脳科学とリハビリテーション
Online ISSN : 2432-3489
Print ISSN : 1349-0044
12 巻
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教育講座
  • 小村 豊
    2012 年 12 巻 p. 1-6
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    私たちが, 何気なく, 手に入れている視覚, 聴覚, 触覚などの感覚情報には, すべて, 視床が関連している. その証拠に, 視床の領域が局所的に損傷されると, ある感覚情報が失われたり, 変質したりすることが知られている. 視床は, 感覚器と大脳皮質をつなぐ位置にある. では, 具体的にどのような役割を果たしているのか? 本稿では, 視床機能に関する伝統的な見方から, 脳システム全体の中で, 素子としての視床ニューロン群が, いかにふるまっているかという最新の知見を紹介することで, 今後の展望を提供したい.
レクチャー
研究報告
  • 神谷 修平, 武田 湖太郎, 山田 亨, 梅山 伸二, 近藤 国嗣, 大高 洋平, 大須 理英子
    2012 年 12 巻 p. 13-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    近赤外分光法(NIRS)はその低拘束性から, さまざまな動作中の脳機能計測が可能とされるが, 計測時におけるプローブの頭皮に対する角度の変化により脳活動とは無関係なNIRS信号を計測してしまうことがある. 本研究は, プローブの角度変化とそれに依存してNIRS信号に混入するアーチファクトの関係について検討した. 光散乱板上でNIRSの送光・受光プローブを傾斜させ, NIRS信号として計測されるヘモグロビン濃度長変化量(Δ[Hb])を計測した. プローブに三次元動作解析装置用マーカを貼付して傾斜角度をNIRS計測と同時に計測した. またヒトを対象とし, 光ファイバへかかるテンションがΔ[Hb]へ及ぼす影響を光ファイバ固定の有無で比較した. 送光・受光プローブ共に, 傾斜角度に依存したΔ[Hb]の変化を示し, 傾斜角度とΔ[Hb]は有意に相関した(p<.01). ヒトを対象とした計測においては, 光ファイバを固定しなかった場合は固定した場合よりもテンションの影響を受けた. 傾斜角度が1度程度でも脳活動に依存した変化として報告されているΔ[Hb]と同等の値が計測された. プローブの動きによりアーチファクトが多大に混入する可能性があるため, プローブの固定に注意が必要であることが示された.
  • 戸坂 友也, 沼田 憲治, 石原 未来, 太田 直樹
    2012 年 12 巻 p. 19-26
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    脳は, 従来考えられていた以上に可塑性を有し, 脳損傷後の機能回復に関わることが報告されている. 中でも近年, 脳卒中後の麻痺の回復メカニズムの1つとして, 非損傷半球の関与が示唆されている. さらに, 脳卒中片麻痺(cerebrovascular attack;以下, CVA)患者の麻痺の回復には, 非損傷半球からの同側性下行路の役割が重要な因子と考えられている. しかし, その詳細については明らかではない. そこで本研究は, 単発の経頭蓋磁気刺激装置を用いて, CVA患者の非損傷半球の活動動態と, とりわけ同側性下行路の関与について調べることを目的とした. 対象は, 軽度から重度の運動麻痺を呈した脳卒中片麻痺患者群7名(以下, CVA群)と健常者群7名(以下, Control群)とした. CVA群では非損傷半球を, Control群では左半球を頭皮上から磁気刺激し, 上腕二頭筋の運動誘発電位を記録した. その結果, CVA群の対側性運動誘発電位はControl群と比べ有意に大きかった. また, 同側性運動誘発電位(ipsilateral motor evoked potential;以下, ipsMEP)はCVA群, Control群とも7名中4名に出現した. このことから, CVA群の非損傷半球運動皮質が高い活性化を示し, さらに, 同側性下行路が出現したことより, 半球間抑制の不均衡が生じた神経活動を反映したものと推察される. 加えて, ipsMEPの出現した4名のCVA患者は軽度麻痺に分類された症例であった. そのため, 機能回復に同側性下行路が関与する可能性が推察される.
症例報告
  • 北郷 仁彦, 村山 尊司, 戸坂 友也
    2012 年 12 巻 p. 27-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2018/10/29
    ジャーナル オープンアクセス
    病巣と同側肢に運動失調と軽度運動麻痺を呈した視床出血一例について, 画像所見と臨床徴候から分析を行った. 発症2ヵ月後のCT画像で視床中央外側部から放線冠にかけて低吸収域像を認めた. 発症2ヶ月後の神経学的所見は意識清明で, 右半身の錘体路徴候, 軽度の運動麻痺, 企図振戦を主体とした小脳性運動失調が認められた. 感覚は深部覚, 表在覚とも左右差は認められなかった. 動作所見は移乗, 立位, 歩行は監視から軽介助レベル, 動作時に右上下肢の協調運動障害がみられた. 本症例の運動障害は, 損傷部位と神経学的所見の特徴から視床外側(視床外側腹側核:VL核)の損傷に起因したAtaxic Hemiparesisであることが推察された.
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