脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
14 巻
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レクチャー
症例報告
  • -足圧中心位置を振動呈示することで体性感覚情報を補完する ヒューマン・マシン・インターフェースの開発-
    安田 和弘, 佐藤 勇起, 貝吹 奈緒美, 原島 宏明, 新見 昌央, 岩田 浩康
    2014 年 14 巻 p. 9-17
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2018/11/02
    ジャーナル フリー

    本症例報告の目的は、足圧中心位置を骨盤帯にバイオフィードバック(BF)する体感型バイオフィードバック装置が重度深部覚障害を有する右片麻痺患者の立位姿勢制御に与える影響を検証することであった。これまで我々は、ヒトの立位姿勢制御における知覚-運動ループの破綻を補うために、脳のクロスモーダルな可塑性に着目した感覚入力型のヒューマン・マシン・インターフェース( HMI )を開発してきた。今回、重度深部覚障害を有する患者へ装置を適応する機会を得たので、触圧覚を代用して足圧中心位置を骨盤帯に振動呈示することが深部覚障害を有する患者の姿勢制御能に与える影響を検証した。対象は、左被殻出血により重度深部覚障害を有する右片麻痺患者1例であった。BF装置を用いた介入(5回)および前後のテスト(各3回)、全11トライアルを実施し、姿勢制御能を示す指標として重心動揺を計測し、その推移を記録した。結果として、BFを呈示したことで一過性に姿勢動揺は増加したものの、介入5回目にはプレテスト時の約0.5倍の値を示した。また、この傾向は特に左右方向の動揺で顕著であった。この結果は脳損傷により重度の深部覚障害を有する患者が、触圧覚による付加的バイパス刺激を介して、知覚-運動ループを再構築できた可能性を示唆する。症例報告のため、今後は対象者を増やすことで一般化に向けての検証実験を要する。

  • ~長期間のリハビリテーションにより日常生活活動が自立に至った症例~
    若旅 正弘, 沼田 憲治
    2014 年 14 巻 p. 19-26
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    今回,両側前大脳動脈の梗塞により両側補足運動野及び両側前部帯状回が損傷された症例のリハビリテーションを経験したので報告する.症例は発症より約2ヶ月後に当院回復期リハビリテーション病棟に入院した.入院時ベッド上での体動・発話はなく,著明な自発性の低下を認め日常生活活動全般に重度~全介助を要していた.しかし約8ヶ月間にわたる長期間のリハビリテーションにより発症から約10ヵ月後,日常生活活動が自立した.本症例は長期的なリハビリテーションにより日常生活活動が自立した点でこれまでの報告とは異なっており,貴重かつ興味深い報告であると考える.今後,両側補足運動野及び両側前部帯状回が損傷された症例のうち,どのような症例で改善が期待できるのか知見の蓄積が必要であると思われる.

  • 大塚 裕之, 石井 大典, 松澤 大輔, 清水 栄司
    2014 年 14 巻 p. 27-30
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    右視床出血後に左片麻痺を呈した症例において,非麻痺側上肢運動の鏡像観察により,麻痺側上肢の鏡像運動が誘発された症例を経験した.症例は,80歳代男性で左上肢に軽度運動麻痺と重度感覚障害を認めた.運動課題は,鏡を症例の垂直に置いた状態で,症例に鏡を観察しながら右手指でペグを把持し前方の検者へ手渡す複合運動であった.課題中,症例に対し左上肢を安静に保つよう指示していたが,右上肢運動と同期するように不随意な運動が認められた.このことから,本課題で認められた不随意運動は,鏡像観察に伴う中枢神経系の賦活によって誘発された鏡像運動と考えられた.

  • -Gerstmann症候群,肢節運動失行,脳梁失行の合併と考えられた1例-
    杉山 聡, 菅晋 太郎, 笹田 直子, 松澤 和洋, 高杉 潤
    2014 年 14 巻 p. 31-34
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    左頭頂葉に脳梗塞を発症した症例において、上肢の動作・行為場面の際に左右間で質の異なる異常所見を認めたため分析を行った。臨床所見は、左右肢ともに運動麻痺、感覚障害は極軽度にも関わらず、左上肢は口頭指示動作・模倣動作時に、右上肢では物品操作等で顕著な拙劣さを認めた。また左右識別、自身の手指の呼称や同定、計算障害も顕著であった。頭部画像所見では、左頭頂葉から一部後頭葉、左右脳室周囲、脳梁に病巣を認めた。以上より、本症例の上肢の異常所見は、左頭頂葉損傷によるGerstmann症候群、深部白質病変に基づく左運動前野と体性感覚野の両者を結ぶ皮質下神経線維の離断による右上肢の肢節運動失行に加え、脳梁体部と交連線維の離断による左上肢の観念運動失行(脳梁失行)を呈していることが推察された。Gerstmann症候群と観念運動失行の合併例の報告は見受けられるが、Gerstmann症候群、肢節運動失行、脳梁失行を合併した症例の報告はなく、特異な症例であることが推察される。

総説
  • 岡崎 俊太郎, 武田 湖太郎
    2014 年 14 巻 p. 35-40
    発行日: 2014/06/25
    公開日: 2018/10/22
    ジャーナル フリー

    吃音は言葉が円滑に話せない疾病であり,病因として主に遺伝的要因と環境的要因が挙げられ,これらの要因から生じる脳の器質的および機能的な変容によって生じると考えられている.吃音のリハビリテーションにおいて,自らの音声に対して人工的に遅延または変調させるなどの処理を行い聴覚へフィードバックする方法が用いられることがあるが,近年この手法に対して脳活動がどのように変化するかを調査した報告が増えてきている.本稿は発達性吃音の要因について概観し,聴覚フィードバックによるリハビリテーションについて紹介する.

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