脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
5 巻
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教育講座
報告
  • 高取 克彦, 梛野 浩司, 岡 真由美, 代 智恵子, 肥田 光正, 福島 祐子, 松尾 篤, 庄本 康治
    2005 年 5 巻 p. 15-19
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    脳出血後左上肢に運動麻痺が残存した慢性期1症例に対して, 上肢機能改善を目的としたMirror Therapyの即時的効果の有無を検証した. 研究計画は操作交代法を用いたシングルケース, デザインで実施し, 統計解析にはランドマイゼーション検定を用いた. 評価項目は操作導入期(Mirror Therapy)および基礎水準期(コントロール運動)前後の①麻痺側手背屈筋活動変化, ②運動前反応時間(Premotor Reaction Time:PMT)変化, ③Index-finger Tapping Test(ITT), ④麻痺側最大握力変化の4項目とした. 結果としてMirror Therapyはコントロール運動に比較して, 麻痺側手背屈筋活動変化とPMTを有意に改善させた(P=0.036とP=0.016). 両介入前後のITTおよび最大握力変化には差が無かった. 今回の結果からMirror Therapyは麻痺肢における筋活動を改善させ, 運動再学習に関連付けられる即時的効果を有する可能性が示唆された.
  • 森本 歩, 久保田 競, 沼田 憲治, 泰羅 雅登, 土師 知己, 臼井 信男
    2005 年 5 巻 p. 21-25
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    頭頂葉は視覚情報, 体性感覚情報, 前庭覚などの情報を統合し, 自身の姿勢・運動の状態の把握と正確かつ円滑な運動の遂行に重要な役割を有する. 今回, 我々は上肢の位置覚誘導課題時(験者が被験者の一側の手関節を他動的に動かし, 被験者が自身の反対側の手関節を左右対称の位置に動かす課題)の機能的MRI(以下fMRI)から, 主として頭頂葉の役割について検討した. 実験の結果, 位置覚課題では両側頭頂間溝部が最も強く賦活され, その他一次運動体性感覚野, 補足運動野などが賦活された. 左右手関節の位置の照合を行っているときの脳の活動は, 頭頂間溝部を中心とした頭頂葉が賦活された. 以上の結果から, 位置覚を誘導因子とした運動時には頭頂間溝部が関節位置と遂行中の運動を照合する, いわば関節運動をモニターする役割を果たしていると考えられた.
  • 小笹 佳史, 沼田 憲治, 土師 知己, 泰羅 雅登
    2005 年 5 巻 p. 25-28
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    運動は, 多種多様な環境の中で, 個体の欲求などを充たすため, 環境に働きかける手段として生ずる. また, 我々に与えられる刺激は, いつもこれに気付くとは限らず, 刺激に積極的に注意が向けられてはじめて知覚的な意識が成立する. 我々は, 刺激誘発で始まる運動に関して, motor setとsensory setの2つの内的過程が必要であると考え, 注目している. 今回, 足背部に触覚刺激を与え, それを合図に足趾背屈運動を行ったときの直接賦活する大脳皮質領野以外の活動, つまり内的過程をfMRIを用いて調査した. その結果, 両側二次体性感覚野(以下SII)と補足運動野(以下SMA), 片側一次運動野(以下M1)の賦活が認められた. SMAとM1に関しては諸家らの報告と一致し, 運動開始前から運動準備として賦活したと考える. また, SIIに関してはtactile attentionやtactile memoryに関与する報告があることから, sensory setとしての役割が推察される.
  • 村山 尊司, 沼田 憲治, 高杉 潤, 宮本 晴見
    2005 年 5 巻 p. 29-33
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    頭頂葉損傷により生じる臨床症状は極めて多彩であり, これまで多くの認知障害や高次脳機能障害が報告されている. また, 肢節運動失行や, 視覚性運動失調など上肢の運動障害の分析などから, 上肢運動に関わる頭頂葉の機能的な役割について示されている. 一方, 寝返り動作や立位保持など全身性の運動と頭頂葉の関わりについては不明な点が多く残されている. 本稿では, 全身性運動に伴う頭頂葉の関係について, これまで報告された症例や, 神経生理学的研究の知見, 自験例を提示しその役割について推察した. 自験例では, 運動麻痺や一次的な感覚障害が軽度にも関わらず, 寝返り動作や垂直位での立位保持に問題を認めていた. 先行例との比較において症候学的な特徴は近似し, 視覚性刺激に供応した全身の体軸の感覚異常や, 自己の身体位置感覚機能の障害を機序とした仮説に沿うものであると考えられた. また, 自験例においては頭頂連合野による多種感覚の統合過程の障害に起因することも推察されたため, 頭頂葉損傷に伴う全身性運動障害については多様な症状, メカニズムが存在することが示唆された.
  • 宮本 晴見, 沼田 憲治, 村山 尊司, 高杉 潤
    2005 年 5 巻 p. 35-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    左前頭葉内側面損傷によって, 右上肢の間欠性運動開始困難症を呈した71歳, 右利き男性を報告した. 上肢の運動開始困難を検討している先行例と本症例の共通した障害領域は前頭葉内側面であり, 間欠性運動開始困難の責任病巣であることを示唆する. 前補足運動野や補足運動野, 帯状皮質運動野といった前頭葉内側面の機能は内的動機付けに関連した情報処理に重要な役割を果すことから, 間欠性運動開始困難のメカニズムが内的動機付けに起因した障害であることが示唆される. 前補足運動野にあたる領域において補足陰性運動野の存在が明らかにされている. 間欠性運動開始困難は運動の開始に関わる機能だけでなく, 運動の停止に関わる機能も含んだ前補足運動野の機能的障害に起因したものである可能性が推察される. 一方, 前補足運動野を含む補足運動野, 帯状皮質運動野の回復過程における不安定な活動の結果生じたとも考えられるが推測の域を出ない.
  • 増田 司, 平野 正仁, 本田 哲三
    2005 年 5 巻 p. 39-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    注意障害を含めた高次脳機能障害は訓練場面よりも日常生活場面に顕在化することが多いと指摘されているが, 一方で動作時における注意機能の評価法は現在のところ確立されていない. そこで今回は脳損傷後片麻痺患者の歩行時における注意機能を探るため, 健常者10名, 脳損傷患者13名を対象に注意機能検査法を机上と歩行時に実施して結果を比較した. Dual task paradigmに基づいた検討の結果, 脳損傷患者では歩行時に数唱問題の得点が有意に低下した. また, 歩容の不安定化など歩行単独課題では見られない現象が観察された. これにより脳損傷患者では歩行によって外界に対する注意が低下する可能性があり, 歩行自立に向けた評価として歩行時における注意機能評価を加える必要性があると思われた.
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