土木学会論文集E
Online ISSN : 1880-6066
ISSN-L : 1880-6066
66 巻, 3 号
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和文論文
  • 守屋 進, 浜村 寿弘, 後藤 宏明, 藤城 正樹, 内藤 義巳, 山本 基弘, 齊藤 誠
    2010 年 66 巻 3 号 p. 221-230
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     本報告は,重防食塗装系のコスト削減のために開発された新規塗料を用いた塗装系の耐候性と防食性に関する耐久性試験の結果である.無機ジンクリッチペイント,厚膜形エポキシ樹脂塗料,厚膜形ふっ素樹脂塗料を組み合わせた従来よりも塗装回数の少ない重防食塗装系は,良好な耐候性と防食性を有することが確認できた.ふっ素樹脂塗料以外の上塗塗料では,エポキシシリコン樹脂塗料や無機質系樹脂塗料が優れた耐候性を示した.防食性と塗膜特性の関係では,一定以上の環境遮断性があれば,塗膜に一定の負荷をかけた時に応力残存時間が短い塗膜は防食性が良いことが認められた.
  • 鈴木 基行, 岩城 一郎, 上原子 晶久, 内藤 英樹, 久田 真, 鶴田 浩章, 佐々木 暢智, 千葉 陽子
    2010 年 66 巻 3 号 p. 231-244
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     青森県の日本海沿岸において著しい塩害が生じたPC道路橋を対象として,ダンプトラックの重量による橋梁上部工の静的載荷試験を行った.著しい損傷が見られる対象径間では,断面修復やPC外ケーブルによる補修・補強後も主桁などに軸方向に沿ったひび割れ,かぶりコンクリートの剥落,鋼材の露出などの再劣化が多く見られた.B活荷重の80%程度に相当する本載荷試験の範囲では,劣化が著しい対象径間でも,外ケーブルによる補強をした状態であれば上部工の曲げ剛性は設計値と同程度の性能を有しており,外ケーブルによる顕著な補強効果が確認できた.しかし,外ケーブル補強を取り除いた状態では,上部工の曲げ剛性は設計値の7割程度に低下しており,塩害による著しい剛性の低下が確認された.
  • 小澤 良明, 松井 邦人, 井上 武美
    2010 年 66 巻 3 号 p. 245-254
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究の主目的は,粘弾性の層を含む多層構造の応答解析を行うことができるハイブリッド法を開発することである.本方法では,空間領域には多層弾性解析の理論解(GAMES)の考え方を,時間領域にはNewmark-β法の考え方を組み込んでいる.その結果,各層の構成則が異なる層状構造の解析が可能になった.この解を舗装構造に適用して,粘弾性挙動と弾性挙動の違いを明らかにした.粘弾性層が含まれると,除荷後粘弾性層だけに残留変形が生じ,弾性層の変形は粘弾性の影響を受け少し時間がかかるがゼロに戻る.粘弾性層の存在は,その位置にかかわらず除荷後永久変形として表面たわみに現れることが明らかになった.
      理論解の妥当性は汎用FEMソフトウエア(ADINA)を用いた解析結果を比較することで確認した.
  • 上田 隆雄, 田中 慎吾, 進藤 義勝, 七澤 章
    2010 年 66 巻 3 号 p. 255-267
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     フライアッシュをコンクリートに混和した場合,フレッシュ性状の向上,水和熱の低減,ASRの抑制,細孔組織の緻密化などが期待できる一方,コンクリート中のアルカリ性が低下することで,中性化や鉄筋腐食に対しては配慮が必要との指摘もある.今後,フライアッシュを用いたコンクリート構造物の耐久性評価を定量的に行うにあたっては,いくつかの要因の影響を総合的に勘案する必要がある.
     本研究では,フライアッシュの種類や混和方法を変化させたモルタルあるいはコンクリート供試体を用いて,フライアッシュの混和がセメント硬化体中の塩害による鉄筋腐食環境に与える影響を検討した.この結果,適切にフライアッシュ種類や配合条件を選定した場合に,塩化物イオンの浸透抑制効果や鉄筋防食効果が得られる可能性があることがわかった.
  • 酒井 秀昭
    2010 年 66 巻 3 号 p. 268-275
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,冬季に高速道路等の路面に散布する凍結防止剤(塩化ナトリウム)に起因する鉄筋コンクリート構造の橋梁壁高欄の塩化物イオン濃度の予測方法について検討を行ったものである.検討の結果から,凍結防止剤散布量と橋梁壁高欄の塩化物イオン濃度とは相関関係があり,凍結防止剤散布量からコンクリート中の塩化物イオン濃度を予測できる可能性が明らかとなった.更に,橋梁壁高欄のひび割れ発生状況を,実橋調査により明らかにし,塩化物イオンに対する設計拡散係数の算定精度の向上を可能とした.
     これらのことから,凍結防止剤散布地域の橋梁壁高欄の塩化物イオン濃度の予測方法を提案することができた.
  • 宮本 重信, 西澤 辰男, 武市 靖, 野田 悦郎, 高島 浩一
    2010 年 66 巻 3 号 p. 276-287
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     本稿では低温な自然熱源では融雪用放熱管のかぶりを7cmから4cmにすると最大残雪深は約半分になる事例を最初に示した.次に,輪荷重走行載荷試験と3次元有限要素法の解析から,かぶり3.5cmと浅く放熱管を埋設しても放熱管の影響は版厚換算で2%程度の影響にすぎないことを示した.ついで,放熱管をコンクリート舗装表面から浅い位置に埋設し,かつ連続鉄筋敷設で乾燥収縮目地を無くすことで鋼管放熱管を曲げずに直線的に長く設置する構造とした.そこでは,放熱管上面までは通常コンクリートで,その上に膨張材,鋼繊維など混入のコンクリートを"WET ON WET"で打設した.こうした舗装と放熱管の融合で,経済的で耐久性と融雪能力の高い設計・施工を実現した.
