AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
4 巻, L1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 阿部 雅人, 全 邦釘
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 1-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    インフラマネジメントのデジタルトランスフォーメーション(DX)では,ICTやAI技術等の先端技術と土木技術の学際的な連携が進んでいる.そこで,インフラマネジメントの高度化・スマート化にあたって期待が寄せられている衛星を活用した計測技術や衛星からの情報の活用を取り上げ,先進的な研究開発を進めている研究機関や自治体・企業等の取り組みを紹介し,今後のインフラマネジメントにおける衛星活用のあり方について解説する論文を収集・掲載した.

  • 冨井 直弥
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 3-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    JAXAは衛星SARによるインフラ変位監視技術の開発を実施してきた.用いている衛星は「だいち2号(ALOS-2)」である.Lバンド合成開口レーダを搭載しているため,高分解能モードがあり,空間分解能3m,観測幅50kmである.Xバンドに比較して波長が長く,雲・雨・葉の透過度が高い.計測原理は,衛星-地表面の距離変化を2回以上の観測の位相差から相対変位を求める.例えば河川堤防の定期点検は,現在目視にて実施しているが,JAXAは点検前に衛星による一次スクリーニング結果を反映し,変位検出箇所を重点的に目視点検する方法を提案した.また,衛星データを使ってインフラの変位を自動解析できるツールを開発.航空レーザ測量や水準測量と比較して,SAR解析は現地作業・機材準備の必要もない.計測範囲も50km四方まで可能.計測精度はmmオーダである.

  • 酒井 直樹, 田口 仁, 六川 修一
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 9-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    災害時の最大のニーズは「どこで何が起きたのか」の把握である.その情報がすぐに災害対応者の意思決定に必要な情報として提供されるべきである.そのためには各種衛星に関して「いつ・どこのエリアをどの衛星で観測するか」をマネジメントする必要がある.特に,広範囲にわたる災害では必要不可欠な技術である.そのためには,各衛星の特性を知った上で,複数機体制の実現とその運用管理の一元化が求められる.緊急観測依頼から衛星データ入手までの時間を短縮する必要もある.観測の精度や手順を標準化することも求められる.SAR衛星や小型衛星を使い,AI解析技術の確立することが重要である.今後ユーザーのニーズに応じて衛星データの選択が可能となり,必要な時に入手できるようになることを踏まえ,平時はインフラのモニタリングをして情報を蓄積し,災害時にはその延長で対応できるようなフェーズフリーな利用が進むと考えられる.

  • 渡邉 英徳
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 19-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    ロシアによるウクライナ侵攻について,民間衛星画像会社が膨大な画像を配信している.しかしながら,ウクライナの土地勘がなければ,どこの画像かわからない.そこで筆者は共同で,「ウクライナ衛星画像マップ」の取り組みを始めた.1枚1枚の衛星画像について,どこでどのような画角で撮影されたのかを特定し,アーカイブをつくるものである.しかし,光学衛星の画像は曇っていると得られず,民間衛星画像会社の画像が出てこない場合もある.そこで注目したのがSARのデータである.オープンデータをダウンロードしてSARデータを集めて重ねることで,そこで起きたことを検証することができた.この手法は,Photoshop程度のソフトがあれば誰でも実践可能である.自分自身でオープンデータを処理し,大きな権力や大きな嘘に対応していくようなうねりができればと願う.

  • 岡田 俊樹
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 23-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    豊田市では年間約40kmの水道管路を入れ替えていますが,効率的かつ効果的な管路更新が喫緊の課題でした.そのため,令和2年度に水道管路の更新の優先順位づけを目的に,AI劣化予測診断ツールを導入しました.ただし,山間地域では漏水修繕箇所のデータが少なかったため,診断ツールの精度への影響が懸念されました.そこで,2週間で漏水可能性区域(直径200m)を判定可能とするイスラエルの技術を採用しました.この技術は,衛星からLバンドを放射し,反射特性を解析して漏水可能性区域を抽出するもので,現地での調査対象を2,210kmから257kmまでに絞り込むことができました.漏水の的中精度は27%に留まりましたが,主な成果としては,調査区域の短縮,調査費用の削減,漏水の発見箇所数の増加が挙げられます.また,令和4年2月からは,漏水可能性区域の範囲の縮小,漏水可能性区域の漏水的中精度の向上を目的に実証実験を開始しています.

  • 長井 正彦
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 27-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    応用衛星リモートセンシング研究センターでは,衛星データを補正するための校正サイトの構築している.光学衛星データには歪みやノイズがあるが,校正(キャリブレーション)を行うことで,その補正や除去が可能である.校正サイトは,宇宙からの電波に対し,反射率が良く,捉えやすいターゲットを地上に設置し,衛星から観測する必要がある.そのため,同大学近くの公園にミラーアレイと呼ばれる施設を設置し,衛星画像のにじみやボケを解消できるアルゴリズムを開発した.また,SAR衛星用のキャリブレーションにも取り組んでいる.すでに,基準点の役割を持つコーナリフレクターを設置し,画像の重ね合わせ等の精度検証に使用している.さらに、小型のコーナリフレクター「SARマーカー」を観測対象箇所に設置することで,インフラや土砂災害の危険箇所等の衛星監視が可能となる.

  • 石井 孝和
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 34-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    NECの宇宙利用ビジネスの一つに「衛星SARによるインフラモニタリング」がある.自社保有のASNARO-2以外の商用SAR衛星データも使って画像解析をするサービスである.モニタリングサービスは,インフラ維持管理と防災・減災に大別できる.インフラ維持管理は,合成開口レーダで地表面に露出するインフラを観測し,異常な動きをする点検対象を特定.LIDAR計測やハイパースペクトル計測など他のセンシング技術で詳細劣化把握をし,サイバー空間上に再現する.合成開口レーダの画像解析には干渉解析サービスと変化抽出サービスとがあり,前者は主にインフラ維持管理,後者は主に発災時の状況把握で使っている.ユースケースとして,建造物の変化・空地検知,環境汚染モニタリング,橋梁変動計測,大規模盛土造成地モニタ,ライフライン地盤変動計測,空港施設管理の高度化・効率化などがある.

  • 筒井 健
    2023 年 4 巻 L1 号 p. 42-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    AW3Dは,地球上の全ての陸地を3次元でデジタル化した衛星3次元地図である.航空写真と遜色のない精度に近づいている.精度が上がった理由は,衛星の機数や解像度が上がったことと,画期的な処理ができるようになったことである.従来は一つの衛星が撮った画像を解析していたが,現在は複数の衛星が撮った膨大な画像を処理している.それにより,誤差を大きく低減することに成功し,様々な分野で実用化できるようになった.また,AW3DはAIと適合性が良いため,目的に応じて高精度地図用の画像をデジタル化することが可能だ.更に,衛星データと地上のセンサを組み合わせる取り組みも進めている.すでに,日本であれば1/2,500縮尺相当の50cm解像度でデータを整備し,全世界では2.5mで整備している.2022年からは日本全国の3次元衛星地図の更新も開始している.

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