土木学会論文集B
Online ISSN : 1880-6031
ISSN-L : 1880-6031
65 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 小窪 幸恵, 岡村 甫
    2009 年 65 巻 4 号 p. 259-268
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     本論文では陸上の任意地点に到達する飛来塩化物イオン量の算定モデルを提案する.提案モデルは波浪,気象情報ならびに海岸状態を入力情報とし,塩化物イオンを含有する海水飛沫の発生輸送付着過程をモデル化した.特に飛沫発生地点の状況が発生飛沫の粒径分布等の飛沫発生状況に影響するとし,飛沫の発生地点を海上と海岸に分け,海上においては白波等の広域砕波による飛沫,海岸においては波形変形による砕波時のしぶきによる飛沫が飛来塩の源となるとしてモデル化した.また,モデルの適用範囲を広げるため海岸状態のモデル化と計算過程の簡易化を図った.モデルの実用性を確認するため既往観測に対して適用を行い,その有効性を確認した.
  • ―室内実験による検討―
    徳永 貴久, 磯野 正典, 松永 信博
    2009 年 65 巻 4 号 p. 269-276
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     泥質堆積物の再懸濁時における酸素消費過程を明らかにするために,有明海湾奥部の泥質堆積物を用いて化学的酸素消費および生物学的酸素消費実験を行った.化学的酸素消費速度は時間変化が大きく,0-5mm層では実験開始から30分まで減少し,それ以後は0値を示した.一方,生物学的酸素消費速度の時間変化は小さかった.化学的酸素消費量の寄与率は,実験開始から60分まではいずれの層においても80%以上を占め,360分後においても60%以上を占めた.堆積物下層ほど,すなわち酸化還元電位が低下するほど化学的酸素消費の継続時間は長くなることが明らかになった.堆積物の再懸濁時の酸素消費過程では,化学的酸素消費の非定常性,再懸濁される層厚,還元物質量の鉛直分布および再懸濁されてからの経過時間が重要であることが示唆された.
  • 赤松 良久, 池田 駿介, 浅野 誠一郎, 大澤 和敏
    2009 年 65 巻 4 号 p. 285-295
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     砂礫による糸状藻類の剥離について室内実験を行い,神奈川県の宮ヶ瀬ダム下流におけるフラッシュ放流による糸状藻類の強制的な剥離について現地実験及び数値シミュレーションによる検討を行った.その結果,糸状藻類の剥離には5-10mm程度の粒径の砂礫が有効であり,宮ヶ瀬ダム下流の糸状藻類が異常繁茂しているような場所においては剥離に有効な粒径の砂礫がほとんどなく,フラッシュ放流のみによる糸状藻類の除去は困難であることがわかった.また,実験から得られた知見を元に砂礫による河床付着藻類剥離予測モデルを構築し,現地に適用したところ,本モデルによってフラッシュ放流による糸状藻類の残存率をおおまかに予測可能であり,河床に細礫が十分に存在すれば現行のフラッシュ放流量で十分な糸状藻類の除去が行えることが明らかになった.
