下肢の拮抗失行は上肢に比べて極めて報告が少なく, その存在も未だ明らかとなっていない. 今回, 下肢の拮抗失行の存在を示唆する症例を経験したので報告する. 症例は62歳, 男性, 右手利き. 今回発症7日後のDWIでは, 脳梁膨大部から体部後方にかけてと右前頭葉内側部, 右頭頂葉皮質下に新たな高信号域を認めた. 神経心理学的所見として脳梁離断症状, 上肢の拮抗失行を認め, 道具の強迫的使用, 病的把握現象は左右手ともに認めなかった. 靴脱ぎ動作では, 右足の遂行に対し, 左足は靴を脱いだ直後に履く行為が見られた. 本症例より, 拮抗失行は上肢における物品使用など高次な認知動作で出現するものであり, 歩行や基本動作など粗大な運動を阻害しないが単肢の随意運動の障害(錯行為)が問題となりえることが推察される,
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