本研究は,2004年における総務省統計局「全国消費実態調査」の2人以上世帯の匿名データ(ミクロデータ)を用いることにより,教育費負担を授業料等と補習教育に分け,教育段階別(保育園・幼稚園・小学校,中学校,高等学校)に教育費負担の決定要因の影響について検証を行った。ここでは,決定要因として学校の種類(私立学校と国公立学校),子どもの数に焦点を当てた。その結果,以下の点が明らかにされた。第一に,子どもが増えるほど教育費負担は増え,教育費負担は子どもが0人から1人に増える際に係る負担が一番大きいことが明らかとなった。また,中学校を除くと,授業料等の教育費負担の方が補習教育よりも大きいが,中学校については補習教育の方が授業料等よりも大きいことが明らかとなった。さらに,授業料等では高等学校の負担が一番大きいが,補習教育では中学校の負担が一番大きいことも示された。第二に,国公立学校と比較すると,授業料等については私立学校に通うことによる負担は強まるが,補習教育については負担が弱まることが明らかとなった。これらの効果を合わした純効果も計算したところ,授業料等の負担を強める効果は補習教育の負担を弱める効果よりも大きく,純効果としては負担を強める効果が見られた。すなわち,授業料等と補習教育の教育費負担を合わせると,私立学校の負担は国公立学校の負担よりも大きいことが示されている。
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