  • 松本 茂, 新名 勉, 江良 和徳, 村橋 大介, 宮川 豊章
    2010 年 66 巻 3 号 p. 288-300
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     アルカリシリカ反応を生じた構造物におけるシラン系表面含浸材の効果的な適用に関して検討するため,実構造物を想定した供試体を作成し約1年半にわたり屋外暴露を行った.主な実験要因として施工時期に着目し,膨張抑制効果が発揮される範囲を把握するために補修面からの距離毎に膨張率を測定したほか,膨張に影響を与える供試体内部の水分量を把握するために複数の測定孔を設け相対湿度を測定した.その結果,補修面から250mm程度までの範囲で膨張抑制効果を確認した他,早期に施工する方がより大きな膨張抑制効果を発揮することが分かった.併せて,亜硝酸リチウムの内部圧入についても同様の屋外暴露に供した結果,良好な膨張抑制効果を確認した.また,実験結果に基づき,両補修材の実構造物への適用において期待される効果等について検討した.
  • 古村 崇, 徳重 英信, 川上 洵
    2010 年 66 巻 3 号 p. 301-310
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     本研究は酸化チタンを混和した高強度セメントモルタルの物理的性質,および窒素酸化物除去性能とその機構について実験的検討を行ったものである.酸化チタン混和高強度セメントモルタルの物理的性質には酸化チタンの種類や混和率が大きく影響し,また酸化チタン粉末の混和により硬化体組織中の200nm以下の細孔を増加させることも明らかとなった.一方,窒素酸化物除去性能は酸化チタン混和率の増加とともに向上するが,養生中の析出物により窒素酸化物除去性能が低下することも明らかとなった.さらに窒素酸化物除去試験後の窒素酸化物イオンの溶出試験結果から,酸化チタン混和モルタルの結合材中には硝酸イオンおよび亜硝酸イオンが滞留することが明らかとなり,窒素酸化物除去機構に影響を与えることがわかった.
  • 佐川 孝広, 石田 哲也, Yao LUAN, 名和 豊春
    2010 年 66 巻 3 号 p. 311-324
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     本論文では,各種ポルトランドセメントに粉末度4000および6000の高炉スラグ微粉末をそれぞれ混和した広範な組成をもつ高炉セメントを試製し,高炉セメントの水和反応と微細構造形成との関係について実験および解析的検討を行った.高炉セメントの反応により生成するC-S-Hゲルのキャラクターは,ポルトランドセメント系とは大きく相違し,C-S-Hの保持するゲル水の割合は水和全過程を通じて一定でなく,水和後期において増加することが実験的に示された.そこで,高炉セメントでの空隙構造形成モデルにおいて,C-S-Hゲルの保有空隙率をスラグ反応率に応じて増加するパラメータとすることで,空隙構造の微細化や長期強度の増進といった高炉セメント硬化体の特徴的な現象を良好に再現することが可能となった.
  • 坂本 淳, 田中 良弘, 新藤 竹文, 宇治 公隆
    2010 年 66 巻 3 号 p. 325-336
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     最大粒径2.5mmに調整した一般のコンクリートに使用される細骨材を用いて,ノンプレミックス型超高強度繊維補強コンクリートの配合を実験により検討した.その結果,絶乾状態の細骨材を骨材混合比50~60%程度の範囲で7号珪砂と併用することにより,所要の強度特性を満足する配合が得られることを確認した.また,細骨材の粗粒率が2.0~2.5程度の範囲であれば,骨材粒度の変動がコンクリートの品質に及ぼす影響は無いこと,本研究で提案した標準配合は,プレミックス型標準配合粉体を用いた配合と同等の凍結融解抵抗性,中性化抵抗性,および塩化物イオン侵入抵抗性を有していること等を確認した.
  • 高田 浩夫, 高橋 祐二, 阪口 裕紀, 小林 孝一, 六郷 恵哲
    2010 年 66 巻 3 号 p. 337-347
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     鉄筋を配置したHPFRCC部材のひび割れ荷重ならびにひび割れ性状の向上を目的として,膨張材添加率を0,6,8,10%とした膨張型HPFRCCを用いて,鉄筋比を 1.4%,2.3%,3.3%と変化させたRCはりを作製した.はりの打設直後から鉄筋のひずみを計測してケミカルプレストレスを評価し,材齢10日と10週で曲げ載荷試験を行い,ひび割れ性状を観察した.鉄筋を配置したHPFRCCはりのひび割れ荷重は,膨張材を添加していない場合には材齢10日で小さな値であったが,膨張材を添加すると高くなり,ひび割れ本数が減少した.このひび割れ荷重の増加は,材齢10日に比べ10週で顕著であった.HPFRCCへの膨張材添加率は,本実験の範囲では,6%が推奨された.
  • 遠藤 裕丈, 田口 史雄, 名和 豊春
    2010 年 66 巻 3 号 p. 348-365
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     本論文は,スケーリングの進行性に及ぼす凍結融解前の暴露環境の影響について整理したものである.細孔の含水状態に着目し,湿潤養生日数,気中静置日数,気中静置後の再吸水日数の3因子を実験パラメータに選定してASTM C 672に準じた一面凍結融解試験を行い,スケーリングの進行性に関する実験的・解析的な考察を行った.スケーリング促進の危険性はコンクリートの弾性係数とコンクリートの表層で生じる凍結圧勾配とのバランスに強く依存することがわかった.さらに,得られた知見をもとに,スケーリングの進行性に及ぼす凍結融解前の環境の影響についての照査フローを作成した.
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