脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
11 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
教育講座
レクチャー
症例報告
  • 安田 和弘, 藤懸 大也, 吉田 啓晃, 大平 雅弘, 下津 光史, 樋口 貴広
    2011 年 11 巻 p. 31-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は, 鏡を用いて健常手の触刺激場面を観察させ, 麻痺手の体性感覚を誘発(referred sensation:RS)させることが, 半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)を有する患者の空間的な正中位判断に及ぼす影響を検討することであった. 対象は, 右被殻出血により左USNを有する左片麻痺患者1例であった. 鏡を用いてRSを誘発させる介入課題を10分間施行し, 介入課題前後の空間的な正中位判断の正確性を測定した. 空間的正中位判断テストは, ディスプレイに呈示された2個の長方形の間に生じた空間の正中位を, マウスクリックで同定させた. 長方形間に生じる空間のサイズを3条件設定し(8cm, 16cm, 24cm), ランダムな呈示順序で計30試行の測定を行った. 実験の結果, 鏡像の健常手の触刺激観察を実施して3分後にRSが生じ, 8分後まで徐々にその主観的感覚が強くなり, 健常側に対し5割の感覚が誘発された. さらに, RS誘発の介入前には空間的正中位の右偏向が認められたにもかかわらず(右方向に1.44±1.66cm), 介入後には有意に改善された(0.3 ± 0.51cm). 本症例検討から, 鏡像の健常手の触刺激観察は麻痺手の体性感覚を誘発させ, それに付随してUSNを改善させる可能性が示された.
  • 古関 一則, 河野 豊, 沼田 憲治
    2011 年 11 巻 p. 37-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    Mirror therapy(以下MT)は鏡を用いて視覚的な錯覚を与えることにより, 脳卒中片麻痺患者における麻痺肢の機能改善のために用いられている治療法である. 本研究の目的は回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者1例に対してMTを実施することによる即時的な効果を検討するとともに, 長期的に麻痺側上肢機能, 日常生活での麻痺側上肢使用頻度に向上が見られるかを検討することとした. 結果として, MT介入の即時変化として実施直後と比べ運動機能や感覚機能共に15分後により向上が認められ, MTによる即時効果には多様性がある可能性が示唆された. また, MTを実施することによりベースライン期に比べ, 介入期に麻痺側上肢機能の回復曲線が上向きとなり, 日常生活での自覚的な麻痺側使用頻度についても向上が見られた. これらの結果から, 反復したMTによる介入は即時的な効果のみならず長期的にも効果が持続する可能性が示唆された.
  • 大塚 裕之, 石井 大典, 高杉 潤, 村山 尊司, 清水 栄司
    2011 年 11 巻 p. 45-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/10/30
    ジャーナル オープンアクセス
    中枢神経疾患において, 稀に対側性模倣性連合運動(Mirror movement; 以下MM)や同側性模倣性連合運動(Homolateral imitative synkinesia; 以下HIS)を認めることがある. しかし, 両者の連合運動の出現方向を合わせて検討した報告はない. 今回, 右視床出血後に麻痺側上肢にMMおよびHISを呈した症例を経験した. 症例は80歳代男性で, 左上下肢に軽度運動麻痺と重度感覚障害を認めた. MMは座位にて右小指外転運動を行い, 左右の前腕を回内・回外位に変えて検討した. その結果, どの肢位においても右小指外転運動に伴い左小指外転運動が誘発された. また, HISは臥位にて左足関節底屈―背屈運動を行い, 左上肢の前腕を回内・回外位に変えて検討した. その結果, どちらの肢位においても, 足関節背屈運動に伴い手関節背屈運動が誘発され, 足関節底屈運動に伴い手関節掌屈運動が誘発された. これらの結果から, 本症例における連合運動は, 麻痺側上肢の内部座標に依拠して発現した可能性が示唆される.
feedback
Top