  • ∼アユ,オイカワ,カワムツ,ギンブナを対象∼
    鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 山本 晃義, 渡邉 拓也, 脇 健樹
    2009 年 65 巻 4 号 p. 296-307
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     魚が魚道内を遡上できる条件として,魚道内の流速が魚の突進速度以下であることが挙げられる.突進速度とは1秒∼数秒間しか維持できない魚の最大遊泳速度である.突進速度に関する既往のデータは極めて少なく,しかも,同一魚種で同一体長であっても研究者によって提示している値が異なっているのが現状である.よって,魚道設計に採用すべき突進速度が不明確という問題点がある.本研究では多くの河川に生息するアユ,オイカワ,カワムツおよびギンブナを対象として,流速および体長別の突進速度を実験的に求めた.その結果,上記の魚種については,流速および体長に基づき突進速度を求めることが可能となった.また,突進速度に達するまでの時間および遊泳距離を解明した.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 脇 健樹, 山本 晃義
    2009 年 65 巻 4 号 p. 308-319
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/20
    ジャーナル フリー
     本研究は魚の行動を把握するための第一歩として,静水中を1尾で遊泳するアユの遊泳特性を解明したものである.実験では半径を0.75∼1.15mの5ケースに変化できる円形水槽を用いた.円形水槽の中心にアユを1尾入れ,壁面に到達するまでの軌跡をビデオカメラで撮影した.それより,アユの挙動は直線と屈折で構成され,初期遊泳,普遍遊泳および壁面効果遊泳の3つに分離されることが分かった.また,普遍遊泳における遊泳距離および屈折角度はガンマ分布で,遊泳速度は正規分布で表現されることを解明した.さらに,遊泳距離と屈折角および遊泳速度と屈折角は相関がないが,遊泳距離と遊泳速度は相関が存在することを解明し,両者の関係式を提案した.そのため,静止流体中を1尾で遊泳するアユの挙動をシミュレートすることが可能となった.
  • 越村 俊一, 行谷 佑一, 柳澤 英明
    2009 年 65 巻 4 号 p. 320-331
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     津波数値解析技術の高度化およびリモートセンシング技術・地理情報システム(GIS)の普及を背景に,新しい津波被害想定指標としての津波被害関数の概念とその構築手法を提案した.津波被害関数とは,津波による家屋被害や人的被害の程度を被害率(または死亡率)として確率的に表現し,津波浸水深,流速,波力といった津波の流体力学的な諸量の関数として記述するものである.本稿では,被災地の衛星画像,数値解析,現地調査結果および歴史資料の分析を通じて被害関数を構築し,津波外力と被害程度の関係についての考察を行うとともに,被害関数の適用性や工学的利用にあたっての留意点について論じた.
  • 高野 保英, 竹原 幸生, 江藤 剛治
    2009 年 65 巻 4 号 p. 332-340
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
     超高速ビデオカメラを用いて自然状態で落下する雨滴を撮影し,粒径,落下速度,動的挙動などの計測を試み,それらの計測が可能であることを示した.
     自然状態で落下する雨滴の超高速動画像(2万枚/秒)の撮影に成功し,落下雨滴の撮影画像から,雨滴の落下速度と粒径の関係を得ることができた.さらに撮影画像にデジタル画像処理を加えることにより,雨滴の形状の変化や回転などを短い時間間隔で求めることが可能であることを示した.またデータ数は少ないものの,画像より得られた落下雨滴粒径と速度の関係は,相当直径1.5mmまではGunnとKinzerの実験より求められたそれと良く一致すること,および雨滴の形状は横長であることが確認された.
和文報告
  • 武若 聡, 笹倉 慎也, Elsayed GALAL, 柳嶋 慎一
    2009 年 65 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/20
    ジャーナル フリー
     2006年10月に大型の低気圧が本州から北海道の太平洋沿岸を通過し,既往最大の潮位上昇を伴う高波浪が鹿島灘に来襲した.この荒天により,鹿島灘全域(大洗港~鹿島港~利根川河口,海岸延長約68km)で侵食があり,潮位上昇に伴い,後浜領域に大規模な侵食が見られた.航空レーザ計測地形データを用い,前浜・後浜域から砂丘部にかけての侵食状況を調べた.鹿島灘北部(海岸延長約38km)の侵食量はおおよそ620,000m3,南部(海岸延長約15km)の侵食量はおおよそ600,000m3であった.北部,南部の侵食量分布はそれぞれの領域で北から南に向かって減少する分布となっていた.ヘッドランドが設置されている区間の侵食量は,個々のヘッドランドの南側(波下側:荒天中に発達していたと考えられる沿岸流,沿岸漂砂の下流側)で大きく,北側で小さかった.
feedback
Top