎないが,本稿における分析は,このようなシナリオと整合的であった。最後に,本稿における分析が示す社会的含意について述べる。今日,多くの中・高所得国においては,男性よりも女性の大学進学率が高い状況にある。先行研究によると,世界的な傾向として高等教育進学率における男女差が逆転することにより,かつて伝統的なパターンであった女性の学歴上方婚が減少し,学歴下方婚が増加している。日本においては,4年制大学への進学率で見る限り,その差は縮まりつつあるものの,これまでのところ従来の男女差は逆転していない。しかし,われわれの分析結果は,夫妻の学歴選好の面において,すでに日本においても同様の変化が生じつつあることを示した。欧米では高等教育への進学における男女差の逆転により,女性を主な稼ぎ手とする世帯の増加,平等主義的なジェンダー態度の拡散,妻学歴下方婚カップルにおける離婚率の減少といった社会規範の変化がみられるという(Esteve et al. 2016)。女性の高学歴化に加えて,わが国では人口減少局面への転換によって労働力人口が先細りつつあり,主に男性のみが就業して家族を養う性別役割分業モデルは日本のマクロ経済にとって望ましいものではなくなっている。長期的な人口減少のトレンドは,政策(例:女性の活躍推進,保育所定員の拡充等)や人々の経済合理性(例:共働き志向)に作用することによって,ジェンダー規範の変容を今後も不可逆的に推進していく一因となるものと思われる。女性の高学歴化のさらなる進展によって,日本においても欧米と同じような社会規範の変化がみられるのか注視していく必要があるだろう。

研究ノート
  • 丹羽 孝仁, 西本 太
    原稿種別: 研究ノート
    2021 年 57 巻 p. 21-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/18
    [早期公開] 公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    ラオス国内の人口移動に関する研究には,農村間人口移動と都市-農村間人口移動の関係や都市への恒久的な移動プロセスに関する議論が不足している。そこで本稿は,農村内の人口動態と移住者のライフコースを関連づけて,ラオスにおける都市-農村間人口移動の特徴を検討した。ラオス北部の縁辺部に位置する低地の一農村を事例とし,全42世帯と村からビエンチャン都へ移住した22人に対するインタビュー調査を実施した。分析の結果,ラオスでは,国家政策として高地から低地への農村間移動が促されており,これが農村における人口動態に大きな影響を及ぼしている。結果として,都市への移動が活発化しているといえる。また,都市への移住者たちは,低熟練労働力を求めるビエンチャンの都市労働市場に参入し始めるが,その後は就業条件や生活基盤の改善を目指して転職し,都市定住化を進めていく。同時に,出身村との関係を維持することで移住のリスクを低減しようとしながらも,ビエンチャンでの生活基盤が強固になるほど,村との結びつきは弱くなり,恒久離村へ切り替わっていく。そのきっかけは,労働市場との関係だけでなく,子どもの教育とも深く関わっている。

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